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LOCAL LETTER

「官民連携」なんて言葉はいらない。行政も民間も経験した登壇者が語った“官民連携のポイント”

AUG. 21

SUMIDA, TOKYO

前略、民間企業(行政)で、行政(民間企業)との連携を考えているアナタへ

人生100年時代が当たり前に叫ばれるいま。

時代の変化が著しい中で「個々の働き方(生き方)」には大きな変化が問われている。

長い長い時代に突入していく中で、いま特に注目を集めているのは「個々の働き方(生き方)」だろう。

しかし、あらゆる世代が健康で長く幸せに暮らし続けるためには「個々の働き方(生き方)」を変革するだけではなく、「地域」にも大きな変革が必要だ。

これから地域を盛り上げるためには、さらなる「官民連携」が重要になることは明らかである一方で、残念ながらまだまだ官民連携をスムーズに行っているケースは少ない。

そもそも「官民連携」と言いつつ、社会的に置かれている立場が全く異なる両者であるが故に、お互いの仕事や価値観、文化を理解していない人がほとんどなのではないだろうか。

そこで今回は、行政マンでありながら、半民間の一面も持って活躍している異色なゲスト2名をお呼びし、弊社代表の平林と共に「官民連携」をテーマにした対談イベント『LOCAL LETTER LIVE vol.4』を開催。

行政も民間企業も経験した登壇者だからこそわかる、官民連携において本当に大切なこと、担当者が相手を見極めるポイント、官民連携がはじまるきっかけなど。登壇者が打ち明けた、90分の熱いトークをお伝えします。

「Win – Win」の関係性を考える

平林和樹(以下、平林):今回は「官民連携」がテーマです。最初に、いろんな企業と手を組んでいるおふたりですので、今日は “行政が思う民間企業とのやり取りの難しさ” を積極的に聞いていければと思っています。

佐久間 智之(Tomoyuki Sakuma)氏 埼玉県三芳町 広報担当 / 元バンドマン。2002年に埼玉県三芳町へ入庁。税務課、介護保険担当を経て広報担当となり、4年で広報誌を日本一にする。予算ゼロ円の事業を企画立案実行するなど、戦略的に町の魅力を配信。その後、自ら志願し民間企業である「株式会社モリサワ」へ約1年間出向した経験も持つ。現在は、埼玉県三芳町の地方公務員 兼 メディア・ユニバーサル・アドバイザーとして、幅広く活動している。
佐久間 智之(Tomoyuki Sakuma)氏 埼玉県三芳町 広報担当 / 元バンドマン。2002年に埼玉県三芳町へ入庁。税務課、介護保険担当を経て広報担当となり、4年で広報誌を日本一にする。予算ゼロ円の事業を企画立案実行するなど、戦略的に町の魅力を配信。その後、自ら志願し民間企業である「株式会社モリサワ」へ約1年間出向した経験も持つ。現在は、埼玉県三芳町の地方公務員 兼 メディア・ユニバーサル・アドバイザーとして、幅広く活動している。

佐久間智之氏(以下、佐久間氏):埼玉県三芳町は、元モー娘。の吉澤ひとみさんの出身地ということから、無償で三芳町広報大使をやっていただいていました。現在は、埼玉県出身のJuice=Juiceの金澤朋子さんが無償で三芳町のために広報大使にご協力いただいています。

どうして無償でご協力いただけるのかというと僕が企画書を持って、事務所に直談判しに行ったからなんですよ。今までは「どうせ無理だ」とか「ギャラが高いだろう」という公務員特有の固定概念があって、無駄足になるからと誰もやってきていませんでした。でも「やってみてダメなら仕方ないけど、やってできちゃったら、それでいいじゃん」と思って、とにかく仕掛けてみようと思ったんです。

持参した企画書には、町の魅力をたくさん書いて「僕らだけの力ではPRできないから、ぜひ力を貸して欲しい」というメッセージと、PRしてもらう代わりに、広報誌の表紙に出て一緒に町を盛り上げてもらうことで、どれだけのリーチ力があるのかということを書きました。Win-Winをとても大切にしていて、その部分も十分に伝えたからこそ、無償でもお互いに気持ちよく仕事ができるんだと思います。

官民連携は「共通のビジョン」が大切

田中 佑典(Yusuke Tanaka)氏 総務省地域力創造グループ地域政策課 / 総務省入省。長野県等への赴任を経て、2017年より現職。シェアリングエコノミーの社会実装をはじめ、人口減少下における持続可能な社会を実現するための企画・立案に従事する傍、集落の最期に向き合う “みとり方” を考える「ムラツムギ」を立ち上げ活動しているほか、官民が連携し社会のルールを提案している一般社団法人「Public Meets Innovation」の理事も務める。
田中 佑典(Yusuke Tanaka)氏 総務省地域力創造グループ地域政策課 / 総務省入省。長野県等への赴任を経て、2017年より現職。シェアリングエコノミーの社会実装をはじめ、人口減少下における持続可能な社会を実現するための企画・立案に従事する傍、集落の最期に向き合う “みとり方” を考える「ムラツムギ」を立ち上げ活動しているほか、官民が連携し社会のルールを提案している一般社団法人「Public Meets Innovation」の理事も務める。

田中佑典氏(以下、田中氏):僕も佐久間さんの考え方に近いですね。官民連携って、“特定のビジョン” が共有できていないとダメだと思います。

僕が総務省の顔を脱ぎ捨てて、総務省の外でムラツムギやPMIの活動中に出会う民間企業の方々って、同じビジョンに共感して一緒に活動をしている方々なので、垣根が一切ないんです。同じビジョンを持っている人たち同士が集まり、自分たちの持っているリソースを持ち合ってプロジェクトを回していく方が、スムーズに進んで行くことが多い。

正直、総務省の田中でいる時にはたまに「お金しかみていないな」と思う人たちにも出会います。官民連携という言葉が先行しすぎると、おかしな方向に進んでしまう。肩書きではなく、まずビジョンで共感し合う人たちに出会うと、「官民連携という言葉そのものを無くした方が世の中綺麗にいくんではないか」と思います。

だから、民間企業とタッグを組む時、僕はまず「自分のビジョンを達成するために足りないリソースは何か」「足りないリソースを持っている民間企業はどこか」「その民間企業は自分たちのビジョンに共感してくれるのか」をある程度吟味した上で、アプローチをかけていきます。こうすると、うまくいくケースが僕は多かったですね。

行政が仕事をしたいと思う理由は「担当者の熱意」!?

平林:お話を聞きいていると、行政が企業と連携する時には「企業の見分け方」が大事になってくると感じています。民間企業の観点からみると「どんな行政と組むのがいいのか?」と悩んでいる方も多くいらっしゃると思うんですが、おふたりはどうやって民間企業を見分けているんですか?

田中氏:担当者同士の「熱量の交換」ですかね。もはや僕はそこでしか見ていないかもしれません。(笑)

もちろん企業のバックグラウンドや財政状況も大事ですが、「この人面白い。」と思った人と仕事をしたいと思っています。ただ「担当者の熱量が高いから」では、決裁は通りません。総務省ではよく自分達だけでは抱えきれない業務を一部民間企業の方へ委託することがあるんですが、とにかく書類審査が多くて、実際の人を見ることができないので、いざ決まった業者とお会いしてみたら・・・なんてこともあります。

だからこそ、僕はできる限りプレゼンの時間や、担当者と直接話す場を設けるようにしています。

佐久間氏:僕も「担当者の熱意」をみています。担当者同士が本気だと、波長が合うんですよね。三芳町と協定を結んでくださっている民間企業の方は皆さん、まずは僕という人間を面白いと思ってくれていて、さらにお互いに三芳町や地域を盛り上げていきたいという機運がフィットしているできることなんです。

本気と本気がぶつかり合って、お互いがお互いのやっていることに価値を感じ合えば、自ずと何かが生まれると僕は思っています。

平林氏:一部偏りはあると思いますが、行政のイメージに「熱量、本気、心意気、それが全て!」というのはあまりないので驚きですね。

佐久間氏:三芳町は、予算がたくさんあるわけではないので、それでも一緒に地域を盛り上げてくださる民間企業さんがいるのは、本当に心強いです。

「自治体」に入り込むのではなく「人」に入り込む

平林:参加者の方の中から「行政と関わるきっかけはどのようにしたらいいのか?」「入札以外からの関わり方はあるのか?」という質問がきていますが、こちらはいかがでしょうか?

平林 和樹(Kazuki Hirabayashi)氏 株式会社WHERE 代表取締役 / 新卒でヤフー株式会社に入社後、フルスタックエンジニアとして全社MVP、特許を獲得。その後単身カナダへ1年間渡航したのち、20社以上の中小企業のITコンサルティング、株式会社CRAZYでの活動を経て、株式会社WHEREを創業。各地域に中期滞在しながら地域の課題解決を支援し地域活性化に貢献し、現在は30地域以上と連携し日本各地に活躍の場を広げている。
平林 和樹(Kazuki Hirabayashi)氏 株式会社WHERE 代表取締役 / 新卒でヤフー株式会社に入社後、フルスタックエンジニアとして全社MVP、特許を獲得。その後単身カナダへ1年間渡航したのち、20社以上の中小企業のITコンサルティング、株式会社CRAZYでの活動を経て、株式会社WHEREを創業。各地域に中期滞在しながら地域の課題解決を支援し地域活性化に貢献し、現在は30地域以上と連携し日本各地に活躍の場を広げている。

平林:ちなみに民間企業側の僕の場合、最初会社を立ち上げた時は行政とのコネクションが全くなかったので、東京の家を解約して1年半ほどバックパック一つで日本全国を周りました。僕の場合は、基本的に自分がやりたいので、行政の方に「僕、これをやりたいので自分でやるんですが、一緒にやりませんか?」とお誘いをしています。

もちろんダメになることもあって、たくさん失敗もしてきているんですが、最近はご一緒できそうな行政を見極める感覚が研ぎ澄まされてきていて、これはあくまでも一つの基準なんですが、、

僕がやっている地域プロデュースの仕事は、担当課が多岐に及ぶ場合が多いんです。ある自治体では観光分野でもあるし、ある自治体ではまちづくり分野、ある自治体では起業推進分野ということもあります。だからこそ、僕が「こんなことをやりたい」という話をした時に盛り上がって、「それはうちの課の担当ではないからここではできないけど、担当課の人を紹介するよ」と繋げてくださる方がいると、僕自身もこの地域のために頑張りたいと思いますし、いい方向に進むことが多いんです。

反対に「それうちの課じゃないから、他の課に持って行って」と軽く流されてしまう行政だと、難しい。かなり精度の高い基準だと思っているんですが、どうですか?

田中氏:それはそうかもしれません。1人でもキーパーソンになる方と出会っていると、話を進めやすくなると僕自身も感じています。一方で、僕も佐久間さんも今回、「人ベース」の話をさせてもらっていたと思うんですが、行政の場合は担当者が変わった時に、どうするのかという問題があります。民間企業と行政の担当者が一緒に熱量を共有しあって、進めていても担当者が変わった瞬間に一気に話が萎んでしまうというケースを何度もみてきました。行政は2、3年の間で人事異動によって移動になる人がほとんどなので、そこをどうやっていったらいいのかは考えなくてはいけない部分ですね。

佐久間氏:僕も田中さんと同じで、地域のキーパーソンになっている行政マンを民間企業が見つけて、その人から関わっていくのがいいと思いますね。

三芳町なら僕。例えば、何かご提案をいただいて、どうしてもそれを三芳町で取り入れることができない場合でも、僕なら広報界隈のコネクションを使って相性の良さそうな地域をご紹介することができます。

そういう行政のキーマンは、他の地域にもたくさんいらっしゃって、Google検索とかで「おかしな公務員」と検索すれば、いろんな人が出てきます。長野県なら塩尻市の山田崇さんとか、高知県なら須崎市の守時健さんとか。霞ヶ関にも面白い行政マンはたくさんいます。

最初から行政に入り込もうとするのではなく、まずは人ベースで入り込んで、関係値をつくっていくのがポイントですかね。

「官民連携」という言葉ばかりが先行し、お互いの理解が足りないまま歪みができてしまっているいま。行政と民間企業それぞれの立場を経験した田中氏と佐久間氏のお話は、行政のイメージを180度覆すものばかり。

イベントの最後に、佐久間氏は民間企業と行政の違いについて話してくれた。

民間企業はスピード感を持って色々なサービスを提供していますが、エンドユーザーの生の声を直接聞けることはほとんどありません本当にエンドユーザーの声を聞きたいとなれば、わざわざ場所を用意して、ユーザーを集める必要が出てきます。その点、行政は常に住民との接点が多いので、良くも悪くもエンドユーザーの声を直接聞けますし、行政は中立な立場にいるので、よりリアルな声を聞くことができます」(佐久間氏)

行政には行政ゆえの「得意」と「苦手」がある。
民間企業には民間企業ゆえの「得意」と「苦手」がある。

だからこそ同じビジョンをみている両者が、お互いの強みを生かし合い、本当の意味での「官民連携」を行う未来は大きな可能性を秘めているのだ。

Editor's Note

編集後記

第4回目の開催を迎えたLOCAL LETTER LIVE。今回もイベントでしかお話しできない内容盛りだくさん。正直、イベントの途中で「記事に書ける部分はあるだろうか・・・」と不安に駆られてました。

LOCAL LETTER LIVEは、次の3つを大切にしているからこそ、登壇者の本音を聞くことができます。
・問いからはじめよう。答えは求めない
・オープンに話そう。タブーはなし
・場の温度感を大切に。台本なしのLIVE

さて、次回はどんな登壇者の本音が聞けるでしょうか。

これからもLOCAL LETTERへの応援をよろしくお願いいたします!

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