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LOCAL LETTER

バケーションは自分を見つめ直す機会。踊らされないワーケーションの在り方と観光戦略

NOV. 02

拝啓、ワーケーションの本質的な魅力を知りたいアナタへ

テレワークの推進と共にワーケーションがぐっと身近になり、「中長期滞在」を切り口にした観光戦略に期待が込められています。しかし、ワーケーションが当たり前の世の中をつくるためには、本質に向き合う必要も。

そんなワーケーションへの熱い思いを交わすのは、その土地だからこそできる体験価値を発掘し届ける起業家と、行く先々で地域メンバーと共に事業づくりを行う起業家、5名です。

北海道上士幌町を舞台に開催した地域経済サミット「SHARE by WHERE」の中で「踊らされないワーケーションの在り方と観光戦略」をテーマに行われたトークセッション。

起業家が注目するワーケーションの実例や、描く未来とはーー。

ワーケーションの本質、ここにあり!見るもの聞くもの感じるものを変えれば得られる機会とは

堀口:ワーケーションの持つ可能性のようなポジティブな話や、課題のようなネガティブな部分にどう向き合うかなどをお届けしたいと思っています。早速ですが、皆さんが関わっているワーケーションの詳細を聞かせてください。

写真左>堀口 正裕(Masahiro Horiguchi)氏 TURNS プロデューサー、株式会社第一プログレス 代表取締役社長 / 総務省地域力創造アドバイザー。雑誌「LiVES」「カメラ日和」「tocotoco」等の創刊に尽力。2012年6月、日本を地方から元気にしたい、地方に関わる魅力と可能性、地方暮らしの素晴らしさを多くの若者に知って欲しいとの思いから『TURNS』を企画、 創刊。地方の魅力は勿論、地方で働く、暮らす、関わり続ける為のヒントを発信している。

島田:ワーケーションのいい部分とよくない部分ということですが、私はよくない部分は1つもないと思っています。例えば、私の背景になっている梅。これは梅収穫のワーケーションを企画した時のものです。

和歌山県みなべ町は世界農業遺産の地で、梅農家が1,200あるんですが、収穫時の6月になると人手が足りなくなるという地域の課題を聞いたので、ワーケーションを掛け合わせました。

写真右> 島田 由香(Yuka Shimada)氏 株式会社YeeY 共同創業者・代表取締役 / 2002年米国ニューヨーク州コロンビア大学大学院にて組織心理学修士取得。学生時代からモチベーションに関心を持ち、キャリアは一環して人・組織にかかわる。高校三年生の息子を持つ一児の母親。日本の人事部「HRアワード2016」個人の部・最優秀賞、「国際女性デー|HAPPY WOMAN AWARD 2019 for SDGs」受賞。

堀口:梅収穫ワーケーションに参加された方は、意義を感じて費用は自己負担、スケジュールを調整して来た人ばかりとお聞きしましたが?

島田:はい。本来であれば、農家さんから作業のアルバイト代がもらえるけれど、それもありません。ワーケーションってワークとバケーションからなる言葉で、バケーションは遊びやリラックスと捉えられていますが、そんなものは超えていて。バケーションの「vacate」は「空にする」という意味。場所や見るもの聞くもの感じるものを変えることによって、自分のことを空にして見つめ直す機会なんです。

梅収穫ワーケーションで体験したような一次産業のお仕事は、身体を使いながら単純作業を繰り返します。それが脳をリフレッシュさせる。そんな本質的なワーケーションを、ちゃんと伝えていきたいですね。

堀口:このセッションの結論出ちゃいましたね(笑)。参加した方々が最終的に得たものに、共通点はあったんですか?

島田:ポジティブな感情が参加する前より増えて、ネガティブな感情が減ったんじゃないでしょうか。そして、梅干し1つに対しての愛!これが本当に増えたので、梅に対しての見方や考え方、姿勢がすごく変わりました。そしてこの体験自体を広めていただいています。

堀口:地元の農家さんも嬉しいし、参加者にも思いもよらない発見がたくさんあったということですね。

島田:今回一番良かったことは、お金をかけずに労働力を得られたということではなく、「農業人生の中で最も楽しくて嬉しかった」という農家さんの言葉なんです。思った以上のポジティブな効果がありました。

誰もができるわけではないワーケーション。解決策はあるのか?

白石:主に役員やフリーランスのような時間やお金に余裕のある人は、ワーケーションという言葉ができる前から、こうした働き方をしていました。先ほど島田さんが遊びやリラックスを目的とすることは本質的ではないとおっしゃっていたのですが、そういう働き方によって生産性が上がるという効果もあると考えています。

どんどん広めていくべきものですが、有給を使わないと日本の働き方では難しいことも事実ですよね。ここが克服できればいいなと思います。

白石 亮博(Akihiro Shiraishi)氏 株式会社ホット沖縄総合研究所 事業開発部 部長、リゾートワーケーション推進室 室長 / 小中学時代:東京/高校時代:沖縄の後、2012年慶應大学SFCに入学。新卒でコンサルティング会社に入社しERP刷新と戦略立案PJに従事。2018年から沖縄に帰省し、現職。カヌチャリゾートホテルを町に見立てたマチ開発PJやワーケーション戦略PJを担当。一般社団法人ワンスポ沖縄監事/Global Shapers Community Okinawa 1期生(世界経済フォーラム組織)

堀口:ワーケーションは社員にとってもウェルビーイングだとわかっているので、もっと企業でも進めていってほしいけれど、実際は進められない背景にはどんな課題がありますか?

白石:論点として上がるのは、企業が主語になった時のコスパです。旅費をかけて社員を送り込んだことで会社が得られるものを設定しきれていない、測り方が定義できていないのが、ワーケーションする側・受け入れる側どちらにとっても課題です。受け入れ先も一緒に考えていかねばならないけれど、そこまでは至れていないのが現状ですね。

吉弘:ワーケーションを選びやすい仕組みに対しての個人的な案ではありますが、行った分だけ税額控除される「ワーケーション税制」を作ったらどうかなと思っています。今回のセッションを聞いていて、今後も進めていきたいと改めて思いましたね。

写真左> 吉弘 拓生(Takuo Yoshihiro)氏 一般財団法人地域活性化センター 新事業企画室長 / ラジオDJ、森林組合職員、うきは市職員を経て史上最年少で群馬県下仁田町副町長に就任。2019年より現職。ワクワクする社会づくりを目指し、全国を”異動”する公務員として全国の地域づくりの伴走支援に取り組んでいる。内閣官房 地域活性化伝道師、総務省地域力創造アドバイザー、内閣府企業版ふるさと納税マッチングアドバイザー。

大切なのは「地域」の視点。本当に目を向けるべきところをブラさない

堀口:林さんは自ら楽しんでワーケーションを設計されている印象ですが、具体的にどんなことをやられているのですか?

:私は早朝ゴルフに行ったり、夕方には釣りに出かけたり、毎日がワーケーションのような生活をしています。この生活スタイルをするために、最初は職場環境を整えることから始めました。

写真中央右>林 克彦(Katsuhiko Hayashi)氏 北海道ホテル 取締役社長、日本サウナ学会 理事、十勝サウナ協議会 発起人代表 / サウナ歴は2018年11月22日から。それ以前は世の中で一番嫌いだったのがサウナと水風呂という異色のサ歴。2019年4月フィンランドのサウナ聖地ルカを訪問。同年6月北海道ホテルのサウナをフィンランド式にリニューアル。現在は年間500回を超え入浴するプロサウナ―。各地のサウナ施設のアドバイスや、サウナによる街づくりや連携による集客増員の講演も行っている。

サウナを好きになって、サウナの聖地フィンランド・ルカのサウナツアーに参加したら、十勝の景色がルカにそっくりであることに気がついて。そこで、十勝のサウナもフィンランド式にすることを提案し、説得しました。

これまで十勝の観光客は60〜80歳が多く、冬に弱いという課題を持ってたんですが、サウナに力を入れるようになって、結果的にそれを目的にワーケーションや移住をする20〜40代の世代が圧倒的に増えました。狙ったわけではないけれど、結果的に増えているという事例ですね。

堀口:地域のことを分かって、愛しているコーディネーターの存在は絶対に必要ですね。

吉弘:地域を入れて設計しているところはポジティブな視点で、次から次へとアイディアがつながっていくところが多いような気がしています。

逆に、世の中には地域側への視点が抜けているところもあります。施設ばかりがどんどん増えていっていて。「箱物行政」なんていう言葉もありましたが、そうはならないようにしないといけないなと改めて感じ、私自身、色々なところに伝えているところです。 

ワーケーションを推進するにあたり、本当に目を向けるべきところはまず、地元の住民や企業。必要だと思ってもらって初めて先に進めますこれが抜けていることが、ミスリードにつながっているのかなという反省がありますね。

ワーケーションはウェルビーイング。課題もはねのけるような強い推進力を

堀口:島田さんは、ワーケーションにはあまり課題はないとおっしゃっていましたが、こうするともっと進んでいくんじゃないかと客観的に思われていることはありますか?

島田:私は、ワーケーションにルールっていらないと思っています。これって真髄はウェルビーイングなんです。林さんのように、仕事の途中に当たり前のように抜け出して釣りに行くようなリーダーがいる職場が、これからの違いをつくるんですよ。

「仕事と遊びの切り分けはどこか」と追求する人は遅れていると思っています。仕事なんて発想の結果だから、遊びと仕事には区別がありませんそういう人たちの方が発想力や行動力がある。

そのうえで大事なのは、最低限の合意形成はしっかりと図ること。例えば、ズルはしないとか人を騙さないとか。サボったって結果を出せばよくて、いちいちマネージするのをやめてほしい!これが私が一番思う課題です。

白石:ワーケーションができる働き方が良いことはわかっているんだから、トップダウンで「やろう!」と進めることが今回の共通項だと思っています。資金の問題などもはねのけるくらいの強い推進力が必要ですね。

堀口:ワーケーションも人生設計の1つ。ワーケーションによって考え方を見つめ直すことが、大事なんだなという気がしますね。

踊りたいと思えば踊る、踊らないのであれば踊らない。自分がどうしたいか

堀口:最後に、ワーケーションの描く未来や想定される壁について、登壇者の皆様から一言ずつお願いします。

島田:仕事中心に物事が決まるんじゃなく、自分の人生をどうデザインするのか、人生に一番大事な軸を置いて考えたらいいことなんじゃなかなと思っています。それが描く未来です。

:私は毎日がワーケーションですが、ドーパミンとアドレナリンがドバーッと出ることを見出すことが重要だなと思っています。

白石:我々もワーケーションというソリューションを提供する側として、制度としてワーケーションを使いたいという会社さんが、実現できるようなものを目指していきたいです。

吉弘:踊らされないワーケーションとは、自分がどうしたいかだと思います。自分で踊りたいと思えば踊る、踊らないのであれば踊らない。選択は自分ができることです。国が会社がというよりも、「自分がどうしたいか」というワーケーションを広めていきたいですね。

堀口:ありがとうございます!登壇してくださった皆さんのSNS等は次なるアクションにつながるヒントばかりなので、ぜひ見てみてください。

Information

地域共創コミュニティ「LOCAL LETTER MEMBERSHIP」会員100名突破!

場所に縛られずに、 オモシロい地域や人と もっと深くつながりたいーー。

LOCAL LETTER MEMBERSHIP とは、「Co-Local Creation(ほしいまちを、自分たちでつくる)」を合言葉に、地域や社会へ主体的に関わり、変えていく人たちの学びと出会いの地域共創コミュニティ。

「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。

<こんな人にオススメ!>
・本業をしながらも地元や地域に関わりたい
・地域で暮らしも仕事も探求したい、人が好き、地域が好き、旅が好き
・地域を超えた価値観で繋がる仲間づくりがしたい
・社会性の高い仕事をしたい
・地域や社会課題を解決する事業を生み出したい

 

MEMBERSHIP の詳細&お申込みはこちら
https://localletter.jp/membership/

Editor's Note

編集後記

このセッションの前にワーケーションについて調べてみました。ワーケーションとは、漠然と働く場所をリゾート地などに移して仕事をすることだと考えていた私。日本経済団体連合会の企業向けワーケーション導入ガイドを見ると「テレワークを活用し、普段の職場から離れ、リゾート地等の地域で、普段の仕事を継続しつつ、その地域ならではの活動を行うこと」とあり、目からウロコ!さらに登壇者のセッションを聞いて、ワーケーションの概念がガラリと変わりました。

すべては自分次第。まずは「自分がどうしたいか」を考えることから始めたいと思います。世界農業遺産のみなべ町や十勝のサウナ、沖縄のリゾートホテルと、行きたい場所ばかりです。

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