サウナ × 地域
今や社会的ブームのひとつにもなった、サウナ。“ととのう” をキーワードに、さまざまな方から愛されるムーブメントとなっています。
今回は、そんなサウナをこよなく愛し、かつ、その魅力と “地域” を掛け合わせる活動を行っている、野田 クラクションべべー氏(株式会社LAMP / The Sauna 支配人)、林 克彦氏(北海道ホテル 取締役社長)、橋本 健太郎氏(株式会社スキーマ / 川とサウナ 川長)、岡本 昂之氏(JAPAN SAUNA-BU ALLIANCE 共同代表 / 日本航空 Web販売部アシスタントマネジャー)の豪華4名のトークをお届け。
まさしくサウナのごとく、熱さあふれるお話を聞くことができました。ぜひLOCAL LETTER読者のみなさんも、その熱量を確かめてみてください。
岡本氏(モデレーター:以下、敬称略):今日はよろしくお願いします! 一人のサウナ好き・サウナーとしてみなさんの話を聴けること、とっても楽しみです。
まずはそれぞれ自己紹介から行きましょうか。私は、日本航空に勤めている岡本といいます。日本航空には「サウナ部」というのがあり、かなり力を入れているセクションのひとつ。その発起人として、320名以上もの部員とともに、サウナを通じてさまざまな地域へ出かける「サ旅」という活動をおこなっています。
野田氏(以下、敬称略):わたしは長野県信濃町にある『The Sauna』を運営していますが、その他にも奈良県の『ume, sauna』のプロデュースに関わるなど、各地でサウナを「つくること」を続けています。このトークセッションでも、「つくる側」としてのノウハウを伝えていけたらと思っていますので、よろしくお願いします!
林氏(以下、敬称略):僕は北海道の「十勝」という地方で、ホテルを運営しています。2019年6月には、ホテルのサウナを “フィンランド式” と呼ばれる仕様に変更し、本格的なサウナを楽しんでいただけるようにしました。
言わずもがなサウナが大好きで、今では、十勝で『十勝サウナ協議会』なんていう集まりを作ってしまうほど。十勝にある5つのホテルと協力し、その全で “フィンランド式サウナ” を楽しめるように設備を整えたり、ノウハウを共有したりしています。北海道の地から、サウナを通じて、地域おこしをしていきたいと考えていますので、今日はよろしくお願いします!
橋本氏(以下、敬称略): 僕は、制作会社で働く傍ら、“サウナー” として『川とサウナ』というチームを組んでいます。持ち運び可能な「テント型サウナ」を使い、さまざまな川の側でサウナを開く活動をしていて、自然を楽しみながらサウナに入り、水風呂の代わりに川へダイブ。もちろん外気浴(外の風を浴びてリラックスすること)は川沿いで。そんなアウトドアスタイルのサウナを日々おこなっています。雪山でサウナをやったことなんかもありました(笑)。今日はみなさんとお話できることがすごく楽しみです!
岡本:皆さん、ありがとうございます! 皆さんのお話をお聞きしながら、なんだかふと思うのですが、やっぱり僕らはひたすらにサウナを愛しているんだなぁ、って。では、改めて今日はよろしくお願いします!
岡本:では最初に、みなさんの「サウナと関わるようになったきっかけ」について聞いていきたいと思います。まずは『川とサウナ』の橋本さんから!
橋本:僕がサウナの魅力にどっぷり浸かるようになったきっかけは、仲良しの先輩の存在ですね。彼が、東京都・下北沢のイベントスペース『下北沢ケージ』で、野外にサウナを作ったんです。2年前ぐらいかな。たまたまお誘いいただく機会があって。
これは僕の考えなのですが、サウナーの人って、きっと「師匠」がいるんですよね。身の回りにいるサウナーが、サウナの入り方や楽しみ方を教えてくれるような気がしていて。その先輩が、僕にとっての「師匠」でした。
岡本:たしかに、サウナに目覚めるきっかけって、身の回りの誰かが影響してくれることかもしれませんね。
橋本:その先輩のおかげでサウナを楽しめるようになったのは、とっても嬉しいことで、今では週に5回ほど行っています。テレワークが推奨されるようになって、このTシャツの胸元にもあるように『仕事中にサウナ』という言い訳です(笑)。
橋本:サウナへ行って、そこで仕事をして、また違うサウナへ。そこでも仕事をして。今はデスクを完備したサウナが増えているんですよね。コワーキングスペースのようになっているところもある。僕は所沢の『ザ・ベッド&スパ』というところへ行っているのですが、とにかく仕事がしやすいんですよ。仕事に煮詰まったらサウナで休憩。ほとんどサウナばっかりですけどね(笑)。
岡本:うんうん。すっごく共感します。最近は特に「コワーキングスペース的サウナ施設」が増えましたよね。僕も両国の『両国湯 屋江戸遊』というサウナへ行って仕事をすることが多いです。橋本さん、ありがとうございます!
では次に、野田さん。サウナにハマったきっかけって、どんなものだったんでしょうか?
野田:僕がサウナにハマったのは、上司から命じられた『日本一周してこい!』という一言がきっかけですね。
岡本:日本一周……!?
野田:僕はWeb制作会社に勤めているのですが、その記事企画で日本一周をする機会があって。その途中に上司とテレビ通話で会議をしていたところ、彼から『べべ、太ったよな?』と言われたんです。日本中を回っている間に、どうやら体重がかなり増えていたようで。『今どこにいるんだ?』と聞かれ「いまは四国にいます」と答えたら、今考えればちょっと失礼な話なのですが、『四国に痩せられるイベントがあるぞ』と上司から言われたんですね。それが、「お遍路」でした。
岡本:ものすごい勢いで話が進んでいきますね……!
野田:「お遍路」というのは、20kgぐらいの荷物を背負ってひたすら歩くもの。歩きお遍路ですね。真夏にずっと歩き続けて、お風呂にも入れない日々が続いたんです。そこで、今でも忘れない高知県田野町の『たのたの温泉』に立ち寄って。
当たり前ですが、普段温泉に行く時には「浴槽に浸かる」ということをしていたんですが、その当時は日焼けがすごくて、まったくお湯に浸かることができなかった。痛くて痛くて。なので、それをクールダウンしようと、水風呂に入ってみたんです。そしたらもう、ものすごく気持ち良くて。あれが僕の初 “ととのい(サウナ・水風呂・外気浴を経て生まれる快感)” でしたね。
岡本:まさかの、日焼けからの “ととのい” (笑)! サウナには入られたんですか?
野田:サウナにも入りました。サウナ室では、安室奈美恵さんの『Can you celebrate?』がオルゴール音で流れていて。今でも本当に忘れられないです。サウナによって感覚が研ぎ澄まされていたのか、めちゃくちゃ良い音で聴こえたんですよ(笑)。
で、次は外気浴。外に出てみたら、川のせせらぎが耳に入ってきて、木漏れ日が爽やかに差し込んできて、「うわあ、今、生きてる」って思ったんです(笑)。これが僕の初サウナ体験ですね。
岡本:面白すぎてずっと笑ってしまいました(笑)。でもたしかに、サウナには「感覚を研ぎ澄ましてくれる」という側面がありますよね。
野田:まさにそうですね。しかも、何より「サウナ後のお酒」がうまいったらない。
岡本:わかります……! サウナのあとのお酒って、なんであんなに美味しいんでしょうね(笑)。
では最後に、十勝にてサウナ文化の発展を支えている林さんのサウナ遍歴と、ハマっていったきっかけについて教えてください!
林:実は僕、サウナが大っ嫌いだったんですよ。
岡本:えっ……?
林:本当に大っ嫌いでした。サウナも水風呂も。それが2年と少し前ぐらいの話ですね。今ではもちろん大のサウナ好きです。安心してください(笑)。僕がサウナにハマったきっかけは、「ととのえ親方」ですね。僕がサウナ界のレジェンドだと思っている方で。
飲み会で初めてお会いした際、名刺をお渡ししたタイミングで『プロサウナーの松尾大(ととのえ親方の本名)です!』と言われ、ウッと思いました。初対面でしたが、「僕はサウナが大っ嫌いで、今後一切会うことはないと思います」と自分から言いましたね(笑)。
岡本:すごい言葉ですね………。それから、なぜ林さんはサウナーに……?
林:すっごく眠れるんですよ。サウナに入って、“ととのう” 状態になると。ととのえ親方から初めてサウナに誘われて、イヤイヤながらもご一緒した際、最初は喉が痛くてすぐにでも出ようかと思ったのですが、フィンランド式の “ロウリュ(熱した石・サウナストーンや壁に水をかけて湿度をあげること)” を体験したところ、喉の痛みがまったく苦じゃなくなって。挙句サウナを出てみれば、その日はぐっすり快眠。
林:当時は12社ほどの会社を経営していたのですが、正直、あまり上手くいっていない事業のことを考えると、どうしても眠れないことが多くあったんです。でも、サウナに入ればすっかり眠れる。その体験から、今ではサウナ施設を運営するほどになってしまいました(笑)。昨年はトータル502回、サウナへ行くぐらいでしたね。実は今日も、このイベント前にサウナへ行ってきたんですよ(笑)。
岡本:今日も(笑)!?
林:今でも年に480回から500回ぐらいのペースでサウナへ行っていますね。なんせ、自社(ホテル)にありますから。それぐらい大好きですね。
※本記事は2021年2月に開催された、地域経済活性化カンファレンス「SHARE by WHERE」の登壇内容をレポート記事にしたものです。
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「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。
Editor's Note
“やっぱり僕らは、ただひたすらにサウナを愛している” という岡本さんの言葉、先輩から受けた大きな影響により突き動かされるようにサウナを好きになったという橋本さん、まさかまさかの出来事からサウナへのご自身のサウナ愛に気づいたという野田さん、そして、もともとは大嫌いだったというサウナをご自身の事業にしたという林さん。
三者三様の、深い「サウナ愛」が感じられるセッション。ごくシンプルな言葉ではありますが、とにかく後編が楽しみでなりません。
NOZOMU MIURA
三浦 希