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経営で一番大切なのは「手段」ではありません。ペライチ創業者 会長・山下翔一流「地域で事業が受け入れられるための経営哲学」

DEC. 25

ALL OVER JAPAN

前略、地域で事業やビジネスを成功させたいアナタへ

同じ “資本主義” でも、都心は価値経済で、地方は信用経済。

そう話すのは、「誰でも・カンタンに・最短5分で」集客力の高いウェブページやネットショップを無料からつくれるWEBサービス『ペライチ』の創業者で会長の山下翔一氏。

たった4年強で口コミや紹介をメインに、世界中で20万以上の個人から大手企業にまで幅広く使われているペライチですが、驚くべきは、ほぼ47都道府県各地に400名近くの「ペライチサポーター」と呼ばれるペライチの同志でありファンがいること。さらに、ペライチサポーターの活躍によって、ペライチ利用者の平均年齢は50歳以上、60歳以上の方の利用も珍しくないということ。

そこで今回は、山下氏への取材を通じてみえてきた「地域で事業が受け入れられるための経営哲学」をまとめました。

山下 翔一(Shoichi Yamashita)氏 株式会社ペライチ創業者 取締役会長 / 1983年佐賀県生まれ。広島大学大学院理学研究科数学専攻 博士課程前期修了。ペライチ をはじめ、600以上の自治体の首長が加盟『2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合』代表サポーター(企業代表)、全国数十万ヶ所 2000万人を目指す『応援村(経産省連携)』 執行委員 兼 広報部長、環境省主導の国家プロジェクト『地域循環共生圏プロジェクト』メンバー、真の地域活性化を目指す『一般財団法人カブジチコンソーシアム』代表理事、2018年から世界60拠点 4万人以上を巻き込み世界最大のフェスを目指す『おうえんフェス』発起人 会長、次世代の産業界のグローバルリーダーを育成し、ICTで現代の維新を目指す『情報経営イノベーション専門職大学』客員教授、佐賀県有田町 他、複数自治体の顧問やアドバイザーなど合計で35以上の企業・団体・プロジェクトの代表・役員・社外取締役・顧問等を務めている。
山下 翔一(Shoichi Yamashita)氏 株式会社ペライチ創業者 取締役会長 / 1983年佐賀県生まれ。広島大学大学院理学研究科数学専攻 博士課程前期修了。ペライチ をはじめ、600以上の自治体の首長が加盟『2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合』代表サポーター(企業代表)、全国数十万ヶ所 2000万人を目指す『応援村(経産省連携)』 執行委員 兼 広報部長、環境省主導の国家プロジェクト『地域循環共生圏プロジェクト』メンバー、真の地域活性化を目指す『一般財団法人カブジチコンソーシアム』代表理事、2018年から世界60拠点 4万人以上を巻き込み世界最大のフェスを目指す『おうえんフェス』発起人 会長、次世代の産業界のグローバルリーダーを育成し、ICTで現代の維新を目指す『情報経営イノベーション専門職大学』客員教授、佐賀県有田町 他、複数自治体の顧問やアドバイザーなど合計で35以上の企業・団体・プロジェクトの代表・役員・社外取締役・顧問等を務めている。

1. 経営で一番大切なのは、必ずしも「商品・サービス」ではない

出身が佐賀県という山下氏は、地方出身者だからこそ、大前提として地方が大好きであり、かつ、地方で生活をしていたからこそ、都心と地方の格差も肌で感じていた。

「ペライチというWEBサービスを展開していますが、私自身は正直、WEB自体にはあまり興味がないんです。私が見ているのはWEBではなく社会課題や地域課題。例えばペライチでいうと “地方創生” だったり “地方の方々の教育やIT利活用促進” だったり。ITという切り口一つをとっても、東京をはじめとした都市部と地方の違いはすごく大きいんです」(山下氏)

都心と地方、大手企業と中小零細企業、その数でみればどちらも後者の方がマジョリティのはずなのに、両者の間には大きな格差が生まれているケースは多いという。

「私にとって商品やサービスは手段でしかないので、それ自体にはあまり興味はないんです。ペライチで例えるなら、IT(テクノロジー)も手段でしかないので、私にとってITは目的ではありません。私が経営において大切にしているのは、商品やサービスの前に、目の前の人や地域、国や社会における課題や人々の悩み自体です。それらの課題や悩みを解決してはじめて、ITという手段も価値に転化するのです。」(山下氏)

日本はいま、IT(テクノロジー)という手段に人もお金も集まっている。一方で、IT(テクノロジー)分野において日本は、先進国の中で投資額もまだまだ少なく、費用対効果も良くないのが実情。

「日本はIT後進国になりつつありますが、それを国も民間企業も盛り上げるためにそれぞれ努力をしています。それ自体は素晴らしいし、ペライチでも日本のIT産業の活性化に寄与したいと思っています。しかしながら、今の日本のITにおけるR&Dへの投資額を考えると、テクノロジーのレベルで世界最先端を狙うことには限界もあります。そんな中で日本はどこで世界のIT先進国に太刀打ちできるのか? そこに向き合うことができれば自ずと、日本のもつ “世界最先端の課題” に着目すべきだ、と気づくのです」(山下氏)

「その世界最先端の課題の多くは、日本の都会ではなく、日本の田舎に顕著に存在します。つまりそれは可能性の塊であり、宝物であり、その課題を解決するソリューションを与えることができれば、将来の世界的なマーケットを見据えたビジネスにもなり得るのです。日本の地方や田舎は、そんな可能性に満ち溢れた場所であり、地方から地域課題を解決できる人材を育成したい、地方から大きな価値を生める人材を育てたい、そういう想いでペライチという手段の一つに行き着いたのです」(山下氏)

山下氏はペライチを通じての活動だけに留まらず、現在、自治体の顧問やアドバイザー、2020年東京オリンピック・パラリンピックを活用した地域活性化推進首長連合の代表サポーター(企業代表)、身近な人の夢や挑戦を「おうえん」し合える社会を実現する「おうえんフェス」の会長や経産省と連携した「応援村」の執行委員・広報部長など活躍の幅を広げている。

2. 住民のリテラシーを本質的に上げる仕組みをつくる

一見、“日本” という括りの中ではどこも同じように見えますが、山下氏はペライチをはじめとした活動を通じて、地域ごとに異なった特徴をもっていたり、異なった課題を抱えていると話す。また、地方では人の教育が非常に遅れていると実感していた。

「例えば “経済” という視点だけみても、日本中が同じ “資本主義” というフレームワークで動いていますが、東京および一部の都会は価値経済、地方は信用経済と言っていいほど中身が違うんです」(山下氏)

都会では、価値の高い商品やサービスをつくれば、使ってもらえるケースが多い。例えば、ペライチというサービスが新しく出た時、サービスの価値が伝われば、都会の人はすぐに使ってみようというアクションに至る。

しかし、田舎に行けば行くほど、サービスの価値よりも、「信用」が重要になり、「誰が提供するサービスなのか?」「誰が紹介したのか?」が効いてくる。田舎においては、サービスにおける価値よりも信用が優先される傾向にあり、信用がなければどんなに価値のあるサービスも使ってもらえないことが多い。

「地方はよく “物々交換の経済” と言われますが、田舎出身の私からすると、“交換”というワードは適切ではないんです」(山下氏)

交換は、交換する時にある程度「相手にあげるものと、受け取るものの価値」を考えた上で、交換という行動が行われる、簡易的な契約に近い。それに対し、田舎は「交換ではなくGIVEとGIVEの文化」であり「相手にあげたいからあげている」のであり「相手にとってこれが価値があるか」はあまり考えないことが多い。つまり、田舎とは、流通するモノやサービス自体の価値よりも「人々の “善意と信用” によってモノやサービスが流通する経済」と山下氏はいう。

「私の実家は、地元で63年続く印刷会社なのですが、業界としては20年以上前から、紙の需要は下がり続けているはずなのに、実家の印刷会社は少しずつ売上を落としながらも、いまだに従業員を30人ほど抱えながら事業を継続しているんです。これは、紙や印刷に価値を感じて発注している人が多いからなのではなく、“山下さんに発注したい” という人たちが多いから。地方は、長年閉じた経済圏のなかで信用で経済が回ってきたので、(極端にいうと)仮に価値が低い商品やサービスがあったとしても、時代遅れの商品やサービスがあったとしても、経済が回ってきたんです。」(山下氏)

しかしこの信用経済は、日本の景気が良い時には問題ないのですが、だんだんと日本の景気が悪くなり、多くの企業の経営や個人の生活が苦しくなっていくと、信用よりも価値を優先せざるを得なくなってきた。

「いま地方で起きていることの現象の一つに、地域のなかで信用で回っていた経済に東京や海外発の価値やマーケティングを理解した企業が進出し、局所的に価値経済にひっくり返してる状況があります。それによりお金はどんどん地域の外に出ていき衰退しているのです」(山下氏)

地域外にお金も人も流れていけばいくほど、地域は活気を失い、衰退していく。

「これを食い止めるためには、売上のあがるツールやITサービスを提供する、という一時しのぎ的な対応ではなく、本質的に “地方の方々のIT・マーケティング・経営などのリテラシーレベルを引き上げる” ということ、そのために “人々に寄り添い教育していく” ということが重要です。一時的に売上があがるツールをただ使うだけでは、そのツールが時代遅れになればまたその企業や個人は苦しい状況になる。いま、地方の人たちは本質的に成長する必要があるのです」(山下氏)

パソコンも触ったことがないような方々に「ITって楽しい!」「マーケティングって楽しい!」と思ってもらうためにはツールやITの力だけでは不十分で、どうしても人の力が必要になる。だからこそペライチは「IT」×「人」の力を結集することで「 “つくれる” のその先へ」というビジョンを掲げ、人々を「笑顔・成長・幸せ」に導く会社を目指しているのだ。

「ペライチというIT(テクノロジー)を生み出すのも人ですし、実際にペライチをつかうのも人だからこそ、WEBページを作れず困っている人の側にいて、すでに信用がある人たちからペライチ(ツール)を優しく教えてもらうことが重要だと思い、ペライチサポーターという方々の認定と、併せて地域に根づいたコミュニティもつくりました」(山下氏)

サービスの価値がいいだけではなかなか受け入れられにくい田舎だからこそ、ペライチの想いに共感し身近な人たちからサービスを勧めてもらい、活用まで伴走してもらうことで、サービス導入のハードルを下げつつペライチの価値を活かしてユーザーの皆さんを成長に導き、一人ひとりのリテラシーレベルをあげていくという仕組みを山下氏は生み出した。

現在、「自分の地域を盛り上げたい」「自分の側にいる人たちを助けてあげたい」という想いを持ったペライチサポーターが全国に400名近くおり、ペライチという手段を通じて、山下氏らと共に地域を盛り上げている。

「ペライチから新しいサービスがリリースされると、だいたい私たちよりも早くペライチサポーターがマニュアルをつくってシェアしてくださってますし、ペライチの公式にいただいている問い合わせの多くもサポーターさんが返してくださっています。サポーターのFacebookグループでは日々質門が飛び交い、それを他のサポーターさんが返すという助け合いのコミュニティになっているんです。私はこれを 元気玉経営 と呼んでいて、皆さんのご協力やパワーを少しずついただきながら、社会にインパクトを与えるほどの大きな価値を生み出すことを大切にしています」(山下氏)

3. 互いのニーズと提供できるギフトを見える化し、マッチングすることで「応援」が生まれる

地域を盛り上げるきっかけとしてペライチという手段をとった山下氏だが、決してペライチを広めることは目的にしていないと言う。

どうしたら世界平和が実現できるのか というのが、私が小学生の時からのテーマなので、世界平和を実現するために起業後最初にやったのがペライチというだけなんです」(山下氏)

「ペライチというサービスだけをやっていると、ITとかマーケティングの関係者であったり、事業をやっている人にしかサービスに当事者意識をもってもらえないんです。たとえば、専業主婦の方に “ペライチつかいませんか?” と言っても “何につかうの?” “発信するものが無いわ” となり、使わない方が多いです。でも一方で、そういう主婦の方々も “やりたいこと” を見つけ “発信したい” と思えば、当事者意識をもてるし、もっというと本人がそうでなくてもその方の周りには必ず “ペライチをつかうと助かる人” がいるはずなんです。」(山下氏)

ペライチの活動だけでなく、様々な活動を通じて幅広い人たちと接点を持ち、相手のニーズに合わせたメッセージングを行なっている山下氏。

例えば、身近な人の夢や挑戦を “おうえん” し合える社会を実現しようと、“おうえんフェス” を立ち上げ、3.11を「おうえんの日」に制定し、2018年より世界中でイベントを開催。2018年と2019年の2回で世界60拠点、のべ4万人を巻き込んだ。このイベントが開催できたのは、150人ほどのボランティアスタッフによるもので、驚くべきことにその7割は全国の主婦やお母さんと呼ばれる人たちだった。

「ペライチや世界平和、社会課題に今は興味がもてない人でも、いろんな切り口やアプローチで活動することによって、そのうちの一つでも興味をもってもらい当事者意識をもってもらえたらいいんです。その先に、結果的に地域や社会が活性化したり、大きな課題が解決するのですから。そこに何らかのかたちで乗っかってもらえたら」(山下氏)

我々の生きる世界は、多様性の世界。一人ひとりが多様な価値観やライフスタイルをもっているからこそ “この関わり方しかダメ” ではなく関わり方が強いものから弱いものまで “関わり方をグラデーションにしておくこと” が重要だと山下氏はいう。

私が世界平和というメッセージしか言えなかったら、本当に世界平和は実現できないと思います平和を自分ごとにしていない人たちにも面白いと賛同してもらえなくては、多くの人を巻き込むことはできませんから。おうえんフェスにしても、 “あなたの地域を盛り上げましょう” “あなたの地域でチャレンジしている人を応援しましょう” というメッセージで巻き込まれた人はたったの1%未満です。残りの99%以上は、“あなたを応援します” “超楽しいよ” と言ってはじめて巻き込めた。誰に、どんなメッセージを、どう伝えるのか、はすごく大切で、私自身とても意識していることです」(山下氏)

相手のニーズとこちらが 提供できるギフトがうまく上手くマッチングすると、応援に変わりますそれを双方にやれると、たくさんの応援が生まれます。ですが、この両者が見える化していないとマッチングさせることができないので、どう見える化してマッチングしていく仕組みをつくるのかが、重要です」(山下氏)

自分の目の前にある人、地域、社会、国の悩みそのものに向き合い、本質的な課題解決ができるプラットフォームをつくっている山下氏。手段ではなく、手段を使った先にある悩みの解決(成果)、強いては世界平和を見据えているからこそ、わずか4年という短い期間でこれほどまでにペライチを浸透させることができたのかもしれません。

なお今回より3回に渡って、山下氏の特集記事を公開。次回は、無名のサラリーマンだった山下氏が、たった4年間で国家レベルの仕事をするようになった理由を紐解いていきます。(記事の公開は1月頃を予定です)

これからもペライチの応援をよろしくお願いいたします!

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