協働
可能性を感じているけれど、上手く活用する方法がわからない。
そんな悩みを抱いている人に向けて、今回ご紹介するのは、外部人材が協働することで当初抱いていた課題を昇華させ、新たなコンセプトを生み出したプロジェクト事例。
令和4年に開催された “和牛のオリンピック” と称される大会「全国和牛能力共進会」の去勢肥育牛の部では見事日本一に選ばれた牛を育てながらも、年間36,000tも排出される牛の糞尿について課題を持っていた『うしの中山』さんと、地域企業の伴走支援を行う『協働日本』が協働で生み出した変化とはーー。
村松:先ほど『荒木陶窯』さんの事例をお伝えしましたが、引き続き協働日本と一緒にプロジェクト伴走をしてくださった企業様から協働の事例を発表してもらいます。続いては、肥育農家の『うしの中山』です。
荒木真貴 (以下、真貴 ):『うしの中山』は、鹿児島県内にある肥育農家(子牛を購入し育て、お肉として販売する農家のこと)です。黒毛和種の牛を約5,000頭肥育しており、令和4年に開催された “和牛オリンピック” 去勢肥育牛の部では日本一に選ばれました。
真貴:協働日本さんと出会う前の私たちは、肥育で発生する「糞尿」を課題に感じていました。5,000頭規模になると、糞尿もかなりの量で、1頭あたり1日の糞尿が約20キロなので、5,000頭だと毎日約100tにもおよびます。
真貴:以前から、僕らとしても「戻し堆肥(糞尿を乾燥させ牛のために再活用する技術)」や、近隣農家へお配りすることで利活用を考えていましたが、年間36,500tもの糞尿をさばくには到底追いつかず、この問題を協働日本さんと解決したいと思いました。
真貴:そもそも私たちは堆肥事業に課題だけでなく、「パワー」も感じていたんです。糞尿は「ただのゴミ」としても、「循環する資源」としても捉えられる。僕らはまだうまく扱えていないだけで、きっと何か解決策があると思い、協働日本さんへご相談しました。
真貴:協働日本さんと事業を進める中で特に印象的だったのは、「解決に向けてどう動いたらいいか」を具体的に話し合うことで、問題点が言語化され、頭の中が常にすっきりしている状態だったことです。
頂いた課題を言語化し、課題への結果をもってミーティングに挑むことをくり返していくうちに、やろうとしてたことから、いい意味でズレが生じてきたんです。当初の目的は堆肥を売ることでしたが、「本当に堆肥を売るだけでいいのか」「販売をどう繋げていくのか」までを深ぼるうちに、「ただ堆肥を売ること」からコンセプトを牛目線で行うSDGs=「UshiDG’s」に昇華させました。
真貴:早速「UshiDG’s」の冊子を作って企業さんに配ったところ大変反響がよく、我々としても「牛目線のSDGsで、堆肥に関する取り組みをしています」と、話を展開することができるようになりました。
真貴:そんな中でも具体的な成果に繋がった事例が2つありまして。まず一つ目が鹿児島県志布志市の堀口製茶さんとの取り組み。
堀口製茶さんでは、茶葉の作成過程で生まれる商品としては使えない「茶葉」と、私たちの「堆肥」を掛け合わせることで、「オリジナル堆肥」をつくっていただきました。堀口製茶さんとつくった堆肥は栄養分が高く、香りも紅茶のようでとてもいいので、堀口製茶さんに堆肥の予約買取をしていただいております。
もう一つが、福岡マルタイラーメンさん。福岡マルタイラーメンさんも「UshiDG’s」に共感いただき、マルタイラーメンをつくる際に出る食材の余りを活用した「牛の餌づくり」がスタートしました。
このように、協働日本さんが入る前までにはなかった、新たな広がりがどんどん生まれています。
真貴:これまで「堆肥がありすぎてどうしたらいいのかわからなかった」ところから、現在は(嬉しい悲鳴で)「堆肥の在庫不足に陥ってる状況」です。売り上げも20%アップしましたが、売り上げ以上の効果があったと自負しております。
真貴:協働日本さんは、私が走っている隣で、私に合った走り方を教えてくれる存在でした。自分にあった走り方を体得することで「自分一人で走ることができる」という自信をもらえたと思っています。今後も協働日本さんとの学びを胸に、大きな目標を世界に発信していきたいです。
村松:今までは受注と発注の関係だった方々とも、「共感」をキーワードに関係性が変化していく。それが鹿児島の未来をつくっていくことにもつながるなと思いました。
Editor's Note
牛の糞尿の活用から、見事に「UshiDG’s」へとコンセプトを昇華させることができたうしの中山さん。36,000tという想像するのも難しい在庫が、現在では在庫不足になっているというから驚きです。しっかりと言語化をすることで、外への展開が広がることがわかった素晴らしい事例でした。
YURIKA YOSHIMURA
芳村 百里香