デジタルノマド
リモートワークの普及により、場所に捕らわれずに働くことができるワークスタイルの「デジタルノマド」が注目されている現代。
ワーケーション先として、長崎はどんな魅力があるのか。実際に人気の滞在先になりえるのか。海外ワーケーション事情・デジタルノマド事情に詳しいパネラーを招き、長崎県の可能性について討論したパネルディスカッションでは熱い議論が交わされました。
今回は、オンラインイベント『長崎・新たな暮らし方会議第6回勉強会〜ワーケーション海外事情〜』よりパネルディスカッション「長崎はデジタルノマドにとって魅力的な場所になりえるか?」のレポートをお届けします。
■登壇者■
大瀬良亮氏(ファシリテーター / 以下、敬称略):まずは皆さんの自己紹介から入れたらと思います。
朱明奈氏(以下、敬称略):朱明奈(しゅあきな)です。両親が中国人なんですが、生まれも育ちも日本です。8年間ほど日本で会社員をしたのち、2020年からデジタルノマドとして世界を巡っています。現在は、41カ国200都市ほど巡りました。
朱:2021年は国内20件30都市ほど行った後、海外は7カ国20都市ほど行っています。ジョージア、トルコ、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、チリ、アメリカに行ってから、また1年日本に戻っています。2022年は、タイから現在は南アフリカにきています。(イベント時は南アフリカより傘下)来月からは、スペイン、ポルトガル、ブルガリア、コロンビアを周る予定です。
大瀬良:ありがとうございます。現在、南アフリカでは、デジタルノマドの方はたくさんいらっしゃるんですか?
朱:そうですね。11月の頭に、250人くらいデジタルノマドたちが集まる会議に参加するために南アフリカに来たんですが、その後ももう毎日10人くらいのデジタルノマドに出会って一緒にハイキングに行ったりご飯に行ったりと、本当にデジタルノマドたちがいっぱい集まる街だなと感じています。
大瀬良:今日の参加者の中には初めてデジタルノマドっていう言葉を聞く人もいるかなと思いますし、「旅行してるだけなんじゃないの」と気になっている人もいると思うので、朱さんがどんな仕事をしているか教えてください。
朱:「NomadUniversity」というサイトで、デジタルノマドの人たちに英語でインタビューをして、その内容を日本語で記事化したメディアの運営をしています。会社員をしていた時は英語関連や出版会社のお仕事をしていたので、コンテンツライターとして活動していました。
大瀬良:ありがとうございます。今本当に世界中を回って、各地域でいろんなデジタノマドの人と出会っていらっしゃると思うんですが、日本人やアジア人のデジタルノマドの人たちは結構いらっしゃるんですか?
朱:日本人やアジア人は本当にレアキャラですね。私は「絶滅危惧種」と呼ばれています(笑)3,500万人いるデジタルノマドの80%が欧米人と西洋人で、10%が中南米の人、8%がアジア人なんです。なので、南アフリカにいる日本のデジタルノマドは、まだ私しか見てないですね。
大瀬良:男女比はどれくらいですか?
朱:ちょうど5対5ですね。平均年齢としては32歳前後のデジタルノマドが多いんです。日本にいるフリーランスのノマドの方々って、印象として20代初めの方が多いと思うんですが、海外に行くと30代とか40代を中心に、中には70代の方でもコリビング(「シェアハウス」と「コワーキングスペース」の特性を併せた住居のこと)に参加されてる方がいて。本当に幅広い印象を受けます。
大瀬良:彼らは日本に来たことはあるんですか?
朱:いつも「日本から来ました」っていうと「日本って絶対行きたい国ナンバーワンだったんだよね」「夢の国」みたいな感じで言われたり、「行きたいって思ってたんだけどこのパンデミックで行けなかった」という反応が多いです。「絶対行く」っていうモチベーションを感じることは肌感覚としてありますね。
松下慶太氏(以下、敬称略):コロナの前から、日本はすごく人気が高いことは確かだと思います。
大瀬良:松下さんがいっていたカフェ、サーフィン、ヨガみたいな要素は、一部の人の嗜みというイメージがあると思うんですけど、無くてもいいんでしょうか?
松下:私個人としてはあった方がいいと思います。例えば、3日間で観光に来るんだったら観光スポットでスケジュールが埋まってしまい、多分ヨガをしてる暇はないですよね。ですが、長期滞在では「仕事が終わった後にこうする」というルーティンがあったほうが、仕事が回りやすいので必要かなと。
アメリカと同じだと来る意味がないですが、共通言語というか、フォーマットみたいなのがある程度はないとダメだと思います。
大瀬良:海外のノマドの方は日本に何を期待していると思いますか?
朱:東京のような大都市だけじゃなくて、そこからローカルの人しか知らないようなスポットに行きたいという声がすごい多いので、日本らしいディープさを期待されてるんじゃないかなと思います。
日本から来たっていうと「JapanCool!!」という風にいわれて、「とにかくかっこいい」「憧れ」みたいなブランディングがすごく出来ているなという印象があるんです。ただ、遠いし、物価が高い、時差が辛いという懸念点が乗り越えられずに、中々来てもらえないのが実情ですね。
大瀬良:「どうアプローチをすれば、彼らにとって魅力的な存在になるのか」については、これからどんどん勉強していく必要があるんじゃないかなと思いますね。
大瀬良:ローカルの一つとして日本を代表する観光都市・長崎市でインバウンド誘致に力を入れている古賀さんも自己紹介をお願いいたします。
古賀典明氏(以下、敬称略):私は新卒で旅行会社に入り、旅行会社の中で10年間海外に行ってました。仕事で3カ国海外に勤務しましたが、特にインドの5年間は非常に刺激的でした。インバウンド以外にも、インドからシンガポールへの海外旅行として、現地の方を送り出すような仕事もしていましたね。
現在は、長崎国際観光コンベンション協会に話をいただいたので前職を退職して、長崎にやって来たという感じです。長崎に来てからは主に地域開発として、長崎の事業者の皆さんとビジネス創出や、マッチングを通じて、経済貢献することをミッションに仕事に取り組んでいます。
ただインバウンドに関して正直長崎市は、まだまだできてないところがありますし、デジタルノマドに関しては私も勉強不足なので、長崎市としてこれからどんな風にやっていけるのかは考えていきたいなと思っています。
大瀬良:インバウンドという取り組みを広げていく中で、デジタルノマドのお話を松下さんや朱さんから話を聞かれてどう思いましたか?
古賀:長崎は坂の多い町で、結構上り下りが大変だという話を地元から聞くので、これはデメリットに感じますけど、その一方で高台に上って夜景見るとすごくいい景色が見えます。なので、地元の方にとってデメリットになることも、非日常的な体験になりますし、もしかしたらデジタルノマドの方々にとってはすごく魅力的に感じるのではないかなと思いました。
あとは、デジタルノマドの方と地元の方が交流する場や、長崎の企業さんと結びつけるような取り組みも出来たらいいのではないかと考えています。出島は歴史的に海外との交流をしてきたので、そのDNAを活かしていければいいかなと。
大瀬良:UberEatsをすぐ用意するというような、デジタル部分のサービスを整備するには、民間側の動きが必要になってきますよね。「地域の人たちがオープンであるか」という点はおそらくデジタルノマドを受け入れる上ですごく大切なポイントだし、これは簡単には育たないと思います。
その点で長崎という場所はまさに、昔からいかにオランダや中国、スペインといった海外の文化を受け入れて、自分たちの文化を創発してきた、日本一の場所だったという意味では、歴史が受け継いできた遺伝子をまさに今改めて開花させていくチャンスじゃないかと私は感じます。
長崎県が持つ、異文化との交流を、歴史的に行ってきた地盤を生かして、ワーケーション先として先進的なポジションになるのか。
後編では、オンラインイベント『長崎・新たな暮らし方会議第6回勉強会〜ワーケーション海外事情〜』のパネルディスカッション「長崎はデジタルノマドにとって魅力的な場所になりえるか?」よりレポートをお届けします。
Editor's Note
世界的に増えているデジタルノマドを日本に誘致できるかどうか、様々な可能性を考える今回のイベント。
少子化や過疎化といった、様々な問題を抱える地域を活かす方法として、海外のデジタルノマドに対してワーケーション先としてのメリットを押し出し、地域を盛り上げられるかもしれないと感じられるディベートとなっていました。
YUYA ASUNARO
翌檜 佑哉