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LOCAL LETTER

ゆるキャン△聖地のローカルスーパー「セルバ」の裏側を取材。地域の生活者に愛される生き残り術とは

NOV. 17

拝啓、食を通じて地域の文化や伝統を広めたいアナタへ

テレビや雑誌で特集されることも増え、今話題となっている「ローカルスーパー」。地域に寄り添った取り組みを続けて食品を購入する場所以上の存在となっている、そんな魅力的なスーパーがここ山梨県にもありました。

その名は「山梨さえき(セルバ・おかじま)」(以下「セルバ・おかじま」という)。漫画・アニメ・映画などでキャンプブームの火付け役となった「ゆるキャン△」の聖地としても知られる同社で、地元に愛されるスーパーの秘訣について伺いました。

桑原孝太さん 株式会社山梨さえき(セルバ・おかじま・おかじま)取締役、商品開発部長 / 1985年山梨県富士吉田市出身。「こんな街イヤや」と大学から東京へ。大卒後コンサル会社勤務。地元を出て、日本を出た後、地元に戻って「この街イイやん」と180度考え方が変わる。食べ歩き、飲み歩き、人と逢うこと、しゃべることが好き。趣味、非日常。基本姿勢、「ハイ」か「イエス」か「ヨロコンデ」。4000日以上一日も欠かさずに生き方・考え方・働き方についての記録を公開中。

地元に愛されるローカルスーパー「セルバ・おかじま」とは?

地元山梨県を中心に地域密着型のローカルスーパーを展開するセルバ・おかじま。まずはセルバ・おかじまがどういったスーパーなのかを知るために、大切にされているビジョンについて伺いました。

「私たちセルバ・おかじまは、さえきセルバホールディングスグループの事業会社の一つとして、山梨県で地域密着型のスーパーを展開しています。セルバ・おかじまのビジネスは、一般的には食品販売として捉えられていますが、私たち自身は食品の販売をあくまでも目的を実現するための手段として捉えています

では私たちの目的は何なのかというと、それは『美と健康を届けること』。いつまでも美しく健康でいたいという人々が抱える普遍的な願いを叶えることが目的であり、そのための手段として食品販売を行っています」(桑原さん)

「また、もう一つ大切にしているのが『FOODは風土』という言葉です。ここ山梨県はもちろんのこと、日本各地に存在するその土地に根付いた優れた伝統や文化を、食を通してお客様の元へ届けたいと考えています」(桑原さん)

非合理的と考えられていることが合理的な方法に変わる

セルバ・おかじまを運営する「さえきセルバホールディングスグループ」は、山梨県の他にも東京都・神奈川県・島根県にそれぞれ事業会社を構えています。どこか一ヶ所に本社を据え、そこで全国のお店で取り扱う商品の価格や販売方法を決めるという方法が一般的ですが、同社ではあえて各地域に事業会社を分けているのだそう。その理由は「FOODは風土」という想いを実現するためにあるのだと桑原さんは語ります。

「東京本社で一括して商品の価格や販売方法を決めるというやり方は、私たちの実現したいことからすると非合理的であると考えています。これは新入社員に『FOODは風土』を理解してもらうためによくしている話なのですが……。例えば、山梨県で有名なうどんは何かという質問をしたときに、ここ富士吉田市ではほとんどの人が『吉田のうどん』と答えますが、山を越え甲府方面ではその答えは『ほうとう』に変わります」(桑原さん)

「同じ山梨県内でうどん一つをとってもこれだけの違いがある。日本の食文化というのはそれだけ豊かなものなのだと実感する話ですよね。だからこそ私たちは、本当の意味でのお客様に寄り添った食を届けるために、地域ごとにお店の在り方というものを決定するようにしています。一般的に非合理的であると考えられていることも、何を重要視するかによっては合理的な方法になるんです」(桑原さん)

生活者の声を反映したお店づくり

セルバ・おかじまが大切にしている「FOODは風土」の考え方は、店舗出店の方法や商品開発にも反映されています。

「私たちは新しいお店を出店するときにも、その地域で実際に生活している方たちが何を必要としているのかを意識するようにしています山梨県都留市にある都留文科大学の前に新店舗(現在改装中)を作った際には、大学に通う学生さんたちと協力してアンケートを取り、その結果をもとに取扱商品などを決めていきました」(桑原さん)

「既存の店舗でも同様に、推察や洞察だけではない『生の声』を大切にしています。例えば、食べ比べ会を開いて実際に人気のあった商品を大きく売り出すようなこともありますね。

また、ベテランの従業員のもとには自然とお客様からの声が集まってくるので、そうした情報もお店づくりや商品開発に活かしています。これは長く働いてくれている従業員、そして長く利用してくださるお客様があってこそできることなので、本当にありがたいことだと感じています」(桑原さん)

発見や驚きといった非日常を届けるコラボ商品の数々

山梨県富士吉田市にある県立ひばりヶ丘高校「うどん部」とコラボした「吉田のうどんだし MAX」や、名門八角部屋直伝の「ちゃんこ鍋つゆ」など、セルバ・おかじまには数多くのコラボ商品があります。

そうしたここでしか購入できない商品も地元で愛される魅力の一つ。こうしたコラボ商品の開発・販売の背景には、「美と健康」や「FOODは風土」のほかに、お客様に非日常を届けたいという想いもあると桑原さんは教えてくれました。

「生活をする上でスーパーでの買い物を当たり前のことだと考えられる人がいる一方で、スーパーに行くこと自体に苦手意識を持っている方々もいらっしゃいます。だからこそ私たちは、そうした日常の中で少しでも発見や驚きといった非日常を届けられるような存在になれればと考え、行動しています。

日常生活の中にある苦を少しでも楽にできれば、これ以上誇らしいことはありません。セルバ・おかじまでしか取り扱っていない限定商品やコラボ商品はそうした非日常的を演出するための一つでもあるんです」(桑原さん)

地域の魅力を再発見するようなコラボ商品の中には、山梨県のふるさと納税返礼品となっている商品もあるのだそう。山梨県産のフルーツを贅沢に使った「山梨県産クラフトエール」もそのうちの一つ。爽やかな香りが特徴のシャインマスカット、ほのかな酸味が心地良い巨峰、フルーティーな甘みが後を引く桃と、3種類あるこちらはお土産としても大人気です。

そんな魅力的なコラボ商品の中でも特に反響が大きかったというのが、山梨県の女子サッカークラブチーム「FCふじざくら山梨」とコラボしたお弁当。取材時には第9弾まで出ているという人気ぶりでした。

「FCふじざくら山梨は、2018年に山梨県で創設された女子サッカークラブチームです。地元を盛り上げる皆さんと何かできないかという話から、『現役アスリートが食べたいお弁当』をテーマに商品の開発を行いました。お弁当としての味を評価してもらっているのはもちろんのこと、FCふじざくら山梨を応援しようという地元ならではのあたたかさを感じていただけているのではないかと思います」(桑原さん)

異業種とのコラボも歓迎!セルバ・おかじまが目指すローカルブランドとは

現在も様々なコラボ商品を開発中だというセルバ・おかじまそんなセルバ・おかじまが今後実現していきたいと考えているコラボレーションについて桑原さんに伺いました。

「今後は、セルバ・おかじまが大切にしている『美と健康』や『FOODは風土』を伝えられるような商品をもっと増やしていきたいと考えています。特に後者の話で言うと、地元山梨県はもちろんのこと、日本全国のローカルな魅力を見つけて届けていくのが目標です。

スーパーやコンビニなどに行くと多くのPB(プライベートブランド)商品がありますが、私たちはそれを『ローカルブランド』として発信していきたいと考えています。セルバ・おかじまに行けば日本全国の良いものと出会える、そんな商品を一緒に作っていきたいですね」(桑原さん)

セルバ・おかじまだからこそできることを実現しながらも、「私たちは地域と生活者の仲介役をしているだけなんです」と遠慮がちに語る桑原さんの姿に、多くのコラボ商品が生まれ、そして地元に愛され続けているセルバ・おかじまの秘訣を見たような気がしました。

アイデアの作り方は組み合わせ。異業種などから提案をもらってもそれはまた新しい価値があると考えています。だからこそ、何かに誘っていただいたり提案していただいたりした場合、基本的には『ハイ』か『イエス』か『ヨロコンデ』しか言わないようにしているんです。
桑原 孝太 株式会社山梨さえき

食文化をはじめとした地元の魅力を全国に広めたいと考えているアナタへ。地域の生活者に誠実に寄り添うスーパーと新しい取り組みを始めてみませんか?

Editor's Note

編集後記

「人生の半分は仕事しているのだから、せっかくなら楽しく仕事をしていたい」と語っていた桑原さん。その言葉の通り、取材中も常に笑顔で前向きなアイデアを教えてくださいました。中でも印象に残ったのが、「美と健康を届けるセルバ・おかじまだから、店舗の隣にフィットネスジムを作るのも面白いと思うんですよね」というお話。あくまでもアイデアのひとつということでしたが、そういった柔軟な考えが様々なコラボを実現させている秘訣なのだろうなと感じる一幕でした。

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