SUMMIT by WHERE
グローバル化が進み、日本の地域文化への海外の方々の関心が高まっています。海外にルーツを持ち、日本の地域で活躍する方も増えてきました。
広い世界からの関心とパワーを地域に取り入れ、熱量と活動量を上げていきたい。そう思ったら次は、「それを実現する手段とプロセスは?」に関心が向きます。その答えはどうしたら見つかるのでしょうか。
そんな疑問を抱くアナタに向けて開催した、地域経済を共に動かす起業家のためのサミット「SUMMIT by WHERE」。第1回目は、完全オンラインにて、日本各地30箇所以上の地域から、第一線で活躍する方々が集まりました。
中でも本記事では、「グローカルで共感の渦と新たな財源を生み出す、持続可能な世界の作り方」をテーマに、麻場 俊行氏(株式会社Freewill Founder&CEO)、元岡 悠太氏(株式会社トラストバンク寄付文化デザイン部部長 ※2020年8月時点)、平林和樹氏(株式会社WHERE代表取締役)の豪華3名がトークを繰り広げました。
その内容を前編と後編に分けてお届けします。
平林(モデレーター):このセッションは、ローカルとグローバルな視点が飛び交いつつ、本質的な持続可能な世界をどのように創っていくかをお話しする形になっています。視聴者のみなさんも「これはどうなの?」といったことがあればコメント欄に書き込んでください。
モデレーターを務めます株式会社WHEREの代表取締役の平林です。私はオープニングや前のセッションで自己紹介しておりますので割愛させていただき、登壇者のお二人に自己紹介をお願いします。
麻場氏(以下、敬称略):株式会社Freewillの麻場です。僕の会社は主にICTの日本企業が海外へ展開する支援をしているテックカンパニーです。何とかして日本の文化と伝統を守りつつ、グローバル化を果たしていくというミッションの下でやっていますので、年がら年中、何かのサービスを作っているような感じです。
今日はIT視点と、グローバルで流行っているサービスや技術を使うとどんなことができるのかということをお話ししたいと思います。IT用語などでわからないことがあればチャットでコメントをいただき、それに答えていきたいと思っています。よろしくお願いします。
元岡氏(以下、敬称略):株式会社トラストバンク寄付文化デザイン部の元岡と申します。弊社では、まさに今日のテーマに関係する「自立した持続可能な地域をつくる」をビジョンに掲げています。ふるさと納税総合サイト『ふるさとチョイス』でふるさと納税型クラウドファンディングサイト「ガバメントクラウドクラウドファンディング」を運営しており、ふるさと納税で寄付をいただいた寄付金を原資に、自治体様自身でプロジェクトを動かすという形をとっており、持続可能性にアプローチしている媒体になると思います。
『ふるさとチョイス』以外に、エネルギーの事業や、自治体業務の効率化を支援して付加価値の高い住民サービスを作っていくパブリテック事業、地域通貨事業にも取り組んでおります。麻場様に比べると現場感が強く、熱い職員さんのエピソードなどもありますので、ボトムアップの視点で色々なことを皆さんとお話ししたいと思います。
平林:社会性と経済性という両輪をどう回していくかが、このセッションの本質的なテーマだと思っています。事前の打ち合わせの時に、麻場さんの『SPIN』というサービスも、元岡さんの『ガバメントクラウドファンディング』も、最初からクラウドファンディングをやろうとしていたわけではなく、最終的に辿り着いたのがそこだったというお話をしておられましたよね。そこが面白いと感じましたので、なぜそうなったのかというところから、お伺いしたいと思います。
麻場:貧困とか地域の問題を解決していこうとすると、地域が自立できないと意味がないと思ったんですよね。自立するために、地域が持っている才能に対して全世界が課金できる仕組みがあったら面白いなと思いました。
今まで全く関係なかった人たちが地域の才能に課金した後、その地域の物事に関して意見を取り交わしながら育み続けるという仕組みを追求してみたら、クラウドファンディングが一番わかりやすい形だったんです。
平林:元岡さんがいらっしゃるトラストバンクでは「ふるさと納税って寄付の使い道が大事だよね」とメッセージングをしていると思います。そのあたりも含めて、なぜクラウドファンディングに辿り着いたのかをお伺いできますか。
元岡:トラストバンクの会長である須永が、ふるさと納税という仕組みを初めて知った時に、「クラウドファンディングみたいだ」と強く感じたらしいんです。それで、『ふるさとチョイス』公開1年後の2013年の9月に『ふるさとチョイスガバメントクラウドファンディング』という形で、須永が最初に思った形を実現させました。
一つひとつのプロジェクトオーナーになるのは地方自治体様なので、サービス内容に正確な名称をつけるならば『ローカルガバメントクラウドファンディング』になります。それを敢えて『ガバメントクラウドファンディング』という名前にした理由は、色々な自治体が連携して課題に取り組むことで、まさに政府のような力が持てるのではないのかと考え、それがインフラになっていくようにという想いを込めたからです。
平林:チャットで質問が来ています。「グローバル化とローカルは相反するものなのか、それとも共存しつつ成り立っていくのか?」例えば、外需に頼り過ぎるとコロナに象徴される外部環境に左右されて、やっぱり内需が大事だよねとなったりしますよね。色々な考え方があると思いますが、グローバルとローカルはどういう風にお互いに自立していくのがいいのかについてお答えいただけますか。
麻場:例えば「地域の景観を守りたい」というプロジェクトが立ち上がって、クラウドファンディングで資金調達できたっていいわけですよね。「人口が減っているので人口を増やしたい」というクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げてもいい。その時に、「こういう文化を取り入れたいので、この地域の方から来る方々を募集している」といった発信をすることもできる。
これからは、ダイバーシティを止められない、融合させなきゃいけないという考え方にシフトしていかなきゃいけないんですけど、それを担う方法もITを駆使するといろんなことが幅広くできますよ。
平林:元岡さん、このあたりは行政でもいろんな話があると思うんですけれど、どのように感じられますか。
元岡:そうですね、「地方の自立」といったときに、「何における自立が大事なのか」がポイントになると思います。経済的な自立は確実に実現していかなきゃいけないところですが、繋がりをつくることを大切にすると、自立というよりは「共立共創」の方が近いと思っていて、自立も含む「共立」が重要かな、と。
例えばですが、今回のテーマの「共感の渦」になっているプロジェクトでいうと、最近その渦に、いい意味で巻き込んでいただいた事例がありまして。このコロナ禍の中で北海道庁さんが実施した医療従事者の支援プロジェクトで、1週間以内に1億円以上のふるさと納税の寄付金が集まりました。寄付者の半分以上が道民の方で、共感にも種類があることをすごく感じました。
逆に、沖縄県の長橋さんが出た首里城のプロジェクトだと、ふるさと納税であるのに、応援メッセージが外国語で溢れる時期もあって。オーナーとなる被災者の方々の熱い想いがベースにあるからこそ、共感が得られたのだと思います。
元岡:次のステップとして、「どうやって顔が見える関係性の中で、共感の渦をつくっていくか」については、自分たちも相当面白いテーマだと思っています。どうやって一緒につくっていくのか、人工的にもつくることができるのかを検証しているところです。
平林:めちゃくちゃ面白いですね。お二人の話を聞いていると、そもそも日本とか世界とかすら、境界線がいらないんじゃないかみたいな感じがしてきます。いいものはいい、地球環境にとって良いものは選ばれていくように支援する、なんですね。
麻場:いきなりグローバルな話になりますが、国連が世界経済フォーラム(ダボス会議)で、ニューノーマルの新しい言葉として決めた言葉が「The Great Reset」なんですよ。
「どうリセットするのか」っていうと、それが「NEXT資本主義」になるんですが、信用がお金に変わる瞬間がシェアリングエコノミーなので、クラウドファンディングを使うと、自分に溜まっている信用が、プロジェクトを立ち上げるとお金に変わるんですよ。
さらにその裏の政治の仕組みをなんとなく理解すると、新しいエコシステムが生まれる。「災害をなくそう」とか、「地域のみんなで助け合おう」とかっていう考え方は、どこが財政を守れるかという議論にはならないので、ボーダーレスなんですよね。
例えば、ふるさと納税を仮想コインの流れで仕組化していくと、全ての自治体が仮想コインの中で繋がって、ふるさとコインみたいのが出来上がります。どこの県に税金が入っても、結果的にみんながそのポイントの中で繋がっていくことになるので、凄く未来が広がるんですね。
平林:地域の経営を担っている行政に近い部分でお仕事されている元岡さんも、ローカルとグローバルの垣根に対して、麻場さんと同じように課題意識を持っているかと思います。この課題に対するアプローチは、どういったものを考えていらっしゃいますでしょうか。
元岡:そうですね、広域のところでいうと、近くの人たちで繋がる方法と、全く離れたところで繋がる方法の2パターンがあると思います。
前者の「近くだから連携しよう」という発想に対して、ガバメントクラウドファンディングでは、近隣の自治体と連携できるような体系を取っています。ふるさと納税を多くの自治体が受け持つのは難しいので、一つの自治体が受け持って、それをみんなで使いましょうという形を取ります。
後者については、広域連携のクラウドファンディングを以前から実施しています。共通の課題に対して、「こういった考えで取り組みませんか」というのを、弊社の方から呼びかけさせてもらっています。賛同してくださった自治体さんと一緒に、一つのキュレーションページを作らせていただき、そこで皆で一緒に情報発信することで、広域的に課題解決していきましょうみたいな取り組みも始まっています。
そうやって広域のスコープを広げて閉じてというのを繰り返すことで、ローカルとグローバルの垣根がなくなっていくんじゃないかというのを感じます。
麻場さんが出資者の方の話を先ほどされたのが、すごく面白いなと思って、その人たちのこともしっかり考えなくちゃいけないなと思いました。
麻場:ふるさと納税では、返礼品の生産者やその返礼品を選んだ自治体など、地域のストーリーに投資してみたいと思う人がどんどん増えています。さらにそのふるさと納税のプロジェクトに寄付者自身が参加できると、全く自分に関係ない地域のプロジェクトを自分の人生に導入することができる、それって人生にとってみたらすごく幸せなことだと思うんですよ。
今まで絶対に携われなかった人脈や、地域との繋がりができて、さらに返礼品が自宅に届く、そういうサイクルが生まれたら最高じゃないですか。
IT業界では常々、「生きている間にどれだけプロジェクトを自分で抱えるか」という、プロジェクトベースの時代になると言われています。会社に勤めることは、生きるために必要なことだし、家族を守るためとか、いろんな理由があります。
ですがこれからは、それとは別に「自分のやりたいことはプロジェクトベースで請負える時代」になってくるんです。それがガバメントクラウドファンディングの中でプロジェクトとして生まれてくると、すごく楽しいし、参加もしやすくなるので、例えば跡継ぎ問題の解決にも繋がっていくと思っています。
元岡:多様な手段が持てるようになると、手段に縛られなくなると思うので、自らがプロジェクトを選んで、携われるというのは良いですね。
麻場:ただやっぱり「利益目的」の今までの資本主義と、社会性のある事業ってどうしてもリンクしないんですよね。SDGsもそうですが、プラスティック問題とか、海のゴミ問題を解決しようとしたら、利益主義を取り外さないと不可能なのではないかと思います。
そういう話をすると、「そうなんだよね」って多くの方が共感してくれるのですが、「じゃどうするよ」って話をしたくて、ここに関しては新しいテクノロジーがカバーできるところが大きいと思っています。
元岡:コミュニケーションの部分とかも本当にそうですよね。
Editor's Note
新しいテクノロジーを活用して、ポータルサイトという場で社会問題の解決を図っていくというお話にグイグイ引き込まれました。
私自身、元IT系研究者でポータルサイトの構築と運営にも携わった経験があります。当時の技術ではできなかったことが、今は実現でき、未来はもっとできるようになると思うと夢が広がります。
FUSAKO HIRABAYASHI
ひらばやし ふさこ