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LOCAL LETTER

仕事やお金よりまずは「暮らしのデザイン」から。これからの時代を豊かに生き抜くヒント

AUG. 27

THE GOOD LIFE

前略、理想の豊かな暮らしにシフトしたいけれど、なかなか踏み出せないアナタヘ

「0.5haで年商1000万円」。

LOCAL LETTERでも以前紹介した⼈⽣をオモシロくするオンライン農コミュニティ「The CAMPus」の校⻑・井本喜久さんが主催する「コンパクト農ライフ塾」は、“コンパクト農家”の育成に特化したオンラインスクール。そこで受講生に向けて提案しているビジネスの基準値がこの「0.5haで年商1000万円」を実現する農家スタイルだ。

正直なところ、「農」と聞いてイメージするのは休みがない、儲からない、収入が不安定等々。田舎暮らしや農的暮らしに憧れは抱きつつも、仕事やお金の心配が先行してなかなか一歩を踏み出せないという人も少なくないはず。

これまで200人以上の農家に出会い、農業の現場を目の当たりにする中で、井本さんが見つけた豊かな暮らしを実現するためのヒントとは。そして彼が提唱する「コンパクト農ライフ」では、どんな未来を描くのだろうか。

仕事を生み出すチャンスは無限にある。まずは暮らしの設計から

2020年のローンチ以降、これまで121名の卒業生を輩出してきた「コンパクト農ライフ塾」。「農」と聞くと農業ノウハウを学べる講座をイメージするが、ここで学ぶ大義は、自分らしい暮らしや生き方をデザインする方法が身につくこと。

「私たちがいう“コンパクト”は、単に小さい規模で農業をするのではなく、小さなエネルギーで豊かな暮らしを手にいれるにはどうしたらいいか?という問いが根底にあります。今の時代、稼げればいいという仕事のやり方よりも、理想の暮らしを実現するための生業とか、暮らしと生業がより密接し相互作用するライフスタイルを追い求めている人が多い。コンパクト農ライフ塾で提案しているのは、まず自分の好きなこと、大切なことを明らかにして、そこから暮らしを設計していくというプロセスです」(井本さん)

井本さんが“暮らし”にこだわる理由は、自身の生まれが限界集落であったこと、また奥様が癌を患ったことにある。井本さんの出身地は広島県竹原市。稲作を中心とし活気のあったまちが少子高齢化に伴い衰退、農業の担い手がいなくなり食文化が変わっていく光景を目の当たりにしてきた。

「今や日本全国に限界集落と呼ばれる地域はたくさんあります。それまであったその土地特有の食文化や生活様式がなくなり、あらゆるものが同質化していくことに対して『このままでいいのか?』と危機感がありました。さらに妻が癌になり、癌になる要因を調べていたところ、どうやら食が大きく関係しているらしい。そこで、私たちの食ないしは食文化の源を作っている農家という仕事の真価に触れました。

農家の暮らしは、大変とか苦しいといったイメージがどうしても先行しがち。でも実際に全国の農家を訪れたら、人の心と体を健康にする農業をしている方々は豊かな暮らしを送っていました。便利ではないけれど、土地特有の自然環境を生かした暮らしや、持続可能な食文化を生み出す現場は田舎にこそある。そうした農家の営みを全国各地に広げるための人材育成を担っているのが、コンパクト農ライフ塾なんです」(井本さん)

コンパクト農ライフ塾を受講した卒業生には、すでにこれまでの暮らしを一変させ、新たなビジネスに挑戦している人も多い。2020年5月にコンパクト農ライフ塾に入塾、卒業したアケミさんが展開する「AKEMILEMONは、暮らしや生き方をデザインしたうえで生まれたビジネスの好例だ。

それまで鎌倉でレストラン経営をしていたアケミさんは、長年憧れていたレモン農家になるため昨年9月に瀬戸内海の島へ移住し、レモン農家の見習いに。しかしレモン農家として独り立ちするには、最低でも3年はかかる。そこで移住して間もない今年3月にスタートしたのが、知り合ったレモン農家からレモンを仕入れ、加工食品(レモンカード)を作りECショップで販売する、いわばブランドを先に作るというスタイルだ。

「田舎暮らしをしたい人の悩みの大半は、仕事とお金。でも移住先に就職したい企業がなくても、自分らしい暮らしがデザインできていれば、仕事を生み出せる可能性は無限にあります。コンパクト農ライフ塾が受講生に提供しているのは主に、事業計画を立てるスキル、同じ志を持った仲間との出会い、師匠との繋がりの3つです。どんな暮らしを設計したいのか気づくのも、変わっていくのも自分。でも一緒に進めていける仲間や師匠がいることで、理想を現実にするスピードは確実に加速します。The CAMPusでは、卒業後のブランディングや事業戦略サポートも行っているので、スピーディ且つ質の高いものができるんです」(井本さん)

百聞は一見に如かず。実地研修を交えた「INASTA」で伝えたいこと

さらに2021年9月からThe CAMPusは、地方へ移住・半移住したい人を対象とした田舎暮らしのスタートアップを成功に導く特別受講プログラム「INASTA」を開始した。コンパクト農ライフ塾の基本カリキュラムに加えて、対象地域で、小さな農家を営んで成功するための移住・半移住の具体的なテクニックやノウハウについて学び、農業×移住を成功に導くのが目的だとThe CAMPusの小林世子さんはいう。

「首都圏で暮らす人の約6割が田舎暮らしをしたいと思っているそうです。思っているにも関わらず、仕事への悩みや不安が付きまとい、なかなか行動に移せない人も多いならば、コンパクト農家を営むノウハウと地域の魅力を知るきっかけを一緒に提供できたら、暮らしのイメージの解像度をぐっと上げられるはず、という思いでINASTAが始まりました」(小林さん)

「INASTA」はコンパクト農ライフ塾の通常カリキュラムに加え、対象地域の特別カリキュラム(全5講座)、さらに一泊二日の実地研修で構成されている。第一弾の舞台は、長野県伊那市。東京や名古屋といった都心部からのアクセスも良く、移住者に対してもウェルカムな雰囲気が住みやすさを助長している。

「私自身、ネットにある情報だけだとその土地にある暮らしの本質が見えづらいと感じていました。実地研修を行い、一緒に農体験をしたり生活を肌で体感したりすることで、その地域や人の魅力、未来への可能性を知れると確信しています。

伊那市は82%が森林に覆われた自然豊かなまちです。自然にある資源を上手く使って、山とともに暮らしてきたのが農村の暮らしの原型。伊那市ではそうした山と里が一体となった暮らしが今でも大切にされています。一方で新しい価値を受け入れる体制もあり、INASTAで登壇いただくゲストの方をはじめ移住者や新規事業者が多いのも特徴です」(小林さん)

小林さんが伊那市に訪れて特に印象的だったというのが、「INASTA」でも登壇予定の “豊かな暮らしづくりを通して、豊かな森をつくるやまとわ

森林が豊富な伊那市では、春〜夏は農業、秋〜冬は林業とその土地特有の暮らしのリズムを実践しているという。木は春から秋にかけて水をたくさん吸い上げるため、夏の木は重く、傷みやすい。冬に農業をするなら、ハウスや暖房が必要不可欠。さらに、伊那市には、曲がって育つために建材としては使いづらく、価値が低いとされるアカマツが多く自生している。しかし「やまとわ」は、それらを家具等に商品化し、新たな価値を生み出す取組みを行っているのだ。

「INASTAもコンパクト農ライフの考え方同様、暮らしをどうデザインするかを見出す機会になると考えています。そうした設計に必要な具体的なイメージを、実際に移住された方のリアルな経験談や実地研修から得てもらいたいですね」(小林さん)

「INASTA in 伊那市」の申込み・詳細は公式サイトへ。無料オンライン説明会も行っているので、チェックを!

Editor's Note

編集後記

仕事がある場所で暮らす。こうした仕事ありきの暮らしが当たり前になっているけれど、暮らしの本質とは一体なんだろう?と考える機会になった今回のお話。人生を面白くする方法は誰も教えてくれないからこそ、主体的になっていろんな人や場所に出会っていく必要があることに改めて気づかされました。その土地環境を生かした持続可能な暮らしが全国に広がっていくことに、とてもワクワクします!

これからもThe CAMPusの応援をよろしくお願いします!

これからもThe CAMPusの応援をよろしくお願いします!

これからもThe CAMPusの応援をよろしくお願いします!

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