EMIGRATION
移住
「富士山に一番近いまち」と呼ばれる山梨県・富士吉田市。五重塔越しに大迫力の富士山が見える新倉山浅間公園や、初見の方は必ずと言っていいほど麺の硬さに驚く吉田のうどん、富士急ハイランドなど、見どころ満載な観光地としてよく知っている人も多いはず。でも今回は、この街で新しい暮らしを始め、のびのびと心地よく生活している人の働き方、遊び方のご紹介。
2020年8月に都内から富士吉田市へ移住した関口裕介(通称:めん)さん、かなこさん夫妻は、現在おふたりのお子さんと4人暮らし。夫のめんさんは都内の会社に在籍しながら、富士吉田市からリモートワークで働いている。思い切って住環境を変えたことで、「世界が広がった」と話す関口夫妻の暮らし、そしてそこで得た変化とは──。
おふたりが移住を本格的に考え始めたのは、およそ2年前。国内旅行が趣味だというめんさんは、旅を終えて都内に戻るたびに東京で暮らすことへの息苦しさを感じ、いつかは自然の多い地域に住みたいと思っていたそう。その願いを実現するきっかけになったのが、コロナ禍で導入されたリモートワーク。それまで毎日会社に通っていた日々が一変し、自宅で勤務するようになったことが新たな拠点を探す気持ちを後押しした。
「私は千葉県船橋市、妻は青森県八戸市の出身ですが、お互いに地元へUターンしたいわけでもなく、移住先の候補は国内全部でした(笑)。移住のイメージを具体化させるために、たまたま見つけた地域おこし協力隊のイベントに参加していたところ、主催者であった株式会社WHEREの平林さんにお会いして。彼におすすめされた移住先候補の一つが富士吉田市でした」(めんさん)
2020年6月、コロナの感染拡大が一旦落ち着いたタイミングで、移住先候補の中からまずは最も都内から近い富士吉田市を訪れてみることにした関口夫妻。富士吉田市への移住・起業の支援を担う「ふじよしだ定住促進センター」を介して、早速現地へ。空き家バンクに登録されていた家、その近隣の幼稚園やスーパーを見学したところ、第一印象で「ここだ」と感じたという。
「初めて訪れた場所なのに、自分と家族がこの街で暮らすイメージが即湧きました。都内では当たり前だった人の多さや公園、施設の狭さから感じていた窮屈さがここにはまるでなく、子どもも私もありのままで居られるところ。そして何より水の美味しさ、空気の心地よさには驚きましたね。水道をひねれば富士山から流れる天然水が飲める、シャワーからも浴びられるのは、大きな魅力の一つだと思います」(かなこさん)
初めての訪問から2週間程度で富士吉田市への移住を決意したおふたり。富士吉田市は諸条件を満たした人への移住支援金も充実しており、空き家バンクに掲載されている物件利用の移住で20万円の支給や、遠距離通勤やテレワーク勤務をしている方々への支援をはじめ、新築物件や、中古物件の購入にも補助が出る。(他、支援金の詳細はコチラ)
空き家バンクに登録があった現在の自宅は、築15年と比較的新しくリフォームいらず。新しい生活へ移行するのに不便さはなかったというが、2歳の長男・大和くんと、生後6ヶ月の次男・朝陽くんとの暮らしにはどんな変化があったのだろうか。
「仕事がある平日も子どもの成長を見られるようになりました。以前は会社から帰宅する夜9時頃まで、家族とはコミュニケーションを取れない状況でしたが、今は自宅から程近い公園に妻と子どもを迎えに行ったり、その足でスーパーに行ったり、家族の時間を持ちながら仕事ができています。それはリモートワークという働き方に加えて、徒歩圏内に子どもが遊べる自然豊かな公園があること、仕事に集中できる静かな環境が整っていることも寄与しているんだと思います」(めんさん)
「休日は子どもたちを連れて河口湖や山中湖にある公園で遊んだり、美味しい吉田のうどんを探したり、新しい場所へも積極的に行っています。富士吉田に住み始めてからちょうど1年。自宅があるエリアは住宅地で落ち着いた雰囲気がありつつ、車で少し足を伸ばせば河口湖などの観光地も楽しめます。都内に居た時は決まった場所に毎度行くことが多かったのですが、ここに来てアクティブにいろんな場所へ出かけるようになりました。子どもたちも毎回新しい発見があるようで、表情が生き生きしています」(かなこさん)
目に入る景色、肌に触れる空気、関わるコミュニティ……住環境が人に与える影響は大きい。めんさんもこの場所だからこそ得た価値観の変化があったという。
「富士山を毎日眺めているからか、いい意味で自分をちっぽけだと思うようになりました。この辺りは富士山から流れて来た水がずっと流れています。今まではそういった自分を支えてくれているものとの距離が遠すぎて、想像すら及ばなかった。でも今は、その恵みに感謝できます。大きく偉大な存在を近くに感じることで、自分が見ている世界だけが全てじゃない、と視野を広げられています」(めんさん)
縁もゆかりもなかった山梨県・富士吉田市に一年前に移住をした関口夫妻。ここでの生活を振り返った時、移住前はこれまで築き上げてきた人間関係がなくなってしまうことへの不安が少なからずあったものの、いざ新たな生活を始めてみるとすべてが払拭されたというかなこさん。
「今はリモートで繋がれるし、富士吉田市の人たちは想像以上に歓迎してくれて、近隣の方や公園で会うママたちとの新しい繋がりが生まれています。人や環境も、今あるものには感謝しつつ、それらに固執することなく新しいフィールドに足を踏み入れたら、世界はどこまでも広がっているんだなと実感しています。
自然が好き、富士山を間近に見たい、水や空気が美味しいところで子育てがしたい人ならば、富士吉田市での暮らしはぴったりだと思います。私自身、仕事も遊びも子育ても、全部こんなに全力で “生きる” ことができるのだと、この街に来て知ったような気がしています」(かなこさん)
めんさん
5時起床>>>ランニング・家事・読書などの自分時間>>>7時仕事開始・長男くん起床&ちょっと世話>>>かなこさんにバトンタッチ>>>昼ちょい前に公園に迎えに行く>>>12時ランチ>>>13時仕事再開>>>17時夕飯・お風呂・寝かしつけ>>>ちょっと仕事>>>就寝
かなこさん
7時頃起床>>>午前中2時間程度公園>>>昼食>>>お子さんふたりをそれぞれ寝かしつけ>>>家事・夕飯支度>>>夕飯>>>ふたり寝かしつけ>>>自分時間(スマホで情報収集、漫画好き)
Editor's Note
私たちの暮らしの中には何をやるにも優先度みたいなものがあって、ランクが低いものはないがしろにされがちです。自分と向き合ってそれらを常にアップデートできていれば心地いいのでしょうが、忙しいとそうもいかない。日頃ワクワクするためには、その優先度は何を基準に設定されているのか、この順番で明るい気持ちになるのか、といったことを日々チューニングしていければと関口夫妻の充実した暮らしぶりから思いました。富士吉田市での健やかな生活、今後も気になります!
SAWAKO MOTEGI
SAWAKO MOTEGI