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LOCAL LETTER

地域活性化を導く「人」の力。共感の輪を生む、観光とまちづくりの交差点

SEP. 20

JAPAN

拝啓、「人」を意識した地域活性化を進めたいアナタへ

※本レポートは、2024年7月に東海旅客鉄道株式会社と株式会社WHERE主催で開催されたトークセッション「地域経済サミット SHERE by WHERE in 東海」のSession4「観光xまちづくり|交わることで生まれるインパクト」を記事にしています。

近年、全国各地で観光による地域活性化が注目される一方で、「オーバーツーリズム」という言葉も頻繁に聞かれるようになってきました。

観光客を呼び込みたいけれど、地域住民の暮らしも大切にしたい。
両者を一体とした持続可能なまちづくりをどのように目指していけばよいのでしょうか。また、自治体や企業はどのような役割を求められているのでしょうか。

東海で活躍する4名のゲストスピーカーのトークセッションから、前編では、観光とまちづくりにおける連携の重要性と、地域活性化につながる新たな取り組みを探りました。

後編では、地域活性化につながる「人」の可能性を深堀りします。

文化の違いを武器に。分野の壁を越えた地域一体のPR

岡田氏(以下、敬称略):全国津々浦々の地域の魅力をコンテンツ化して、来た人がお金を払いやすい形に変えているのが観光です。観光へ人を呼び込むためにPRを行いますが、そのPRにはお金がかかります。

一事業者ではPRに限界があるので、行政や小売団体が圏域としてまとめてPRができれば役割としてはいいのかなと思っています。

岡田 岳史(おかだ たけし)氏  株式会社つぎと取締役副社長 / 星野リゾートにて、大規模スノーリゾートの再生にリテール部門責任者として従事後、古民家活用市場に参画。全国で古民家リノベーションを基軸としたまちづくりを展開。東海地区では、美濃市、犬山市、名古屋市(有松地区)にて活動中。
岡田 岳史(おかだ たけし)氏 株式会社つぎと取締役副社長 / 星野リゾートにて、大規模スノーリゾートの再生にリテール部門責任者として従事後、古民家活用市場に参画。全国で古民家リノベーションを基軸としたまちづくりを展開。東海地区では、美濃市、犬山市、名古屋市(有松地区)にて活動中。

藤井氏(以下、敬称略):行政はPRが好きですね。ただ、その回収方法を持っていないんです。

PRができているのに効果が経済に現れていない地域は、企業がその分を取りに行ける隙間があると思います。逆に、観光協会などが既に押さえている地域は参入に少し苦労するかもしれないですし、どちらの事例もあるのかなと思いますね。

藤井 浩人(ふじい ひろと)氏  美濃加茂市長 / 名古屋工業大学卒業。28歳で美濃加茂市長に初当選。当時、全国最年少市長。2014年逮捕…詳細は著書「冤罪と闘う」。2022年市長選に再当選。地方の存在意義を追求した自治体運営。市民の社会参画、外国人との共生など様々な課題に挑戦中。
藤井 浩人(ふじい ひろと)氏 美濃加茂市長 / 名古屋工業大学卒業。28歳で美濃加茂市長に初当選。当時、全国最年少市長。2014年逮捕…詳細は著書「冤罪と闘う」。2022年市長選に再当選。地方の存在意義を追求した自治体運営。市民の社会参画、外国人との共生など様々な課題に挑戦中。

岡田:今、インバウンド観光にも関わっています。そこで痛感するのは、 外国人からすると、この愛知のあたりには「名前がない」こと。日本は東京、高山、京都、原爆ドームだけだと思っている方が多数なんです。

そこで、縦割りなど連携しづらい部分を乗り越えて、エリア全体で勝ちに行くことはとても大事だと思っています。

僕も愛知周辺に住んで観光業をやらせてもらっているので、いろいろ色々なまちに行きます。一つひとつ個性があってめちゃくちゃ面白いんですね。ちの文化のちょっとした違いが、今後の観光で武器になるはずなんですけど、それをまとめてPRする人は多分今いないんじゃないですかね。

藤井:まさに岡田さんのおっしゃる通りで、チャンスはいくらでも落ちているから、そこを取りに行くことが必要ですね。

人を巻き込む。「ファンづくり」で観光客と地域住民が共存する観光へ

藤井:地域と住民を大切にしていく上で、オーバーツーリズムはやっぱり怖いです。

観光客のためだけのまちづくりをすると、商売をしている人にはお金が落ちますが、それ以外の住民にとっては不利益が多くなってしまいます。

早くて安いインスタント食品のような観光ではなく、質にこだわった奥の深い観光で、住民と観光客が共存できるまちが強いのかなと思っています。

藤井:例えば長野県の奈良井宿にあるホテルでは、地元の野菜や日本酒を出して、気に入っていただけた宿泊客にはその農家さんや酒蔵さんを直接紹介してつないでいます。

モノだけではなく、モノを生み出している「人」まで巻き込んでいく。それができると、住民にとっては遠い存在だった観光からお金が落ち、自分たちの気づきにもなります。さらには、子どもたちの雇用も生まれるかもしれません。住民にとっても利益として考えられるものになりますよね。

高木氏(モデレーター / 以下、敬称略):伝統産業のように、昔は売れていたけれど今はなかなか売れていないものがたくさんある中で、高くても質の良いものが欲しいと思うユーザーに届けられればいいですよね。その入り口になるのが、やっぱり観光。

高木 朗義(たかぎ あきよし)氏  岐阜大学社会システム経営学環教授(Co-Innovation University副学長候補)/ 名古屋市出身。岐阜大卒後、建設コンサルを経て母校へ。専門はまちづくり。「誰もが主体的に協働して、皆が幸せに暮らせる地域社会を創る」が研究目標。『世界一受けたい授業』や『ニノさん』等メディアにも多数出演。
高木 朗義(たかぎ あきよし)氏 岐阜大学社会システム経営学環教授(Co-Innovation University副学長候補)/ 名古屋市出身。岐阜大卒後、建設コンサルを経て母校へ。専門はまちづくり。「誰もが主体的に協働して、皆が幸せに暮らせる地域社会を創る」が研究目標。『世界一受けたい授業』や『ニノさん』等メディアにも多数出演。

岡田:以前、うちの宿に東京から11回宿泊しに来た方がいらっしゃいました。地域のファンになってくださって、最終的に家を建て、住民票も移されたんです。

そこまでのファンになられた理由を分析したところ、1回目に訪れる理由は、皆さんが想像されるように、温泉があって食べものが美味しいといった観光絡みからでした。でも、2回目に訪れる理由は地元の人との出会いだったりするんです。

家を建てた方はお祭りにも出てくれますし、町内の空き家が埋まりましたし、そうした域の担い手やファンを作る作業を続けていくのがハマると、経済効果以上のまちづくりへの貢献ができるんじゃないかと思います。

多分、最後は「人」なんですよね。
人がどう接したかというところだと思うので、観光客が地域住民と関わる体験を積み上げることが、 まちづくりに一番効くんじゃないかなと思います。

挙げた手を見過ごさない。まちを動かすキーパーソンと周囲の役割

白山氏(以下、敬称略):私の団体の理事長の言葉を借りると、「まちづくり」という言葉には「まつり」の文字が入っているそうです。

日本ど真ん中祭り(以下、「どまつり」)も、地域の文化を表現した踊りを通して、どれだけ自分の心が揺さぶられるかが、もう一度来たい、友達や家族にも体験してもらいたいという思いに大きくつながっていますね。

白山 智恵(しらやま ちえ)氏  公益財団法人にっぽんど真ん中祭り文化財団プロデューサー /三重県津市出身。三児の母。大学時代4年間、学生委員会に関わり、第3回にっぽんど真ん中祭り実行委員長を務める。その後、どまつり財団事務局に就職。現在、広報・企画・制作などのプロデュースに関わる。
白山 智恵(しらやま ちえ)氏 公益財団法人にっぽんど真ん中祭り文化財団プロデューサー /三重県津市出身。三児の母。大学時代4年間、学生委員会に関わり、第3回にっぽんど真ん中祭り実行委員長を務める。その後、どまつり財団事務局に就職。現在、広報・企画・制作などのプロデュースに関わる。

白山:「どまつり」では例えば、犬山市のチームでしたら犬山祭りや桜、山をステージ上で表現したりと、参加するそれぞれのチームが地元を表現した踊りを披露します。

それで私は今年、 本物の犬山祭りが見たくなって、実際に犬山市に行ってきました。やっぱり本物はまた違う心の揺さぶられ方をしましたね。

一方で、犬山市には観光文化財があるのに地元の人にとっては当たり前すぎて、外に価値をPRしきれていない部分がもったいないと思いました。

藤井:私は他の自治体の例からも、観光や経済においてはたった1人の人間がまちを変えることができると思っています。

例えば、群馬県の前橋市では、地元出身の実業家が私財を投じ、実働は若者に任せてまちを変えています。1人でもインパクトがあるんです。可能性もあります。

地元愛や地域愛を大事にするのは、将来まちを変えたいと思ってくれる人が地元から出ることに繋がるかもしれないからです。お金を出す人ではなく、めちゃくちゃ動いてくれる若者がいるだけでもいいんですけどね。

なので、たった1人のフィクサーが入ってくるだけで物事は変わるというのは、行政側の期待として大きいです。

岡田:地域のキーパーソンが必要なんですよね。奇跡のようなヒーローが現れたらいいんですが、現れないことの方が多いです。

やる気はあって手を挙げるんだけど、資本力がないパターンや、マネジメントやマーケティングはできないパターンはざらにあるんですね。

その挙げた手を見過ごさないのが、民間や行政、大学の仕事なのかなと思っています。

まちづくりにおける「よそ者・若者・ばか者」の話が僕は好きで、「お金のことは一円も分からなくていいから。必要な金は俺が持ってくるよ。足りないなら行政を呼んでくるよ。だからお前は走り続けてくれ」のような展開だと、どの地域でも再現可能性が高いんじゃないかと。

僕もそういう手を挙げる人がどんどん増えればいいと思って活動をしていますし、そういう人たちを助けることが次なる展開なんだと思います。

大人の知恵×学生のパワー。共感で広げる地域活性の輪

高木:手を挙げる人の意味では、「どまつり」を立ち上げた水野孝一さんはパイオニアですよね。

白山:私の主人なんですが、異端児でした。当時は学生で地位も信用もなかったので、それぞれの地域で共感していただける大人を巻き込んで、大人の知恵を借りていました。

そこに学生のパワーを掛け算するのが、1番大きな突破力になるんじゃないかと思います。

今度は私たちが大人としてどのように動いて、どう学生のパワーと掛け算をしていくかが重要になってくるかなと思いますね。

高木:そうですね。私は普段、大学で学生さんたちに接しています。最近は「共感」で動く若者が増えているのを感じますね。

この「SHERE by WHERE」も、地域経済を共につくるためのサミットなので共感は大事です。共感がもらえれば色々なものが突破ができて、行政に対しても思いを伝えれば動いてくれる人もいる。だから、最初は1人でも周りを巻き込んでやっていくのが重要ですね。

藤井:共感の大前提で忘れちゃいけないのは、尊敬だと思うんです。
立場が違えど、やっぱりお互いが尊重しないとダメだと思うんですよ。競合するかもしれなくても、一緒に地域を良くしようとしないと経済は回らないので。

あとは観光客との共感も大事だと思うんですよね。どんな人だったらまちに来てほしいのかというターゲットを見極める時に、まちを尊敬してくれるような人を相手にしないと続かないと思うので、共感の輪をどうやって広げていくのかを考えていくべきだと思います。

高木:ありがとうございます。今日はほんとうに素敵なお三方をお呼びできて良かったと思います。どうぞみなさん、つながっていただければと思います。

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Editor's Note

編集後記

まちを盛り上げるためのアイディアはあるけれど、資金がないという若者は自分の周りにもいるので、「挙げた手を見過ごさない」というお言葉に救われる思いがしました。どのような立場であってもそんな大人になりたいです。

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