公務員
昔から言われる「つながる」ことの大切さ。
現場に出向いたり、コミュニティに所属をしたりと、人脈づくりやインプットに力を入れているけれど、いまいちその繋がりを仕事に活用できないと感じている方も多いのではないでしょうか。
そんな中、地方公務員でありながら、14個ものコミュニティを活用し、地域の課題を解決し続ける一人の男性を取材。その名は納翔一郎さん。
「繋がりが新たな繋がりを生んで、そこから熱量が生まれる。公務員に熱量が生まれることで、地域に活力が生まれる。」を行動理念としている大阪府富田林市職員の納さんに、繋がりが導いた自身の役割、複数のコミュニティに所属する上で意識していることを伺いました。
LOCAL LETTERが運営するオンラインコミュニティことLLM(LOCAL LETTER MEMBERSHIP)のメンバーのひとりでもある納さんは、富田林市産業まちづくり部商工観光副主任として働く公務員。
「富田林を批判されると本気で落ち込む」と語る富田林愛が強い納さんは、公務員=(イコール) “保守的” というイメージが強い中、全国でも先駆けとなった『行政主体のインターネット動画配信番組(富田林テレビ)』を手がけた仕掛け人。
プライベートでは地方公務員ブロガーとして、約300本の記事を執筆活動をするなど、公私に関わらずアクティブに活動されています。
そんな納さんはコミュニティを使いこなす人材の一人!所属するコミュニティは、公務員系だけに留まらず、LLMといった地域共創コミュニティにも所属されており、その数なんと14個!「これでも参加するコミュニティを減らした」と語る納さんですが、そのうち代表を務めているのは5個もあるというから驚きです。
「僕は20歳から市の職員として働いていますが、元々人との繋がりを意識していたわけではなかったんです。たまたま買ったカメラがきっかけで地域に繰り出していましたが、『人脈を使って何かしてやろう!』といった想いは全くありませんでした。
むしろ、地域のキーマンと出会っても、『アクティブな人もいるんだなー』と思った程度(笑)。人脈だけは広がっていくけれど、何のアクションも起こしていない20代前半でした」(納さん)
そんな納さんが “繋がり” を強く意識するようになったのは、24歳時の大阪府庁総務部市町村課への出向。出向先での仕事はとても大変だったそうですが、その時に出合った大阪府庁内での “多世代職員交流コミュニティ” が、納さんのスタイルをつくるきっかけになったと話します。
「以前から、自主研究グループやボーリング大会といった市役所内のコミュニティを主催することはあったんですが、出向先で出会ったコミュニティは人数もさることながら年齢差も幅広く、仕事も遊びにも全力の組織だったんです。
さらに言うと、僕のように出向で来ている人たちもいて、出向が終わると各自治体へ帰っていく。大阪府庁のコミュニティを通じて “いろんな場所に仲間がいることへの可能性” を強く感じました」(納さん)
最初は「自分の成長のため」と思いコミュニティに参加していた納さんでしたが、繋がることへの魅力に気づき、大阪府庁のコミュニティだけでなく、異業種交流会や民間主催のコミュニティにも参加。めいいっぱい視野を広げた2年間だったと話します。
出向を終え、富田林に帰ってきた納さん。一度外に出たことで、より富田林の魅力に気が付き情報発信に奔走したと言います。その後、近隣自治体職員による公務員コミュニティの立上げを行ったり、全国規模の公務員コミュニティに参加した結果、14個ものコミュニティに所属することに。
日々「市民の為に」と考え行動されている納さんですが、繋がりの先にある納さんの役割はなんだったのでしょうか。
「多くのコミュニティに所属しているからこそ『何故ここに』と自問自答することがあります。改めて参加の意義を模索する中で、『コミュニティで出会った面白い人たちと、地域で困っている人を繋げる』という想いが生まれたんです」(納さん)
「僕がメインナビゲーターを行っていた富田林テレビでは、市民をゲストに迎えるのですが、『どうやったら富田林が良くなるのか』を日々考えていた結果、僕自身が市民のハブ的存在になればいいと気付き、ゲスト同士を繋げていました」(納さん)
最初は自分の好奇心で繋がりを求めていたと話す納さん。ですが、 “市民のために人を繋げる” という黒子的な喜びを知ったことで、公務員としての自分の役割を見出します。更に、富田林テレビの企画自体も、出向先で出会った職員に繋いでもらったのがきっかけだというから驚きです。
「元々テレビをやるという企画があったのではなく、話の勢いで返事をしたんですよ。上司の許可を取らずに『いいですねやりましょう!』って言ってしまって(笑)。まだ官民連携の前例もなかった時だったので、役所内の理解を得るために、説明相手の年代や官民連携の理解度によって資料を作り分けて、結果的に7種類の資料をつくりました。
バタバタで大変でしたが、お話を頂いた5ヶ月後にはスタートをさせることができたので、スピード感をもって挑めましたね。共創してくれた企業さんにも感謝しかありません」(納さん)
“自身のやりたいこと” と “富田林のため” が見事にシンクロをし、公務へと繋げる納さんですが、「実を言うと情報発信よりも情報収集の方が得意」と話します。納さんといえば情報発信のイメージが強い中、繋がりを大切にするからこその情報収集方法について深ぼりました。
「今の時代、たくさんの情報が溢れているので正しい情報にたどり着きづらい。それを一から自分で探索や勉強するのは、労力もコストもかかってしまう。そこで、出会った方に関して『こういう活動をされている方』と頭の隅に入れておいた情報を引っ張り出してくるんです。
SNSなど一度繋がったものはいつでも見ることができるので、その分野が得意な人の情報をあたってみる。繋がりを得ることで、自分だけでは判断できなかった情報の取捨選択を手伝ってくれることにも繋がるんです」(納さん)
繋がりに関してSNSだけでなく、リアルも大事にされている納さん。仕事外の時間や土日を活用し、地域の集まりに参加をしたり、自身が実施している、自称「会いたい人に会いに行くツアー」では、オンラインを飛び出しLLMのメンバーや全国の仲間たちに会いに行くこともあるのだとか。
「集まりを主催されている方だったり、コミュニテイに参加されている方は、何かしらの熱い想いをもっている方が多い。雑談レベルでのお話でも、たくさんの刺激をもらえるんです」(納さん)
最後に納さんが考える、コミュニティの活用ポイントについて伺いました。
「コミュニティを活用する上で大事になるのが “目的と時間” への意識。以前は、『自分の知識を高めるためにとりあえず』という想いでの参加が多くありました。しかし、コミュニティに複数所属するということは、自分の時間を多く割くということです」(納さん)
特に今はオンラインが浸透し、簡単にコミュニティに所属できる時代になりました。自分の時間を浪費しないためにも、『何のためにこのコミュニティに参加するのか』、『自分はどのような出会いを求めているのか』そして『コミュニティから得たもので誰を笑顔にしたいのか?』を意識することが大事だと考えます。納 翔一郎 大阪府富田林市
「その他、コミュニティ運営をしていることで、必然的にタイムマネジメントとタスクマネジメントのスキルが向上しました。運営をしていると『いつまでに、何をして』っていうタスクとリミットがいっぱい出てくるんですよ。その管理を年がら年中しているので、否が応でもスキルがあがりますね(笑)」と納さんは笑います。
「さまざまな出会いや知識は、地方公務員として働く本質を考える良い機会になる」と話す納さん。“なんとなく” コミュニティに所属するのではなく、定期的に「なぜ今ここに所属しているのか?」「自分はどんな出会いを求めているのか?」「コミュニティから得たもので誰を笑顔にしたいのか?」を自問自答し、所属コミュニティを整理することが、生きた繋がりをつくり続けている秘訣なのかもしれません。
若干32歳ながらも、ロジカルな思考を持ち、誰とでも仲良くなれる納さんのお人柄は、富田林を良くしたいという強い想いと、いろんな人たちの価値観に触れることが出来る複数のコミュニティによって支えられていました。
最後まで記事を読んでくださったアナタへ、納さんも所属する、地域共創コミュニティ『LOCAL LETTER MEMBERSHIP(通称:LLM)』の仲間として一緒に活動しませんか?
Editor's Note
お話自体がおもしろく、あっという間だった取材時間!
コミュニティ活用の趣旨から離れるので、あえて本文には書きませんでしたが、やっぱり特筆したいのが納さんの素晴らしいお人柄!
実を言うと、納さんとはオンライン上で一度しかお会いしていないのですが、SNSを通じてやり取りをさせていただく中で、文面から伝わる優しいお人柄と超がつくほどまめにリアクションをしてくださるその姿勢に、どんな人でも “納さんという存在を強く意識してしまう所以” があるのだろうなと実感。
インタビュー中、「何か困ったら、納に聞こうと思ってもらいたい」という言葉があったのですが、そんな強く記憶に残る納さんのお人柄こそ、人脈を実務に変えていける納さんらしい個性なのかもしれません。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香