前略、100年先のふるさとを思ふメディアです。

LOCAL LETTER

人とのつながりが地域への入り口になる 。小さく踏み出すはじめの一歩

JUN. 23

KYUSYU

拝啓、現在地から一歩踏み出して、地域と関わりたいアナタへ

平日は仕事。休日は家族や友人との用事。

あっという間に過ぎていく日常を過ごしながらも「地域に関わって何かしたい」という気持ちが、どこかに残る。

――個人的にこのような想いを抱えていても、そこで足を止めてしまう方は少なくないように思います。

地域との関係性を育み関わり続けていくには、一人の熱意だけでは限界があるかもしれません。だからこそ、同じ想いを持つ人やコミュニティの存在が大きな支えになります。

都市部に住みながら、組織の力も活用して地域とのつながりを育み、九州全域と関わり続けている一人が髙田理世さんです。

シェアリングエコノミー協会で中心メンバーとして活躍する髙田さんは、2024年から「ONE KYUSYUサミット」の実行委員長も務めています。

キーワードは「越境」。

境界線を越えることを意味する言葉であり、髙田さんが活動するなかで、一つの軸としている考え方でもあります。これまでも地域や立場の境界を越えながら、人とのつながりを広げてきました。

どのような視点でご縁を紡ぎ、地域と関わってきたのでしょうか。その実践をたどります。

髙田理世(たかた りよ)氏 一般社団法人シェアリングエコノミー協会 経営企画・地域共生部長 総務省 地域情報化アドバイザー・デジタル庁シェアリングエコノミー伝道師 ONE KYUSHUサミット共同代表 / 1998年福岡生まれ。 デジタルを活用した地域づくり・人材育成領域を起点に、自治体連携の観光施策企画運営や地域メディア立ち上げ等を経て、2022年よりシェアリングエコノミー協会に参画。官民連携の推進や地域課題解決に取り組む。 北九州市Z世代課パートナーズ、姫路ライフ・スマート都市推進コンソーシアム委員、佐賀市スマートシティ推進協議会委員、佐賀市総合計画審議会委員(2024年度)、トヨタ自動車Garraway Fフューチャーリスト等。趣味は、季節の食材や地のものを味わうこと。

福岡という都市から「越境」を考える

学生時代に、NPO法人での活動を通じて地域での場づくりの活動に出会い、大学卒業後も自治体や民間企業の枠にとらわれない立場から地域に関わり続ける髙田理世さん(以後、髙田さん)。

2022年より参画するシェアリングエコノミー協会では、経営企画・地域共生事業部長としてシェアリングの仕組みで地域の活性化を推進。その傍ら、個人としても、地域プロジェクトの企画設計、イベントやコミュニティの運営支援など携わる活動は様々。

福岡県福岡市に拠点を置きながら、九州の各地域と人をつなぐ取り組みに奔走しています。

今でこそ地域の枠を越えて活動する髙田さんですが、はじめから九州への関心があったわけではありませんでした。

「数年前、シェアリングエコノミー協会で、九州支部という役割を与えられました。でも、私は生まれも育ちも福岡です。それまで福岡のことしか見ていなかったので、『どうやって九州全体のことを考えるんだろう』と思っていました

写真提供:髙田理世さん

 

ですが、視点を切り替えるきっかけは、身近なところにありました。

私がふだん食べている食材は九州のいろんな地域から集まっていて、身体を作っているのは九州でした。子どもの頃に出かけた旅行先や、学生時代にお世話になった方も九州各方面にいらっしゃいます。そう考えると福岡にいても、九州全体との関係は切り離せないと思いました

例えば、半導体産業で躍進する熊本県、国内屈指の食料供給基地である鹿児島県や宮崎県といった特色。髙田さんは、これを「各地域がもつ役割分担」と表現します。

そして、食材や産業といったモノだけでなく、福岡のまちを動かしている「人」もまた、九州各地から集まってきている。

「福岡で便利な暮らしができているのは、九州の他の地域に支えられているおかげ」。そう考えるようになったといいます。

写真提供:髙田理世さん

 

地域から都市部へ人が流出することが地域課題となっている一極集中。

東京で顕著な現象ですが、福岡市でも毎年多くの人口が九州全域から流入*しています。

*参照:福岡市公式サイト「福岡市人口ビジョン(改訂版)その後の推移(令和8年3月)」

そのような状況の中、地域の壁を越えていく「越境」という考え方は、九州だけでなく、日本各地で必要とされている視点なのかもしれません。

「『私は東京に住んでいるから、地域に関われない』と線を引いてしまうこともあると思います。ですが、デジタル化も進み、住む場所や生まれ育った場所に限らず、いろんな関わりを持てるようになってきています」

福岡で暮らしながら、九州全域と関わる髙田さんがまさにその一人です。

小さな行動に熱が宿り、つながりを生む

九州をひとつの大きな島として捉えた概念の「ONE KYUSHU」。2018年に開催された「九州廃校サミット」が九州全体を考える場へと成長し、「ONE KYUSYUサミット」が誕生しました。

九州がボーダレスにつながることでどんな未来が描けるのか、行政や民間企業とともに九州の可能性を考える場です。(https://onekyushu.com/

開催は不定期であるものの、ここ最近では2024年に宮崎市、2025年には長崎県五島市でONE KYUSYUサミットが開催されました。

2025年のONE KYUSYUサミットの様子。髙田さんは2024年から、ONE KYUSHUサミットの実行委員長として開催を主導し、2026年からは発起人の村岡浩司さん(https://localletter.jp/articles/localbusiness-mukasa-hub/)と共同代表という立場に。写真提供:髙田理世さん

関わり始めた当時を振り返りながら、「あまり聞いたことのないようなスタートでした」と笑う髙田さん。運営に加わったきっかけは、意外にも小さな一言でした。

ONE KYUSHUサミットに関わっていた方に、『サミットに興味あるんですよね』と声をかけたら『じゃあ一緒においでよ』と誘っていただいたのが始まりでした

最初は参加者として訪れる予定だったものの、「当日行くだけじゃもったいないので、何か手伝えることはないですか?」と声をかけ、運営側として参加することになったといいます。

「スタッフとして入ったことで前夜祭から参加して、運営メンバーとも深く関わることができました」

ここにも、参加者と運営という境界を、前のめりに越えていった髙田さんの姿がありました。当日は運営を手伝いながら、自主的にSNS投稿も担当。その投稿が、運営メンバーの目に留まります。

「それまで運営ではSNSでの投稿をしていませんでした。運営側の視点で考えて投稿していたら『すごくいいじゃん』と好評で。運営メンバーの中には世代交代を考えていた方もいて、『次回(の実行委員長)は髙田にやらせようぜ』みたいな流れになりました。その流れを受けて2024年から運営主体となり、2025年には20代を中心とした若いチームが企画から当日運営までを担いました」

ONE KYUSYUサミットでは地域だけでなく、世代や立場を越えた関係性が生まれ始めているようです。その光景は、「地域や、そこでの所属、年齢など、そんな様々なラベルの境界線を溶かしていくような活動をしていきたいと思っています」と語る、髙田さんの活動の軸とも重なります。

写真提供:髙田理世さん

 

「2024年のサミットでは、宮崎市がすごい熱量をもってアプローチしてくれたおかげで、ONE KYUSYUサミットと行政がはじめて連携する形が生まれました」

2024年開催の様子を見て、「次はうちでぜひ開催を」と五島市から声がかかったのだそう。サミットでもそれ以外でも、熱量のある人たちと一緒にいかにスピード感を持って取り組んでいくか、という点を大事にしているという髙田さん。

その言葉が示すように、ONE KYUSYUサミットでは開催中に生まれた出会いが、各地での実際の事業へと進むケースも多くあります。見えてくるのは、熱の消えないうちに形にするという姿勢です。

地域に足を運ぶことで出会える価値とは

2026年度、デジタル庁よりシェアリングエコノミー伝道師として任命を受けた髙田さんは、デジタルを活用した地域支援のプロでもあります。オンラインツールを使うことで福岡から各地とのつながりを築いていますが、地域に足を運び、関係性を築くことを大切にしていると言います。。

髙田さんが主催する、ONE KYUSYUの概念を活かした取り組みのひとつ、福岡で暮らす若い世代を地域とつなげる「にしめら会議」。ここでも足を運んだからこそ生まれた価値がありました。

舞台となるのは「1000人が笑う村」を目指す宮崎県の西米良(にしめら)村。観光でも移住体験でもなく、地域で暮らす人たちと関わりながら、地域のこれからを考える場です。普段は福岡で生活する20代の若者が12名参加しました。

写真提供:髙田理世さん

 

地域で何が求められているのかは、実際に暮らしている人に聞いてみないと分からないことがあります。若い人が地域に足を運んでくれるだけで、喜んでくれる方もたくさんいます

実際に地域に足を運ぶことで、訪れる側にもさまざまな気づきが生まれます。

「私も似たようなものですが、福岡に住んでいる若者は、都会で会社と自宅を行き来する毎日で、近所の人の顔も知らず、年齢の離れた方と関わる機会も多くありません。そういう生活に慣れた人が西米良村に行くと、まず地域の方が温かく迎え入れてくれることに感動するんです。

地域の方が準備してくれた料理を一緒に囲みながら、人との距離の近さに驚いたり、足を運んだ現場で収穫を体験して『こんなに手間がかかっているんだ』と気付いたり、実際に体験したからこそ生まれる感覚もありました」

にしめら会議に参加した若者の声を語る髙田さんは、どこか嬉しそうな表情をしていました。

写真提供:髙田理世さん

 

「2025年のにしめら会議で、実際に農家さんたちと話せる機会を作れたことは、大きな一歩でした」

その機会を作るまでには、つなげることを徹底して考えた髙田さんの尽力がありました。

「最初から農家さんと会えるということはなくて、役場の方たちとお話をするんですが、中にはどうやって都心の若者と地域で暮らす人たちがつながるのか、イメージがつきにくい方もいます。

だからこそ、どんな若者がどんな地域の人と出会えれば、村のこれからを一緒に考えるきっかけを見つけられるのかを時間をかけて一緒に考えて、現場の方と話せる場を作っていきました

『農家さんの手伝いがしたい』という想いだけで現地に行っても、かえって農家さんの負担になってしまうことがあります。訪れて話をして、地域の実情を知ろうとする姿勢を、参加者にも意識してもらうことを重要視しました」

そんな出会いのなかから、新しい挑戦も生まれ始めています。

「『西米良村で採れるゆずを使った商品を開発したい』と言って、農家さんと一緒に商品づくりを進めている子もいます。何度も村に通い、クラウドファンディングで販売できるように進めているところです」

暮らしてきた環境、これまでの生活スタイルが全く違っていても、人との関わりを通じて地域を知っていくことができる。こんな行動もまた、「越境」なのかもしれません。

写真提供:髙田理世さん

 

挑戦をはじめ、継続していくために――

今まで活動してきて感じるのは、一人の力でできることには限界があるということです。だからこそ、組織やコミュニティの力を借りることが大事なんだと思っています

そして、ONE KYUSHUサミットも人と人をつなぐコミュニティの場になっているといいます。

「ONE KYUSHUサミットは、九州のためを想って活動している人たちと出会える場です。『次のサミットでまた会おう』『また会えるように頑張ろう』と、心の支えになっている参加者の方もいます。仲間がいて、セーフティーネットのようなつながりを感じられるから、これからもサミットを開催したいと思えるんです

九州という共通点を通してつながる人がいる。そのつながりは、仲間が帰りを待ってくれているあたたかな居場所にもなっています。

ONE KYUSHUサミット2025の様子。写真提供:髙田理世さん

髙田さんは、自身のnoteでこう綴っています。

福岡は、世界とつながる窓口に。

九州各地は、人間ならではの暮らしを支える場所として、暮らすこと、働くこと、食べること、心身を休めること、など、それぞれの地域が地の理を生かして持続していく、そんな未来を描き、実現したいと心から思います。*

*髙田さんnote、2026年5月31日の記事より抜粋

大きな挑戦を実現するために、髙田さんもまた、次なる一歩を踏み出しています。

写真提供:髙田理世さん

 

さて、わたしたちが今いる場所から、少しだけ枠をはみ出すとしたら、何ができるでしょうか。

いろんなメディアや企業が、地域と人をつなげる事業や、実際に足を運ぶきっかけを作ってくれています。そういう機会を通していろんな地域へ行ってみて、『この地域が好きだな』と思える場所と出会えたら、その地域と少しずつ関係を深めていけばいいんじゃないかと思います。

私自身も、これからも新しい関係性を築きたい地域に足を運んでいくつもりです

髙田さんから、シンプルでいて心強いメッセージをいただきました。

コミュニティや小さなご縁を手掛かりに、地域に足を運んでみる。髙田さんの歩みを知ったいま、踏みとどまっていた足が軽くなったような気がしませんか――

Editor's Note

編集後記

お話を伺うまで、「何かできる人」が地域に関われると思っていました。でも、違いましたね。コミュニティや企業の力を借りながら、関わり方を考えてもいい。だからこそ、まずは目の前のチャンスを掴みにいくことが大切だなと教えていただきました。

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