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※本レポートは株式会社WHEREが主催するオープンセミナー「ポストクラファン!?地域xWeb3トークンx資金調達の可能性を探る」を記事にしています。
ここ数年、Web3と括られる技術が地域活性の領域でも活用されはじめました。いくつかの自治体ではNFTがふるさと納税の返礼品に選ばれ、単に返礼品を送るだけでは終わらない寄付者との関係構築を実践しています。
今回は、Web3トークンを活用した資金調達をサービス提供している株式会社FiNANCiEの取締役COO田中隆一さんと、実際にFiNANCiEのサービスを利用してプロジェクトを進めている株式会社VILLAGE INC代表の橋村和徳さんにその可能性を語っていただきました。
前編では、FiNANCiEの田中さんがデジタルトークンの仕組みから、ファンコミュニティとしての活用の仕方を丁寧に教えてくれました。
後編は、実際にこの仕組みを活用している地域の具体例や、技術のもつ可能性について現場からのリアルな声を聞きます。
田中隆一氏(以下敬称略):FiNANCiEのサービスを利用しているプロジェクトをいくつか紹介します。まず、静岡県三島市にあるWhiskey&Co.株式会社様です。新しいウィスキーの蒸留所をつくるなかでサービスを利用していただき、トークンを発行・販売していただきました。
このトークンを持っている人は、蒸留所ができる過程を共有されるほか、蒸留所の見学ができる特典も付与されています。また、所持しているトークンの量に応じて、将来つくられるウイスキーを優先的に購入できる権利がもらえるという面白い仕組みもあります。
この先ウイスキーの価値が上がると、トークンを欲しい人がもっと増えるかもしれません。すでにトークンの価値はだんだんと上がっていて、初期は1トークン10円だったのが、現在は70円ほどになっています。トークンの価値があがると、追加販売でプロジェクトの資金も得やすくなります。
田中:沿線まるごと株式会社様では「沿線まるごとホテルプロジェクト」をリリースしました。トークン所持者にはこれから生まれるホテルの宿泊権利を与えるそうです。また、ホテルにどんなコンテンツがあると良いのかを、所持者と一緒に考えていく仕組みをつくっています。支援者と一緒にホテルをつくりあげる、共創型コミュニティに発展しています。
熊本県の畜産業者様も面白い活用をしています。支援者にトークンを販売して得た資金で、牛を一頭買うんです。支援者には、その牛の名前を一緒につけたり、牛舎を見学して牛に触れ合えたりする権利を付与しています。そして、牛が成長するとトークンがお肉の購入権利になるんです。食育としても活用されているんですね。
田中:私たちはこの仕組みを活用してもらうことで、プロジェクトの支援者と運営の新しい関係性をつくっていきたいと考えています。応援している人たちも、トークンによるインセンティブがあることで積極的にプロジェクトに参加してくれると思います。
まずはFiNANCiEのアプリをダウンロードしていただき、試しに数々のプロジェクトを見ていただきながら、ご参加いただけるとありがたいです。
平林和樹氏(モデレーター、以下敬称略):ビットコインなど仮想通貨がよくニュースになるので、私はWeb3について「儲かる」や「損をする」という印象が強かったです。それで手を出しづらい人も多いのではないでしょうか。
今後、地域のプロジェクト運営にも活用できるということで「どう活用できるのか」や「実際にやる上で気をつけた方がいいこと」などをお伺いしたいですね。
株式会社VILLAGE INCの橋村さんは、実際にFiNANCiEさんのサービスを利用し「MURABiTプロジェクト」をやられています。橋村さんの自己紹介となぜFiNANCiEさんでプロジェクトを始めたのかを、簡単にお話しいただいてもいいですか。
橋村和徳氏(以下敬称略):VILLAGE INCの橋村です。VILLAGE INCは、ローカルで今まで無価値とされていたような土地を活用して、キャンプ場やグランピング場を運営しています。
大自然に囲まれた土地や船でしかいけない無人島など、磨けば光る土地が日本にはまだまだいっぱいあると思っています。最初は自分の好きなことを仕事にしようと思い、伊豆で立ち上げた会社でしたが、地方創生の流れに乗り、日本各地から官民問わずキャンプ場や空き家の利活用のオファーをいただくようになりました。
今では、群馬県のみなかみ町や、九州の佐賀県・福岡県など日本各地でキャンプ場やグランピング場、ホテルを9カ所運営しています。
橋村:ここ数年はコロナの影響でアウトドアブームがきていました。外遊びに注目があつまりアウトドアのマーケットが育っていたため、地方を拠点としていた私たちにはいい流れでした。
いろいろな地域からオファーをいただくなかで、会社も「第2創業期に入る」という頃合い。大きなプロジェクトを立ち上げようと考えていたところに、屋久島でホテルをつくらないかというお話が出たんですね。プロジェクトを起こす際に、今までにない資金調達方法ってないものだろうかと考えました。
出資を募るとなると、どうしても法人をつくるっていう話になりますよね。
平林:株の分配の話とかになりますよね。
橋村:いわゆる資本主義の市場にならって、資金を集めなきゃいけないのが面白くないなと。田中さんのお話にもあったように、ホテルのゲストやユーザー、ファンやサポーターたちと仲間になれるような仕組みはないかと思ったんですね。
平林:ただのお客様じゃなくって、運営にも関わってくるような形ですか。
橋村:そうですね。クラウドファンディングも比較的近い仕組みだとは思いますが、クラファンだと「プロジェクトがスタートして、リターンを渡したら終わり」みたいなところがあるじゃないですか。
平林:確かにそうですね。
橋村:「ホテルができて、リターンとして一度利用したらおしまい」ではなく、関係性を永遠と持ち続けてもらえるような株に近いような仕組みがないかなと。
先ほど田中さんの紹介にもあったWiskey&Co代表の大森さんが元々知り合いで、資金調達について相談したんです。Wiskey&CoがFiNANCiEさんのプロジェクトをやっていることも知っていたんで「ひょっとしたらFiNANCiEの仕組みとうちは相性いいんじゃないですか」と相談したんです。
そうしたら、新しい場所や箱をつくるプロジェクトとは相性がいいと教えてもらいました。支援者には施設を利用してもらうことができるし、一緒につくりあげて価値を高めることもできる、ということでFiNANCiEさんを紹介してもらったんです。
橋村:実際にどんなプロジェクトがあるのか、どういう仕組みなのかを知りたい方は、まずFiNANCiEアプリをダウンロードすると良いと思います。トークンを購入しなくてもいろいろなプロジェクトが見れるし、プロジェクトのコミュニティでどんなコミュニケーションが繰り広げられているかも見られるんです。
平林:トークンを買ってなくても見られるんですか。
橋村:見られるんですよ。もちろん買った人しか見れない秘密の部屋もあります。その差はあるんですが、買う前でもコミュニティのメンバーにはなれるんですよ。いいねを押してフォローしているだけの状態ですね。
平林:ここで質問がきています。「発行主がトークンの価値を思い通りにコントロールできるのか?」僕の理解では、価値はみんなで上げていかないと変わらないのではないでしょうか。思い通りにコントロールはできないのかなと。
田中:まさにその通りです。トークンの価値はコントロールできません。Wiskey&Co様のようにウイスキーの品質やどれほどプロジェクトが注目されているかでトークンの価値は上がります。そういった方法で、価値をあげるためにできることはあるかなと思います。
平林:プロジェクトの強さみたいなところですよね。
橋村:VILLAGE INCではトークンを持ち続けてもらうことで価値が上がるように設計しました。管理する施設の優先予約券というインセンティブを付与しています。
平林:伊豆の施設はとても人気ですよね。予約できない時期もあるじゃないですか。
橋村:もともと先行予約は抽選に当選するか、40名以上で団体予約をするかの限定だったんです。このルールも生かしつつ、今回は5万以上トークンをお持ちいただいた方に優先予約券を贈るようにしました。もし施設が人気になれば、トークンの価値も上がるじゃないですか。
平林:もうディズニーランドのファストパスみたいですね。
橋村:そうですそうです。価値をみんなで一緒に上げていけたらと。
平林:次の質問です。「寄付というより投資に近い応援というイメージでよろしいでしょうか?仕組みはなんとなく既存のクラファンよりも、参加する感が強いなと感じています」
田中:イメージとしては「寄付」とは違うと思います。感覚的には寄付かもしれないですが、買った分だけトークンを受け取れますし、それによる特典もあります。トークンの価値が将来的に上がりうるところは投資的な要素があるかもしれないですね。ただ「必ず儲かります」という性質のものではありません。
平林:トークンはお金儲けしたくて購入するものじゃないですよね。どちらかと言えば好きなプロジェクトにちょっと関わりたいとか、そういうイメージですよね。推し活に近いかも。
橋村:まさに。だからプロスポーツのファンクラブなどと相性がいいっていうのはわかります。
平林:そうですよね。「自分が応援してたらトークンの価値も上がった」となったら嬉しいです。
平林:田中さんがいろんなプロジェクトを見てきて、うまくいかないプロジェクトのポイントをお聞きしてもいいですか。
田中:継続的に情報を発信できないと難しいかもしれませんね。資金調達のためにトークンを販売して、後は惰性でやっているとプロジェクトの熱量も伝わりません。皆さん、離れてしまいます。
逆にプロジェクトの熱量が高まっていると、「もうちょっと買い足そうかな」となることもあります。そうなるとさらに価値があがります。
平林:コミュニケーションが重要なんですね。
橋村:本当に。逆に継続的なコミュニケーションが苦手で、そこをおろそかにするオーナーさんとこの方法は相性が悪いかもしれないです。それならばクラファンの方が合っていると思います。
平林:なるほどです。いろいろと質問にも答えていただきありがとうございます。僕自身は、ローカルレターというメディアを運営をしています。メディアはまさに中央集権的な存在じゃないですか。どうやったらみんなで運営できるようなメディアができるんだろうと日々考えています。個人の発信になると客観性に欠けてしまうんです。
橋村:わかる。個人の発信だと信頼性も低くなるしね。
平林:でも、今日のお話を聞いて取り入れられることもあるかなと思いました。
田中:いろんな関わり方があるかなと思っていて。メディア自身がトークンになる可能性もありますし、メディアがトークンを買って、保有者としてプロジェクトに入り、情報発信をすることで貢献していくことも考えられます。
平林:あと、トークンを購入している支援者同士の繋がりも可能性を秘めてるなと感じました。
橋村:そうなんですよ。すごい盛り上がっていて、オーナーそっちのけのコミュニティもあります。みんな当事者になってるんですよ。まさに分散型の良いところだと思ってます。全部をオーナーが進行するのではなく、コミュニティが盛り上がると勝手に自立していくんですよね。
平林:すごい可能性の塊だなと思いました。お二人とも、本日はありがとうございました。
Editor's Note
FiNANCiEのアプリをダウンロードしてコミュニティをのぞいてみたくなりました。いったいどんなやりとりがあるのでしょうか。ぜひ成功事例を参考に、地域でも活用したいですね。
DAIKI ODAGIRI
小田切 大輝