副業
※こちらのレポートは2023年2月にパーソルキャリア株式会社が提供する、副業・フリーランス人材 マッチングプラットフォーム「HiPro Direct」が主催した「副業フェス2023」のトークセッションをまとめています。
コロナ禍を経て多様な働き方が普及し、趣味や特技、自分の強みを活かせることを副業にする人が年々増えています。好きなことに本気で取り組めたり、本業以外でも社会貢献ができたりなど、本業のみの働き方とは違った心の豊かさを得られる副業。
企業側からしても、様々なバックグラウンドをもつ副業人材が活躍し、企業自身の発展につながっているケースが多い状況です。
そこで今回のセッションでは、「スタートアップ企業における副業人材活用の実態」を社内の7割以上を副業人材が占める企業で働く2名のゲストからお聞きします。
土井 裕希氏(モデレーター/以下、敬称略):まずは、派遣・契約社員など雇用形態にも色々な選択肢があるなかで、なぜ副業人材の活用を増やしているのかについてお伺いしていこうと思います。
川上 権崇郎氏(以下、敬称略):雇用形態でいうと、僕らは「副業」で働く方たちと業務委託契約を結んでいるんですが、この形態には、「プロフェッショナルマインドを持って仕事をして頂きたい」という強い思いがあります。
全員がプロ意識を持ち、成果に対して忠実に仕事をする人が増えて欲しいとも思っていて、将来的には日本にある会社の全てが業務委託契約になればいいと考えています。
川上:逆に言えば、毎月一定の給与額をもらえるからこそ、「これくらいでもいいか」と成果に対してなかなか忠実にならない一面があるのではないかと思っています。
海外では “Up or Out” という表現があり、”成果がでないと退職する” という風潮があります。僕らは「成果に対してより忠実にいてほしい」という想いを持っていて、副業つまり業務委託の方には『1人のプロ』として取り組んでもらいたいですね。
土井:業務委託割合100%を目指す、という考えは新しいですね。我々「HiPro」としても副業人材が「プロ」として企業に伴走し、結果、相乗効果が生まれるという世界観を届けたいと思っているので、非常に共感します。続いて、佐藤さんは副業人材の活躍に対してどう考えておられますか?
佐藤 毅 氏(以下、敬称略):敢えて「副業者を広げていこう」ではなく、「子どもたちに様々な価値を届けていきたい」という思いで副業者の雇用を増やしていきたいと思っています。
僕自身が求職するとき相当悩んだんですよね。今あるキャリアを捨て、かつ3年目のスタートアップに飛び込むのは相当勇気がいると思います。「社員しか採用しませんよ」という状況では、ご協力いただく皆さんの間口を狭めてしまっていることにも気づきました。
だからこそ「副業」という業務形態があって、僕たちに興味を示してくださる方がご一緒できる場があれば、社員なのか、副業なのかにこだわる必要はありません。
実際に社員よりも副業形態の方が予想を上回るほど多くの応募があります。副業に応募してくれた方の中には「社員としては飛び込む勇気はなかったけど、副業という形で子どもと関われることに魅力を感じた」と仰る方もいて。
子どもたちにとっては多様な人と関われる機会が増えるので、接点の作り方として副業という手段に落ち着きました。
土井:佐藤さんたちには、実際に我々の副業・フリーランスマッチングサービス「Hipro Direct」も活用していただき、かなり多くの応募がありましたよね。
佐藤:僕らの採用ツールは「Hi prodirect」か「Wantedly」のどちらかなんですが、副業形態で募集するとスカウトメールを打たずとも1ヶ月合算で120~130件もの応募がきました。それぐらい「関わりたい」という意思がある人が多いことがわかりましたね。
土井:副業と聞くとご自身が培ってきた「スキルや知見を活かさなきゃいけない」「還元しなければいけない」と思われる方が多いだろうなと感じています。
一方で実際に蓋を開けてみると、自分が興味を持っていること、やりたい分野に踏み出す機会として活用されている方もいます。「まずはやってみる」がすごく大事だとお話を聞いて改めて感じました。
土井:続きまして「副業人材活用の特徴やポイント」について教えてください。まずは、川上さんからお願いします。
川上:私自身も副業の方々にお願いする経験がこれまでなかったので、本当に日々試行錯誤しています。副業人材と働くとなると、マネージメントが非常に難しいと感じていて。「どのように関わるか」という点では色々な壁にぶち当たっています。
その中でも今何を大事にして、メンバーの皆さんと関わっているかというと、僕たちがどういう未来を作っていきたいのかを伝える機会を増やしているところです。
川上:ちょっと変わった名前ですが、社内で『魂会』という魂をすりあわせるような会議をかなり頻繁に開いています。どういうサービスにしていきたいのかを本音で語りあい、その内容は副業メンバーにもしっかり伝えるようにしています。
メンバー全員と深いつながりを作って関わっていくことで、副業で働く皆さんから自発的に「こうしたい」「こういう風にやっていくんだ」という理想や強い想いが生まれ、仕事をしていただいている状況です。
「マネージメントする」というより、想いをとにかくいっぱい伝える機会を増やすことで、副業メンバーとも立場的な違いを乗り越えて、良好な関係性を築けていると感じますね。
土井:業務委託だから、正社員だからという枠組みは関係なく、同じ志ややりたいこと、届けたい世界観を共有し、仲間として動いていくことはすごく素敵なことだと思いました。
試行錯誤をしていたお話もありましたが、「想いとプロマインド」の両立は最初から決めていたのでしょうか。それとも、色々な方とお会いしていく中で定められたものでしょうか。
川上:それでいうと後者ですね。最初は関わり方も難しかったです。いろんな方に相談しながら、トライ&エラーを繰り返しました。
例えば、プロ野球選手はまさに1人のプロとして、成果を追い求める個人事業主です。一見副業や、業務委託という関わり合いだとドライな関係を想像される方が多いと思いますが、そうならないために僕たちは、想いを伝えることをとにかく大切にしています。
日本のプロ野球でいうと、”各リーグで優勝したい” が共通の想いですよね、そこをしっかり掲げて伝えていくことで、個人事業主の関わりだけど、ドライじゃなく、めちゃくちゃ癒着してお互いとお互いが一致団結している状態を作っていけていると経験から学んでいます。野球から大きなヒントを得ることができました。
土井:会場からも笑い声が聞こえています(笑)。「癒着」いいですね、僕も響いた言葉でした。それでは、続いて佐藤さんお伺いします。「副業人材活用の特徴やポイント」について教えていただけますか。
佐藤:プロ意識よりも、「どれだけ僕たちと同じ目線に立っていただけるか」を重要視しています。そのためにご一緒している100名を超える副業メンバーとどうコミュニティを形成していくか、どう運営していくかがポイントです。
子どもたちと1on1で接する際、大人にとっては何気ない一言でも、感情やその先の未来すべてを変えてしまう可能性があります。だからこそ、どんな思いで子どもたちと関わりたくて、何をやっていきたいのかが重要だと思います。
お互いの目標がマッチするか、最初はマッチしても副業をやりはじめるとギャップは必ず生まれるので、いかに適切に目線をそろえていくか。このコミュニケーションづくりは、大切にしています。
土井:「プロ意識」と「マネージメント」は違う言葉のようで本質的には近しい部分があると感じました。フルリモートのなかで、佐藤さんたちが副業メンバーとコミュニケーションをどれくらい、どのようにとっているのかが気になります。
どれくらい踏み込んでよいものか、不安な部分もあると思うのですが、何か意識されていることはありますか。
佐藤:僕らの場合は、現場にでている担任の先生のような役割を社員が担っているのですが、その社員が副業メンバーと日々コミュニケーションをとっています。フロント社員1名に対して副業メンバー20名くらいで1チームになって動いていますね。
日々変わる子どもたちの状況などは、チームで密にコミュニケーションを取り、社員と副業メンバーの振り返りも週に1回のペースでやっています。副業メンバーだけで振り返るなど、なるべくチームでの接点を設け、目線をそろえることを意識しています。
土井:副業メンバーと一緒に動くケースは必ずあると思うので、いかにコミュニケーションの箱を作っていくかが重要なポイントですね。
土井:今後挑戦したいことは何ですか。スタートアップなので、尖ったご意見が出てくるのでは、と期待しています。
佐藤:今後挑戦したいことは、グローバル雇用です。ネット環境さえあれば日々つながれる組織なので、国内に限らず、海外に駐在している方などにも副業人材として活躍してほしいです。
時差があるからこそ、日本のビジネスが止まっている時間に活躍いただくケースが生まれ、結果、提供できるサービスの充実にもつながると思うので、どんどんグローバル人材も活用していきたいです。
土井:国にこだわらず同じ志を持った仲間を増やしたい、ということですね。それでは川上さんお願いします。
川上:「副業 = キャリアパス」という概念はあまりないと思うのですが、そういったところをどんどんつくっていきたいです。色々な事業をやっていますが、今後社内CVCや新しい事業を作っていき、今の業務で実績・成果を出してくださる方がよりステップアップしてスキルを高め、挑戦できる環境を提供していきたい。
川上:僕らが提供しているサービスの一つである『キャリドラ(カメレオンが提供する個人のキャリア形成に着目したオンラインコーチングのこと。より稼げるようになるため、市場価値の向上と長期的なキャリア形成を目的としたもの)』では、人生のターニングポイントを提供するというコンセプトを掲げています。これはカメレオンで働いている全員にも言えることで、カメレオンで働くことが自分の人生のターニングポイントになってほしいと本気で思っているので、関わる人たちがより挑戦できる環境を提供していきたいです。
「副業・専業という垣根を超えて挑戦したい」という方にはどんどん機会を提供していき、事業数を増やしていくことにも関わってもらいたいです。
土井:変わりたいと思ってもなかなか変わるきっかけがない、と感じる人も多いなかで、その機会を積極的に作っていきたい、というお話は素敵だなと思いました。
Editor's Note
正社員と副業(業務委託)の垣根はなく、副業人材の活躍こそがスタートアップの成長には欠かせない。同じ方向へ向かっているのか、軸はぶれていないかを確かめ合うことに時間を費やすことがいかに大切かを知りました。こうしてかけた時間は信頼へと変わり、自分のやりたいこと、興味のあることを副業とする人が多いからこそ、より良いコミュニティが形成され、モチベーションのアップへとつながっていくのだと感じました。
HIROKO KIMURA
木村 裕子