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ICTで、21世紀の明治維新を起こす。学長自らが「入学したい」と豪語する大学は未来に溢れている。

NOV. 22

TOKYO

前略、日本の未来を明るくする教育に関心があるアナタへ

「勉強ができる」=「社会で活躍できる」とは限らない。社会人はそれを痛いほど感じてきただろう。

教室の机に向かって勉強した内容が、社会の場でそれらが直接役にたったケースはどれくらいあったか。もちろん、ゼロではないが、胸を張って「生かされた」と言えるケースは限りなく少ない。それが日本の教育制度の現状だ。

たとえば、現代のビジネスでは欠かせないSNSの活用方法やITリテラシーをあげるような教育は乏しい。その結果、時代錯誤な人材輩出が続く。もし、ビジネスの実践に近いことを学ぶのであればインターンという選択のほうが懸命かもしれない。ライターの私も学生時代はインターンで実学を学んだ1人だった。

だからこそ私は、とある新大学の構想を聞いた時ワクワクした。それは、ビジネス経験もある学長・中村伊知哉氏が理想を全て詰め込もう挑戦する大学だからだ。

2020年、東京都墨田区に開学を目指す「i専門職大学」。区にとっても初となる大学は、産業界と連携した学びのプラットフォーム。本来、学生では経験できないリアルなビジネス経験を通じて、社会の即戦力になれる力を身につけていく。

とくにインパクトに残ったのは、i専門職大学の学長を務める中村氏が最初に放った言葉。

中村氏:「i専門職大学ってどんな大学ですか?と聞かれたら、僕は『僕が一番入りたい大学です』と答えています」

i専門職大学学長(就任予定)・中村伊知哉氏
i専門職大学学長(就任予定)・中村伊知哉氏

ロックバンドのディレクター、郵政省、マサチューセッツ工科大学メディアラボ客員教授、スタンフォード大学日本センター研究所長を務めた後、現在は慶應義塾大学の教授をはじめ、内閣府知的財産戦略本部 評価 企画委員会座長、さらに吉本興業の社外取締役としても活躍されている中村氏。

そんな彼が「今一番入りたい大学」とは、どんな内容なのか。今回はその特徴を3つにまとめてみた。

その1: 『超ヒマ社会』が訪れるから、「ICT」を読み書きレベルで使える人材を作ろう

スマートフォンが誕生して約10年。いつ、どこにいてもインターネットとスマートフォンがあれば、世界に向けて情報発信することも、連絡を取ることも、買い物することだって簡単にできるようになり、私たちの日常はたった10年で大きく変化している。とすると、次に訪れるのは、人類のヒマだ。

中村氏:「僕は早くAI(人工知能)に仕事を任せられる未来がきてほしいんです。AIだけで仕事を回せるようになったら、きっと『ヒマ社会』が訪れて、みんな自分の好きなことだけをするようになります。遊び、食事、旅行、恋愛、中には勉強をしたい人や、仕事をしたい人もいるでしょう。ただし、何をするにしてもAIが社会を動かしている以上、必ずICT(情報通信技術)が関わってきます。だからこそ、僕は今からICTを熟知し、新たなビジネスを想像できる人材が育める学校を創りたいんです」

これまでICTの知識は、特定の人のみが身につければいいものだった。しかし、モノがネットに繋がり、起きてから寝るまで、さらには私たちが寝ている間にも、ICTやAI(人工知能)が物事を回している未来は、もう目前だ。

中村氏:「すでにスマホの方が僕より何でもよく知ってるし賢い。だからこそ僕たちは読み書きと同じくらい当たり前のレベルで、ICTを学ぶ必要があるんです」

その2:カリキュラムの中には1人あたり640時間のインターン。大学をプラットフォーム
として世界レベルのビジネス現場と連携する

アメリカでは、マイクロソフトやFacebook、Yahoo!、Googleなど、学生が始めたサービスやコンテンツがビジネスとして大きな成功を収め、世界を変えているが、この成功の鍵になったのは「大学のプラットフォーム」だと中村氏は伝える。

中村氏:「海外の大学は、学生の支援を行うプラットフォームとして、コミュニティや企業からのサポート、投資家の援助など、ビジネスの成功に向けて学生の後押しを活発に行っているばかりでなく、ICT分野では大学が中心となって新しいビジネスをも生み出しています」

一方で、現在の日本にはそういった仕組みを持っている大学は存在しない。

中村氏:「これからの教育ではもっとビジネスに近い、世界レベルの企業と学生が、0からプロフェッショナルを生む組織を創り上げるような環境が必要だと思っています」

だからこそi専門職大学では、ビジネスの現場と直結した教育により「仕事とは何か」「イノベーションを起こすには何が必要か」、その理解を深めるインターンシップを1人あたり640時間、全学生に実施していくと掲げている。

中村氏:リアルなビジネスを大学の研究室にいる教員が教えるには限界がありますi専門職大学では、現在もビジネスの現場で活躍している一流の方に教員として授業を持ってもらいます」

すでに大手通信企業をはじめ、墨田区を代表する企業や、エンターテイメント企業、放送局、ICTの会社など、現時点で計60社の企業が連携を予定している。他にも中村氏はオンライン教育を前向きに話す。

中村氏:「座学はスマホを使って、家のソファやトイレの中など、合間の時間で学んだらいいと思うんです。学校にきたら『あの授業どう思った?』と学生同士で議論が始まったら面白いじゃないですか」

大学や企業でリアルなビジネス経験をすることで、即戦力な人材の育成を目指す中村氏。大学でありながら、墨田区や民間企業を巻き込むことで学生が経験できる幅を広げている。

その3:失敗を、推奨。大学として追っかける目標は生徒の起業率?

i専門職大学では全学生に対して在学中に起業にチャレンジできる環境を整える予定だ全学生が起業にチャレンジする大学は、世界でみても初めての試みだ。

中村氏:「起業しても9割が失敗すると言われていますが、失敗しても大丈夫です。ここで得た経験が今後の力へと変わります」

この試みを通じて、学生は世の中の問題をいち早く発見し、仲間とともに解決する方法のひとつとして、自由な発想を活かした起業を行う。

中村氏:「僕はいろんな生き方があっていいと思っています。学生全員が起業し、大学の就職率が0になってもいいし、起業の経験をした上で、自らが選んだ企業に入ってもいい。これは僕たちi専門職大学の挑戦です」

中村氏は起業の成功ではなく、学生が実際に事業運営することで得た経験を自分自身の力へ変えていくことを目的に置いているのだ。

なんと、学長自らが生徒として本当に入学。留まることを知らないi専門職大学の「世界を見据えた野望」

中村氏は本来、学生時代には経験できないリアルな現場での成功や失敗を経験することで、学生自身の成長を促していこうとする。すでに実現が決まっている取組みだけでもかなりのインパクトだが、中村氏は構想発表の最後に最もインパクトのある言葉を発した。

中村氏:「実は僕もi専門職大学の一期生として学びたいと考えています。人生100年時代と言われる今、僕は素直にi専門職大学で学び直したいと思うし、学生の目線からi専門職大学をさらによくしていきたいと思っています」

私はこの言葉を聞いた時ようやく、なぜ自分がここまで中村氏の構想発表にドキドキしているのか、その理由がわかった。きっと私はi専門職大学の奇抜な取組み以上に、i専門職大学をつくっている中村学長自らが、この大学に「自信」と「誇り」を持ち、愛着を持っている姿に魅了されたのだ。

今後さらなる野望として中村氏は、世界で一番ビジネスをしやすい環境をつくるために「国家戦略特区」をつくることや、客員教授を100人以上迎えるべく既に吉本興業の大崎社長や、iモードの夏野さん、グーグルの元社長の村上さん他多数に声をかけ、了承を得ていると話す。

中村学長が本気で「自分が一番通いたい学校」と豪語し、本当に学生として入学したいというi専門職大学。あなたはこの大学に、中村氏が見据える未来に、一体何を感じただろうか?

Information

シンポジウム概要

i専門職大学とのコラボで 墨田区の中小企業が大躍進~ICT化・国際化から人材確保・後継者育成まで~
- 日時:2018年11月12日(月)14時00分〜16時00分
- 場所:東京東信用金庫 両国本部 10階ホール
- 講師:i専門職大学 学長(就任予定) 中村 伊知哉 氏

 - 経歴 現・慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
  - 1984年、ロックバンド少年ナイフのディレクターを経て旧郵政省入省
  - 1998年、MITメディアラボ客員教授
  - 2002年、スタンフォード日本センター研究所長
  - 2006年から慶應義塾大学大学院教授

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