リカレント教育
今回ご紹介するのは「コミュニティ・スクール」に関する事例。そもそもコミュニティ・スクールとは、教育を軸とした地域コミュニティの醸成をしていく新たな公立学校のスタイルです。
コミュニティ・スクールの目的は、教育を軸とした地域コミュニティの醸成をしていく制度を通じて繋がりを深め、みんなで幸せになること。ですが、まだまだよく知られていない!
そこで地域を巻き込んだ教育を推進したいアナタに紹介するのは、NPO法人 教員支援ネットワークT-KNITが主催した「地域未来創造カイギ 〜コミュニティ・スクール設置率100%!特別支援学校のコミュニティ・スクール実践事例から考える教育の未来〜」の様子。
前編記事では、特別支援学校のコミュニティ・スクールの運営に5年間携わった宮本慎太郎さんに、コミュニティ・スクールの事例をお伺いしました。
後編記事では参加者からの質疑応答も交えながら、宮本さんと、NPO法人 教員支援ネットワークT-KNIT 代表理事の塩畑貴志さん(通称:ソルティー)によるトークライブをお届けします。
塩畑(以下、ソルティー):参加者さんから「コミュニティ・スクールの活動をするのに、先生と保護者と地域との時間が合わない問題がありますが、何曜日の何時ごろに活動していますか?」と質問がきています。これは僕も興味がありますね。
宮本:私自身がやっていた時は、1人で活動しているに等しかったので、ある意味好きなようにさせてもらっていました。空き時間にコミスク便りを作って配っていましたね。活動中は「顔を売る」のも1つのチャンスだと思ってやってました。いろいろな話をするところからコミュニケーションが生まれますからね。足で稼ぐことは、馬鹿にならないなって思いました。
ソルティー:学校運営協議会(教育委員会が個別に指定する学校ごとに、学校の運営に関して協議するためにおかれる機関)の会議は、何曜日の何時ごろ開いていたんですか?
宮本:最初の会長が病院の先生で、病院って木曜午後が休診じゃないですか。だからその時間に合わせて開いていました。その流れから木曜午後が多かったかな。
ソルティー:どんな人がメンバーでしたか?
宮本:大学の先生、施設の方、お菓子メーカーの方、PTA会長、農業、ライオンズクラブの方とか。たくさん意見が出て面白かったですよ。やっぱり多様な人がいるって重要だなと思いました。
ソルティー:参加者の方から、「オンラインでどんなことをやっているのか気になります。共働きですと講演会などに参加したくてもできないことも多いです。いろんな立場の人が参加できる仕組みはオンラインに限らずあるでしょうか?」という質問が来ていますが、どうでしょうか?宮本:夜にイベントをすることもありますが、どの時間帯がベストかはわからないです。オンラインで参加したくてもできないこともありますから、調整は難しいですね。こちらの都合もありますから。
ソルティー:全員に来てもらおうというのが無理なのかもしれませんね。
宮本:会議を録画したものをオンラインで一定期間流すことも考えていいと思います。
ソルティー:他の参加者の方から「コミュニティ・スクール自体の運営予算はありますか?また外部講師の方に謝金は支払いましたか?」との質問もあがっていますが、どうですか?
宮本:委員への謝金はありますが、それ以外は基本的に予算はないんです。講師への謝金ですが、PTA共同企画の時はPTAから出してもらいました。あとは毎年コミュニティ・スクールの論文を書いていて、それで3万円をいただいています。2021年は時事通信社教育奨励賞の優良賞の賞金が10万円出たので、それを謝金にあてました。
ソルティー:論文書いて稼いでいるんですか!
宮本:講師への謝金の予算はついてないからね。2022年に書いた論文では9万円いただきました。
ソルティー:なぜそんなにもらえたんですか?
宮本:高等部が移転した際のワークショップのことを書いたんです。「農園になりましたよ」って。それが認められたんだと思います。
ソルティー:私もコミュニティ・スクールを運営する上でお金のことは問題になるなと思っていたんです。論文で運営資金を獲得するなんて、優秀ですよね!その他、参加者からの質問として届いているのが「同窓会は定期的に開いているのでしょうか。卒業生の声を聴くのはとても素敵ですが、その場がないので悩ましいです」という質問ですが、いかがですか?
宮本:ここ最近はコロナの影響でできていないですね。総合支援学校の子は病弱な子もいますから集めるのが難しい部分もあって、コロナ前にアンケートを実施(楽しかった行事や、学校のいいところ、未来に対しての希望などを卒業生と保護者へ質問。詳しい事例は前編へ)できたことは大きかったと思います。
ソルティー:次の質問にうつります。「コミュニケーションにLINEは使っていますか。先生が業務時間外に地域の人とSNSでコミュニケーションを取ることは可能でしょうか?」との声が届いています。
宮本:私は最大限活用していますよ。SNSへの偏見やデメリットもありますが、それによってネットワークが広がったメリットもあるので、それを止めたらダメ。要は使い方の問題だと思います。
ソルティー:ありがとうございます。どんどん質問がきているので、次に行きますね。「ある先生がコミュニティ・スクールのために動こうとしたら、校長先生から “コミュニティ・スクールは地域主体なので、動かないように” と言われていました。校長先生を説得する方法はありますか?」という質問です。
宮本:「ここは学校でやる」「ここは地域でやる」と切り分けて考える学校もありますが、私はそこは切り分けたらダメだと思っていて。「学校と地域」両者で歩み寄って考える必要があると思います。
ソルティー:ありがとうございました。最後に私からの質問なんですが、宮本先生にとって、コミュニティ・スクールの運営を頑張ってよかったなと思ったことはありますか?
宮本:ネットワーク、人の幅が広がりました。「こんな世界があるんだな」と知ることができたのは大きかったと思いますね。まだまだ自分の視野は狭いですが、いろんな人とつながることはプラスしかなく、人との関わりがあるから今の自分があるので、今まで関わってくださった方たちには感謝しかないです。
ソルティー:宮本先生がFacebookに投稿すると約100いいね!がつくのも、皆さんとコツコツ信頼関係を築いてこられたからでしょうね。本日は貴重なお話をありがとうございました。
Editor's Note
人間関係のこと、運営資金のこと、それらをクリアしながら内容も充実させたい熱意は増していくから難しい。5年間に、さぞかしいろんなことがおありだったんだなというのが垣間見えて来ます。それでもコミュニティ・スクールを運営する醍醐味があるんだよと、しっかりと指針を示してくださった宮本先生の熱い想いが伝わった時間でした。
KAYOKO KAWASE
河瀬 佳代子