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LOCAL LETTER

SDGsとは当たり前の基準を上げることなのかもしれない。と気付かされた、下川町の当たり前の基準の高さ

FEB. 04

拝啓、社会課題を解決することに携わりたいアナタへ

北海道下川町。1980年代に人口減少率NO.1を記録したこの町は「森林資源」を中心に新しい産業を生み出し息を吹き返し、2018年より内閣府が選定する「SDGs未来都市」にも選定されている。

下川町の取り組みの詳細を知りたい方はぜひ調べて欲しい。「下川町 SDGs」と調べれば彼らの取り組みが様々な形で紹介されているはずだ。バイオマスを活用した地熱で、再生可能エネルギーの比率を高める施策。地域全体が地熱によって熱供給をされているエコビレッジ。心が躍るような様々なチャレンジが行われている。

私は今回、「SDGsと森」というテーマを自分に掲げ、1週間下川町に滞在する中でSDGsが町でどのように捉えられているかわずかながら体感してみた。SDGsのアジェンダに書かれていること、掲げられていることは抽象度が高く、イメージがつきづらいものが多い。実際、私自身もまだ感覚的にしか理解できていない部分が多い。

そんな難しいテーマは果たして、町でどのように解釈されているのだろうか。

滞在してみたわかったのは、下川町でも言葉の意味の浸透はまだ途中段階、というところだった。全体の動きとしても会議を重ねまずは下川町なりのSDGsに言葉を落とし込んでいる、というフェーズだ。

しかし、下川町はその言葉が浸透しきっていなくても、SDGsがこの町で実現される匂いがプンプンした。

彼らから高い基準の当たり前を実現するスタンスを感じたからだ。

合併検討時に行なった徹底的な議論。ビジョンの浸透度がスピードと理解度を支える

町にとって、活性化する最初の転機は合併をするか検討した2000年代初期だったという。外国からの安い木材の輸入により急激な速度で衰退をしていった下川町に、国から合併の話が挙がった。「合併すれば補助金を出す」、と国から餌をつられたというが、徹底的な議論を通じた結果、彼らは合併をしない道を選んだ。そしてこの時に、彼らは林業を中心とした町の活性化を目指すビジョンが生まれたという。

下川町のパンフレットの見開きに書かれていたビジョン

この時に深いレベルでビジョンを話し合ったことが、今の下川町の活動に影響を与えていると、タウンプロモーション推進部の長田はおっしゃていた。私自身、下川町に滞在する中で感じたのは、1つ1つの施策がスピード感を持って堅実に実行されていることだった。例えば、上記に上がったエコハウスは9年前から構想を描き、6年前より実現化し稼働。エコヴィレッジ内で新しく始まったしいたけ栽培事業は2014年からスタートし、5年で従業員25人が働く事業にまで成長している。

その理由の1つがビジョンの深い浸透度だと、いう。

徹底的な議論を通じて生み出したことにより、関係者同士の理解度が高い。新しい施策を行う際、どんなに議論をしても根本のビジョンでぶれることがないというのが、スピード感と関係者の納得度の両立を生み出している、とのこと。

地域づくりのみならず、組織運営においてもとても参考になる話だった。

ビジョンからブレない課題設定力と、堅実的な実行力

また、町を視察し、話を聞く中で印象的だったのは計画倒れしたプロジェクトがとても少ないことだった。

下川町は堅実でスマートだと思う。

町の予算で作られた施設も一般の人が使っており、地域あるあるな「ハードは立派だけど全く使われていない施設」のようなものはほとんど存在していなかった。

このスマートさは、2つの要素が生み出していると思われる。

1つは適切な課題設定力。実際に下川町には外部から企業や大学など、様々な専門家が出入りし携わっておりその結果、多角的な角度から下川町の現場や課題が分析されており、課題が洗い出されているという。外部との連携を適切に行うことで、自分たちの町の可能性を最大限に引き出していると感じた。

そして2つ目が堅実的な実行力。話をお伺いした1人、NPO森の生活代表の麻生さんはSDGsでも掲げられている林業の川上〜川下のシームレス産業化の実現を目指し活動を行なっているが、この実現には各林業の関係企業の協力がなければ実現ができない。そのため、麻生さんは各所との関係づくりに足を運び自ら顔を出し、関係性を作り実現に向けて動いたという。

形状、木の種類以上使用方法が限られてきた材木たちも、テーブルの天板としての販売スキームが整えられている。(販売サイト:https://morinoseikatsu.org/goods

近道は存在しない。1つ1つ、ビジョンに対して現われる課題に向き合い、泥臭く取り組み、改善していく。その当たり前なスタンスのレベルの高さを、下川町から感じた。

SDGsとは、高い基準の当たり前を指す言葉なのかもしれない

人を平等に扱い、大切にすること。エネルギーを余すことなく使うこと。環境に優しい取り組みを目指すこと。SDGsではそのようなことがアジェンダとして掲げられているが、書かれていることは難しいことではない。

しかし、いざ実行するとなると難しい。楽をしようとするとエネルギーを多く使うこともあるだろうし、自分が疲れていると、頭でわかっていても周りの人を大切にできない行動をとってしまう。

そういう意味で、下川町には素晴らしいスタンスが文化として根付いているのだろう。当たり前のレベルが高い。

町のことは議論しあいながら話し合うこと。連携しながら、現れた課題を解決していくこと。人だけが幸せになるのではなく、自然と共存しながら生きる方法を模索すること。

SDGsという言葉ができる前から、この町にはこれらを大切にするような文化が根付いている気がした。だから、下川町ではこの横文字が一人歩きすることはないだろう。

自分たちの町にとってのSDGsとは何か。

常に向き合いながら、地域一帯となって取り組むに違いない。

社会的なインパクトの仕事をしたい人こそ、当たり前を大切に。それを体感できた試住体験でした。興味ある人はぜひ、下川町に触れてみてください。

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Editor's Note

編集後記

当たり前を当たり前にできること。誰でもできそうなことを、圧倒的なレベルでできることは、差別化だ。下川町からは、当たり前のレベルの高さをとても感じた。

日本の地域に先進事例があることを世に一緒に広めていきましょう。

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