移住
豊かなセカンドライフを考えているけれど、どうやって場所を選んだらいいかわからない。
そんなアナタにお届けするのは、県南地域移住定住相談所ラクラスしらかわが行った、「50代・60代歓迎! 経験者に学ぶ 地方移住のはじめ方」と題して行ったこちらのイベント。
白河市・西郷村を中心とした福島県南地域で移住サポートを行なっているメンバーと、実際に移住されたメンバーが登壇した本イベントの前編では、登壇者一人一人の移住理由や現在の暮らしにフォーカスを当てました。
後編では移住者とサポーターによるトークセッションを実施。地方移住への現実的な準備に向けて、家探しや近所付き合い、仕事の探し方など、実体験を踏まえたリアルなヒントをお届けします。
金澤(司会):では、まず「移住を決めてからの具体的なステップ」を教えてください!
小西(農業移住):まずは「家探し」を始めました。僕の夢は「広い田んぼや畑の中の、日当たりのいい一軒家」に住むことだったんですが、現実的には規制があり、田んぼの中の一軒家は農家でないと買えなかったんですよ。
なので、条件を改めて絞って、周りに竹藪はなく、畑があって、農家でなくても住める場所を探しました。最終的に決め手になったのは「本下水道が通っていること」でしたね。
金澤(司会):何回くらい現地に足を運ばれましたか?
小西(農業移住):今の家を決めるまでに4回、現地に行きました。現地に行く前に資料をもらって、「トイレは水洗か汲み取りか?」など自分が木になる部分を質問をして、物件に興味が湧けば現地に行くという流れです。福島県いわき市で1軒、同県北茨城市で2軒を見てから同県白河市に決めました。
金澤(司会):家を絞り込む時の条件はどうやって絞っていきましたか?
小西(農業移住):最初は「ここに住みたい」という欲が先行していましたが、金額の折り合いがつかなかったんですよね。逆に「ここは嫌だ」というリストをあげていくと妥協できる点が見つかり、そこから絞って決めることができました。
米田(Uターン):私はまずはじめに西郷村の空き家バンクに登録しました。「半自給自足の生活・ニワトリが飼える・自然の中での生活をしたい・利便性がある」が条件でした。
米田(Uターン):物件を探す中で、家は広くて価格は安いけど、コストがどれだけかかるのか、地盤が安全かという情報も気にするようになりました。西郷村で自分がやりたい条件を叶えられる場所を探して、「ここしかないな」というところに決めました。
西郷村は、白河市よりは気温が2〜3℃低くて避暑地のようなので、日中畑で作業していると暑いですが、木陰に入ると涼しい。ここを選んで本当によかったと思っています。
金澤(司会):米田さんの場合、やりたいことがはっきりしてましたから、優先順位を決めやすかったかもしれませんね。
上田(地元サポーター):西郷村には公営住宅もあって、その方の所得に応じて家賃が決まります。西郷村の一般的な賃貸の家賃(約5〜6万円)よりも安く抑えられるので、移住を検討されている方は選択肢の1つに入れてもいいかもしれませんね。
金澤(司会):ここからは、県南地域の魅力をぜひ教えていただきたいなと思っています。「こういう方にお勧めできるよ」とか「県南のここが特に好き」とか、逆に「こういう方にはお勧めできない」というのもお聞かせください。
小西(農業移住):二拠点生活がしやすいところが気に入っていますね。僕は今、埼玉と白河市にそれぞれ家があって、仕事で絶対に東京にいないといけない時以外は白河市にいます。二拠点の距離が長くなると、どうしてもどちらか一択にせざるを得ないこともありますが、比較的両立がしやすいところがいいですね。
あとは、田舎と都会のバランスがいいところ。僕の家は田んぼに囲まれていますが、5km走るともう街中で、白河市は便利なところです。
白河市のお隣にある西郷村は、新幹線で唯一「村」に停車する新白河駅がある村で、白河市よりも西郷村のほうが圧倒的に栄えているんですが、移住するまで僕はそのことを知りませんでした。
米田(Uターン):本当に便利なところですよね。
上田(地元サポーター):そうなんです。それに加えて、疲れないし、飽きない。たまに東京に行くと、人をかき分けて進むことがありますが、こっちでは1時間くらい散歩をしていても人に会わない(笑)。そこも魅力で、ごちゃごちゃしたところが嫌な方には特におすすめです。
小西(農業移住):妻はまだ埼玉にいるので「一人暮らしは不安ではないですか?」と聞かれることもあるのですが、近所の人がいい意味でみてくださっているなと思っていて。
近所の方には、何かあったときに気づいてもらえるように目印を教えました。ここに電気が付いていれば作業していて、消えていれば帰ってますよと。そうするとちゃんと見ててくれるんですね。地域の繋がりの素晴らしさを体感しています。あとは心拍数の異常検知などIOTを使って、「人に頼らない見守り」を働きかけてもいいなと思っています。
金澤(司会):見守りに、人の手によるものと、そうでないものとを使うんですね。
小西(農業移住):人ありきで頼るのって難しいじゃないですか。両方を融合させたものができればと思います。
米田(Uターン):私の場合、いとこが白河市に住んでいたのが心強かったです。これが全く知らないところだったら不安でした。今は横のつながりを大事にしています。
金澤(司会):受け入れる側としては、どんな接し方を意識されていますか?
上田(地元サポーター):人によりますね。地域の人と関わりたい人にはそうするし、「そっとしておいて」という人にはあまり近づかない。どこまで心配すればいいのかは常に考えていて、その人に合わせて対応しています。
小西(農業移住):地方の集落って繋がりが強いイメージがあると思うんですが、実はそうでもないなって感じます。世代も変わって、村のつながりも必要以上に介入するのはやめようという流れになりつつあるんだと思います。
僕も住んでいるところの自治会に入っていますが「何もかも参加してくれ」とは言われなかったんですよね。「できるものだけ参加すればいいし、村の中には参加したくないって思っている人もいるんだよね」という会話もあって、多様性を許容する時代になってきているんじゃないかなと。
金澤(司会):最後に皆さんから、幸せな移住を実現するために一言ずつお願いします。
小西(農業移住):白河市をはじめ、福島県南は首都圏からは便利なところです。雪が降るとは言っても陽がさせば解けるレベル。西郷村、新白河駅周辺も栄えていますので、申し分のないところかなと思います。
気になるのは仕事。都会と違って、いくらでも仕事の案件が出てくるわけではないので、「自分がその土地で何をしたいか」をきちんと明確にした状態で調べると、横の繋がりで仕事が出てくる可能性があります。
私も「農業IOTをやりたい」と目的を展開すると「いいじゃない」と賛同してくれた方からコネクションが広がってきていて。漠然と「何か仕事はないですか?」ではなく「これがやりたいんです」と特化して、それを表に出すと、良い巡り合わせがあるかもしれません。
米田(Uターン):移住してよかったのは、美味しいものがたくさんあるところ。お野菜1つにしても、東京で食べていた頃とは全く違う。飲み水に関しても、以前までは水を買っていたけど、白河市は水道水で十分。幸せな毎日を送っています。
上田(地元サポーター):西郷村は新幹線が停まる駅がある、高速道路のインターチェンジもある、それだけ発展した村です。先端科学技術を持った最先端の会社もある一方で、車で少し走っただけで太古の昔からある自然に触れることができ、時間がゆっくり感じられる場所です。私自身は夏の夜、星を眺めながらぼーっとしている時間が好きです。ぜひ西郷村へ来ていただければと思っています。
あとは今、村の方に西郷村の良さを年中体感してもらうために「移住体験住宅を作ってほしい」とお願いしています。なるべく皆さんのご要望にお答えしたいと思っていますので、移住を考えているのであれば、是非白河市・西郷村にまずは遊びにいらしてください。
金澤(司会):少しでもみなさんがいい選択をされるように、お手伝いができればと思っています。
Editor's Note
丸ごと自分の生活を移そうと考えたとき、多くの不安が起こってくる。それが誰も知らない土地に行くのであれば尚更だろう。よくよく準備して、妥協しないところをきっちり決め、行った先で何をするのか目的を固めておくことこそ、地方移住をする意味が出てくるのではないだろうか。
KAYOKO KAWASE
河瀬 佳代子