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固定概念に縛られず、CEOのビジョンを組織に繋げ実現する。トップを支える「ナンバー2」の視座と役割(後編)

MAY. 20

JAPAN

前略、市長・副市長の目線から、自治体内部の動きを覗きたいアナタへ

地域を元気にしていくための重要なプレーヤーである自治体。民間企業とは異なる組織構造とダイナミズムを持ち、「外からはわかりにくい」、「協力関係を築きづらい」という声も聞こえます。

しかしながら、そんな自治体に外部から飛び込み、新しい文化を育て、目覚ましい成果を上げている人たちがいます。彼らは一体、どんな工夫をしているのでしょうか——。

そんな疑問をもつアナタのために開催した、あらゆる業界・地域を超えた地域経済活性化カンファレンス「SHARE by WHERE」。第2回目も、完全オンラインにて、日本各地30箇所以上の地域から、第一線で活躍する方々が70名以上集まりました。

中でも本記事では、地域を変えるCOO。ナンバー2からみるまちづくり経営の視座と役割」と題して、毛塚幹人氏(茨城県つくば市 副市長*1)と、東修平氏(大阪府四條畷市 市長)のトークをお届け。

市長を支えるナンバー2として、数々の新しい政策を実現させてこられたコツとは——

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前半のセッションはこちらからご覧になれます!

行政経営をやる人が行政の生え抜きのプロじゃなくてもいい時代

東氏(モデレーター:以下、敬称略):あまり副市長のことが分からないという人も聞いているかもしれないので、あえて説明すると、市の中には副市長というのは1人とは限らず、複数置ける自治体もある。これは条例で決めることができます。四條畷市の場合は1人ですけど、つくば市の場合は2人ですね。

こうした中で、非常にプレーヤー側に針が振れている副市長から、徹底的に議会対応含めて調整という守りに徹している副市長もいる。攻めと守りのグラデーションがあるのかなと思います。毛塚副市長は冒頭のスタートアップの話で、「COO らしい」ということを、無意識に調整側の方を指して言ったんじゃないかなと思うんですけど、どうですか。

画面右> 東修平氏(Shuhei Azuma)大阪府四條畷市 市長 / 外務省、野村総研インドを経て、2017年1月から大阪府四條畷市長に就任。その後、公約であった副市長の全国公募を実行し、0歳児を持つ女性副市長とともに、公民連携による施策を多数展開。11年ぶりの人口増加を達成。日本一前向きな市役所をめざし、(一社)at Will Work主催の WORK STORY AWARD で2019年、審査員特別賞を受賞。
画面右> 東 修平(Shuhei Azuma)氏 大阪府四條畷市 市長 / 外務省、野村総研インドを経て、2017年1月から大阪府四條畷市長に就任。その後、公約であった副市長の全国公募を実行し、0歳児を持つ女性副市長とともに、公民連携による施策を多数展開。11年ぶりの人口増加を達成。日本一前向きな市役所をめざし、(一社)at Will Work主催の WORK STORY AWARD で2019年、審査員特別賞を受賞。

毛塚氏(以下、敬称略):必ずしも、片方に振っているわけではないですね。やっぱり両面必要だと思っています。つくば市には副市長が2人いますが、役割分担としては、僕の方が新規事業開拓です。とはいえ、守りの側面(危機管理)もやりながら取り組んでいく感じですね。

地方創生というと、どうしても経済回りやアイディアが重視されると思っています。でも攻めだけではいけない、ちゃんと組織に定着させたりとか、地域の関係者を巻き込んでいくところまでやってかなきゃいけないと思っていますね。

画面左> 毛塚幹人氏(Mikito Kezuka)茨城県つくば市 副市長*1 / 2013年財務省入省、国際局国際機構課、主税局総務課等を経て2017年に退職し、同年4月より現職。テクノロジーの社会実装、官民連携、財政、産業振興、保健福祉等の政策企画や執行を担当。Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満の30人」、世界経済フォーラム「グローバルシェイパー」選出。1991年2月生。栃木県出身。
画面左> 毛塚 幹人(Mikito Kezuka)氏 茨城県つくば市 副市長*1 / 2013年財務省入省、国際局国際機構課、主税局総務課等を経て2017年に退職し、同年4月より現職。テクノロジーの社会実装、官民連携、財政、産業振興、保健福祉等の政策企画や執行を担当。Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満の30人」、世界経済フォーラム「グローバルシェイパー」選出。1991年2月生。栃木県出身。

東:海外では副市長を選任する仕組みにも色々な種類があるのに対して、これまでの日本では、市役所の中で企画課長をやって、総務部長あるいは議会事務局とかを経た、主要な部署を経験して管理部局の管理職を経た人間が副市長に就くのが慣例でした。

毛塚副市長は26歳のときに財務省を辞めてつくば市に行っているという、慣例から大きく違うところから副市長をされています。そのご経験から、今後、副市長はこんな役割こんなパターンとか、こういう人が求められていくんじゃないかと思っていることを教えていただけますか?

毛塚:省庁から来るというパターンについては、自分も財務省出身ですけど、地方行政と国での行政って全然違いますよね。扱う案件の粒度、具体的な関係者や扱う制度が違うので、国での経験がそのまま役立つわけでは全然ないというのが正直なところですね。

また、同じ行政分野を扱っていても、10年前までやってきたことと今ホットなトピックは全然違いますよね。だから、行政経営をやる人は行政の生え抜きだからといっても上手く行く訳でない時代になっているという感じですね。昔のように、決まった業務のルーティンをうまくリスクなく回していくみたいなことが主眼であれば、生え抜きも十分機能したと思いますけど、今はそれがむしろリスクになっている時代でもあると思いますね。

政策のアウトプットだけでなく、オペレーションやガバナンスの情報シェアも必要

東:若手の首長が当選されて市役所をマネジメントしていくときの進め方は、大きく二つにわかれると思っています。一つは改革を早く進めるために、中堅とか若手の意欲ある職員と首長が直接話をして前に転がしていくパターン。もう一つはちょっと時間がかかるけど、腰を据えて部長陣から順に納得度を増していくというパターン。多分どっちも良し悪しがあると思うんですが、つくば市はどちらですか。

毛塚:どちらかというと、前者の若手職員と、新しいことを立ち上げていく方がスピーディーではあるんですが、それが機能するのは本当に初期のフェーズだけですね。一つの政策が実現する中で、管理職員の理解がないとまともなことはできないなと思っています。

トップダウンでやって形だけ実現したけど、その後、トップ層も存続が細かく見切れずに終わっていく案件って、自治体では結構多いんじゃないのかなと感じています。

東:少し失礼な言い方かもしれませんが、いわゆる「一発花火行政」ですね。私も可能な限り、そうならないようにしたいと思っています。

その一方で、市長の一番大きい役割は「止めること」「やらないことを決めること」ですよね。お金と人の総量を考えた上で、全部をできないからこそ、この分野・事業はしませんと。言うのは簡単ですが、これほど難しいことはない。私も取り分け1期4年は、この「止めること」「やらないことを決めること」に、おそらく政治的リソースのほとんどをつぎ込んで来ました。これは、副市長に任せてできるものじゃないという認識です。

四條畷市公式Webサイト「市長の部屋」
四條畷市公式Webサイト「市長の部屋」

毛塚:そこはもう、本当にいろんな反発が出ることもありますから、市長の判断事項ですよね。

東:そうなんですよ。1期4年はそこに力を割いて、その調整にだいぶリソースを使いました。苦情は副市長に入ってきますし、林副市長(四條畷市の副市長)には迷惑かけたな、心労をかけたなと思います。

毛塚:従来のような、出向で1,2年副市長やるじゃないパターンがこれからどんどん増えていくと思うので、各年度をどう使っていくのかという考え方は重要ですよね。また、市長が着任して4年目とかは立ち上げ期だと思うんですよね。それ以降は、拡大期だったり、安定経営期だったりすると思います。プロフェッショナルとして副市長やる人が増えてくると、そこのフェーズごとの違いの見極めなども大事になってくるかもしれないですね。

つくば市公式Webサイト「つくば市未来共創プロジェクト提案窓口」
つくば市公式Webサイト「つくば市未来共創プロジェクト提案窓口」

東:例えば私で言うと今は2期目ですけど、1期目・2期目の役割の違いがあって、さらに1つの期の中の1年目・2年目・3年目・4年目に役割の違いがあるんで、この波を間違えると全然うまくいかないことありますよね。政策の本とか公共政策関係の方では、そういうことに全然触れてないですね。

毛塚:このあたりが着任前に学べる場所がないし、言ってくれる人がいない。政策のアウトプットは世の中に出ますけど、どういうふうにそれをオペレーションしているかとか、ガバナンスしているかって全く外に出ないんですよね。個別の人間関係で聞いてくしかないなと今は思っています。その一方で、これから外部人材がいっぱい入ってくる中で、それでいいのだろうかと思います。ちゃんと情報シェアしていきたいなって思いますね。

市長のCEOとしてのビジョンを組織に繋げて実現していくことが、COOたる副市長の役割 

東:残り15分になりました。質問をいっぱいいただいているので、チャット欄を確認させていただきながら、聞いていってもよろしいでしょうか。

最初の質問は、「副市長の成果はどのように評価されますか、されるべきですか」ということですが、どうですか、副市長。

毛塚:僕はこれについては自分で律するしかないと思っています。評価制度など存在しないですし、選ぶ権限も着任時に議会が選ぶだけですからね。僕の場合は、執行の責任者なので、市長の公約をどれだけ具現化して執行できるかで評価されるべきかと思います。

東:おっしゃる通り、副市長に評価制度とかないですからね。うちの副市長と話しているのは、副市長単独で評価をされることはないということです。市長は4年に1度必ず住民による審判が下りますから、私はこれを持って、主権者である市民からの市長・副市長に対する評価だと思っています。

次のご質問は、副市長が仕事を任せられる職員像を、とのことですが。

毛塚:これも業務の種類によりますが、例えば何か新しい事業を立ち上げる場合は、前向きさがとても重要だと思いますし、ある程度市長や私と思いがすり合わさっていることが必要ですよね。そういう職員を最初の立ち上げ期に育てることが大事かなと思います。

東:逆に、常に批判的でネガティブな職員が向いている部署もありますよね。市長のことをあまりよく思っていない方が機能するみたいな。そういう職員をあえて企画や総務の部署に必ず入れるようにしておくのが、結構ポイントなんじゃないかな。一つの部署で全員同じマインドセットじゃない方が、ポートフォリオで考えた方がいいですよね。

視聴者の方からの質問が、あと一つ。どちらの市も外部人材に対して積極的な印象がありますが、外部から人材が入ることで既存の職員との軋轢が生じたりしませんか。これはよくいただく質問ですね。

毛塚:つくば市では、これまでに2パターン採用しています。一つ目が常駐の任期付職員で、もう一方がアドバイザーとして入ってもらっている人材ですね。外部人材をどういう風にマネジメントしていくのかは、あらゆる自治体で課題だと思います。例えばJobDescriptionをちゃんと結んで、どういうふうに働いていくのか、どういう経路でアドバイスをもらうのかといったことを明確化していくことによって、組織に定着していきました。

これから自治体は絶対外部の人材に頼ってかなきゃいけないと思うんですが、そのときにどういう風な立てつけで受け入れて、効果を最大限発揮してもらうかという仕組み作りなどは行政側の腕の見せどころだなと思いますね。

東:最後の質問は、私から毛塚副市長に。「COOとは何でしょうか?」

毛塚:市民から付託された市長のCEOとしてのビジョンを組織に繋げて実現していくのが、COOたる副市長の役割だと思っています。それが当たり前のように見えて自治体だと意外と当たり前ではないという中で、これからそういう経営人材を自治体も作っていかなきゃいけない時代に来ているかなと思っています。

東:まとめていただいて、ありがとうございます。今日は副市長のCOOとしての役割を皆さんに少しお伝えできたかなとは思います。聞いていただきました視聴者の皆さん、ありがとうございました。

 *1 茨城県つくば市 副市長は、本カンファレンス登壇時の所属になります

Editor's Note

編集後記

「君がもうそこにはいなくなった遠い未来に、最良の解であることを目指しなさい」

お二人の話を聞いていて、この言葉を思い出しました。自分が去った後の組織に社会に、何が残せるか。お二人とも、遠い未来を見据えて仕事をしておられると感じました。

毛塚さんは、当初のご予定通り、3月末で、つくば市副市長を退任されました。次のステップと今後のご活躍を楽しみにしております。

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