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LOCAL LETTER

「ふるさと兼業」を通じて得た、持続的に助け合えるパートナー関係の築き方

SEP. 25

ISHIKAWA

拝啓、副業兼業を通して、企業と共に学び成長したいアナタへ

※本レポートはふるさと兼業事務局NPO法人G-net主催の【事例勉強会】奥能登の小さな酒蔵のファンを増やすプロジェクトの事例紹介」を記事にしています。

コロナ禍によってリモートワークが進み、本業のみならず副業兼業のような1つの仕事に縛られない働き方を実践しやすくなった昨今。幅広い副業兼業の形態があるなかで、「ふるさと兼業」では共感と熱意をベースとした企業と個人のマッチングプラットフォームを提供しています。

本イベントでは石川県奥能登にある松波酒造の事例を紹介いただきました。

自社のSNSの整理・管理の知見とビジネスに対する新しい視点を得ることを目的に『ふるさと兼業』を利用。奥能登から関東方面へと販路拡大の足がかりを築き、困ったときに頼ることができる人との繋がりをつくることができたといいます。

前編では松波酒造の金七さんとモデレーターの森山さんの出会いや「ふるさと兼業」を利用したきっかけ、その具体的な取り組み内容をお届けしました。

後編では金七さんのオンラインファンクラブを超えたイベント事例や3ヶ月間を通しての成果、「ふるさと兼業」で求めていた人材の裏話をお話いただきました。

プロジェクトのサポーターから純粋なファンへ。今後も続く「頼れる関係性」への変化

金七氏(以下敬称略):オンラインだと繋がりにくかったり、グループチャットへの投稿も頻度が高いわけではないので、「リアルイベントを東京で開催しよう」ということになりました。キャシーさんも交流会の会場や参加受付を手伝いますよと言ってくれて。

どうせなら夜だけでなく「日中のイベントもやろうよ」となり、昼間は発酵デザイナーの小倉ひらくさん発酵デパートメントで日本酒の試飲会&販売会を開催し、夜は「下北ヨバレで全員酒豪」と題して交流会を行いました。

金七:交流会の参加登録や参加費徴収のためにPeatixを使用したのですが、はじめは使用方法をあまり理解していなくて、決済機能などに手こずりました(笑)。そんな時もキャシーさんに協力いただき、私1人では絶対にやり遂げられなかったと思うほどたくさん助けていただきました。

金七:この3ヶ月間のプロジェクトの成果としては、当初のSNSを通してファンを増やしたいという想いがInstagramのフォロワー増加という結果で達成できたこと。また何よりキャシーさん自身が1番のファンになってくれて、仕事関係なくファンとして今後も手伝いたいと言ってくれたこと。

オンラインのファンクラブ(=FANグループ)では思ったほどに交流を活性化できませんでした。そんななか5月5日の能登地震の際にFANグループの全体チャットにて、より被害を受けた酒蔵さんの被害状況とそこのお酒を買って欲しい内容を投稿したところ、一部の方から実際にお店に行ってお酒を飲んだと報告をいただきました。

チャットの方が、公式のSNSよりも率直なこと言ったり助けを求めたりできるなと。自分より大変な人がいるとわかっているからこそ、なかなか自分から助けてとは言えない気質。ですが、助けてほしい時や何かわからないことや苦手なことがある時に、キャシーさんをはじめ頼れる先ができたことが大きな成果でした。

副業兼業者として「できることの押し売り」ではなく、「共に学びたい」という姿勢が大切

森山氏(モデレーター、以下敬称略):ありがとうございました。そもそもキャシーさんに決めた理由はなんだったのですか。

金七:4名応募してきてくれた人の中で、キャシーさん自身は副業兼業の経験はなかったのですが、一番話しやすかったんです。自分と同じ目線に立って地に足の着いた新たなことを一緒に考えてくれる人だと思いました。

また、日本酒のマニアではない人、食べることが好きで田舎や旅行が好きという人がいいなと思っていて、キャシーさんがその通りの人でした。

金七 聖子氏 松波酒造株式会社 若女将 / 京都の大学を卒業後、地元に戻り、修行を経て、家業を継いだ。能登の振興を目指して結成された「奥能登ウェルカムプロジェクト 食彩紀行」のチームリーダーとして、今や県内外で知られる地域ブランドになった「能登丼」の開発、普及に携わった。店の営業や配達に励む傍ら、キャンペーンや講演などで各地を忙しく駆け回り、能登丼の仕掛け人として、青年会議所の2008年石川TOYP大賞も受賞している。2022年度に初の副業受入を経験し、これまで、ほぼ一人で担当してきたウェブマーケティングで、強力なパートナーを得て、ファンコミュニティの活性化という方向性を見出して、ますます精力的に活動中。
金七 聖子氏 松波酒造株式会社 若女将 / 京都の大学を卒業後、地元に戻り、修行を経て、家業を継いだ。能登の振興を目指して結成された「奥能登ウェルカムプロジェクト 食彩紀行」のチームリーダーとして、今や県内外で知られる地域ブランドになった「能登丼」の開発、普及に携わった。店の営業や配達に励む傍ら、キャンペーンや講演などで各地を忙しく駆け回り、能登丼の仕掛け人として、青年会議所の2008年石川TOYP大賞も受賞している。2022年度に初の副業受入を経験し、これまで、ほぼ一人で担当してきたウェブマーケティングで、強力なパートナーを得て、ファンコミュニティの活性化という方向性を見出して、ますます精力的に活動中。

森山:面接のときに同席していましたが、馬が合っていましたよね。3ヶ月たった今となっては仲良くやられてますが、はじめからキャシーさんのスタンスは、プロジェクトのなかで自分も学びたいというものでした。

彼女自身の興味としても、地域企業の課題解決に携わりたいという想いがあったり、ご自身で経営を学んでいらっしゃったりと全体的に学びの姿勢で関わってくれていました。

金七:地方に住んでいるとなかなか繋がらない人と、キャシーさんとの繋がりで巡り合うこともできて、良い人と縁ができたなと思っています。

森山:人材とのマッチングという意味においては、共感度の高い人と出会えたことは「ふるさと兼業」だったからこそだなと。

金七:パートナーとして一緒に伴走する3ヶ月が終わった後、それ以降の関係性が希薄になって頼りたくても頼れなかったり、その人なしでは何もできないという状況にならなかったことはとてもよかったと思います。

森山:はじめに業務をお願いした時から、毎週のミーティングを重ねる中でファンクラブという、方向性が少し違うアイデアがでてきましたよね。

もともと金七さんにはファンがいたと思うけど、自分で自分のファンクラブをつくろうということは1人では思いつかないことだと思います。

森山 奈美氏 株式会社御祓川 代表取締役 / 石川県七尾市生まれ。横浜国立大学工学部卒。都市計画事務所入社3年目で担当した業務がきっかけで、民間まちづくり会社の設立に携わり、8年後に代表取締役に就任。能登の特産品を取り扱う「能登スタイルストア」を運営するほか、地域の課題解決に挑戦する若者を能登に誘致する実践型インターンシップ「能登留学」、能登半島の地域企業の人材研修・組織開発・採用支援などを担う「能登の人事部」として地域全体の人材育成にも取り組む。能登留学生と生活を共にするインターンハウスの家主でもあり、200名を超える能登留学OBOGが能登に帰る際の拠点になっている。様々な主体が関わるまちづくりのつなぎ役として、能登の元気を発信し「小さな世界都市・七尾」の実現を目指して日々、挑戦中。
森山 奈美氏 株式会社御祓川 代表取締役 / 石川県七尾市生まれ。横浜国立大学工学部卒。都市計画事務所入社3年目で担当した業務がきっかけで、民間まちづくり会社の設立に携わり、8年後に代表取締役に就任。能登の特産品を取り扱う「能登スタイルストア」を運営するほか、地域の課題解決に挑戦する若者を能登に誘致する実践型インターンシップ「能登留学」、能登半島の地域企業の人材研修・組織開発・採用支援などを担う「能登の人事部」として地域全体の人材育成にも取り組む。能登留学生と生活を共にするインターンハウスの家主でもあり、200名を超える能登留学OBOGが能登に帰る際の拠点になっている。様々な主体が関わるまちづくりのつなぎ役として、能登の元気を発信し「小さな世界都市・七尾」の実現を目指して日々、挑戦中。

森山:キャシーさんは、金七さんのキャラクターに惹かれて実際に現地まで来てくれるファンがいるという事実を見逃さず、そこを大切にしようと考えてくれたことがとても本質的だったなと思います。

金七:他にもFANグループをはじめた際のグループ内の規約やルール(本名で参加する、問題になりそうな発言は管理側で削除するなど)の策定など、自分では躊躇してできないことも考えて実行していただきました。

自分の近くにECに強い人がいなかったので、1人では判断できないことや決めきれないことに対してアドバイスをいただけて、それがとてもありがたかったなと。

森山:能登の酒蔵では普段違う仕事をしている人が兼業で杜氏として働く風土がもともとあって。それが今の時代になって都市部の人が副業兼業として能登に関わってくれるのは、一周回ってとても面白いなと思いました。

金七:副業兼業が能登では普通のことだったんですよね。今の時代、インターネットのおかげで場所関係なくスキルがあれば副業兼業はできる。私がしてもいいかなと思うくらいです(笑)。

企業の規模感や求めていることも様々ですが、自分のスキルの押し売りではなく、地域の課題やその企業のことを深く知って、共にどんなことができるのかということを一緒に考えてくれる人がサポートしてくれると良いなと思います。

森山:地震があって他社のことを投稿で取り上げたのも、競合他社関係なく横のつながりを大切にしている能登だからこそ。その文化も含めてファンになってくれる人が増えてたら良いなと思います。

状況は楽ではないと思いますが、今回の「ふるさと兼業」を通して助けを求められる先を獲得できたことは松波酒造を含め能登の企業にとってよかったことだと感じます。

企業の想いに共感し、熱意を持ってプロジェクトを進める「ふるさと兼業」の可能性

森山:それでは、参加者の方からの感想をお願いいたします。

参加者:これまではお金で何でも解決してきた時代でしたが、これからの時代は様々な繋がりやコミュニティに参加して重なりが増えることで、お金ではない助け合いの輪が広がるのかなと感じています。そういう意味において、副業兼業も繋がりやコミュニティの形の1つとして興味を持ちました。

自分にできることを考えた時、いつも「自分にはできることが何もないなぁ」と思ってしまいますが、キャシーさんの話を聞いて「ふるさと兼業」は何ができるかよりも企業さんと共鳴する部分だったり一緒にやっていきたいと思えるかどうかという部分が大切なんだと感じました。

金七:キャシーさんのよかったところは、働くことを通して何を得たいかということを包み隠さず話してくれたことです。また、好きなものが一緒だったことやそれに共感できたことが嬉しかったです。

森山:今回の金七さんのプロジェクトを振り返ってみて、改めて能登っていいなと思いました(笑)。支え合う文化がある能登と共感と熱意をベースにしている「ふるさと兼業」がドンピシャだったと思います。

能登には小規模の企業が多く、地域の人だけで続けていくことが難しいなかで、地域の外から人を呼び、少しでも能登を元気にしていけたら良いなと思います。

金七:3ヶ月という期間は短く、その期間で結果を出すことは簡単ではありません。松波酒造や能登のことを好きになって評価してくれているという信頼感が根本にあっての繋がりであり、それがあってこそ今回のプロジェクトを行えたのだと思います。

また、良い人とマッチングしてそれをサポートしてくれるコーディネーターの存在がいたこともよかったなと。今兼業をしたいと思っている人も、コーディネーターの人に頼ったり面接の際に企業さんに何ができるか・できないかなどを正直に話したら良いと思います。

今回はEC部門で業務をお願いしましたが、種類の違う業務でお願いしたいことも出てくると思いますので、今後ともぜひよろしくお願いいたします!

Editor's Note

編集後記

副業や兼業はともすればスキルや成果物の切り売りのようなものとなり、無機質な関係に終始してしまいがちですが、『ふるさと兼業』は共感という想いの部分を大事にしているからこそ、副業兼業者も一時的ですが企業のチームの一員であるというマインドセットが大事だと思いました。

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