サウナ × 地域
今や社会的ブームのひとつにもなった、サウナ。“ととのう” をキーワードに、さまざまな方から愛されるムーブメントとなっています。
今回は、そんなサウナをこよなく愛し、かつ、その魅力と “地域” を掛け合わせる活動を行っている、野田 クラクションべべー氏(株式会社LAMP / The Sauna 支配人)、林 克彦氏(北海道ホテル 取締役社長)、橋本 健太郎氏(株式会社スキーマ / 川とサウナ 川長)、岡本 昂之氏(JAPAN SAUNA-BU ALLIANCE 共同代表 / 日本航空 Web販売部アシスタントマネジャー)の豪華4名のトークをお届け。
まさしくサウナのごとく、熱さあふれるお話を聞くことができました。ぜひLOCAL LETTER読者のみなさんも、その熱量を確かめてみてください。
岡本氏(モデレーター:以下、敬称略):ではここで、そもそもサウナ発祥の地・フィンランドでは、なぜサウナが流行したのか。引いては「地域とサウナのあり方」について話していきましょう。
林氏(以下、敬称略):僕はフィンランドのサウナを経験したことがあるのですが、とにかく「どこにでもある」ということに驚きましたね。各々の家にもあるし、会社なんかにもあるんです。どれくらいの頻度で入るのか、と聞いたところ「毎日」と。それほど日常に寄り添ったものになっているんだなぁと驚きましたね。
橋本氏(以下、敬称略):僕もびっくりしました。どこにでもあるじゃん、って(笑)。なかでも特に驚いたのが、「ソンパサウナ」というものです。24時間、いつでも無料で入ることができる、いわば「無料の公衆浴場」。なかなか日本ではみられない光景で、本当にびっくりしましたね。
野田氏(以下、敬称略):僕が運営している長野県の『The Sauna』の話になってしまうのですが、特に「コンセプト」と「人」を意識していて。しっかりとしたコンセプト、たとえばソンパサウナの「無料」であったり「大衆文化」であったりのようなものがあれば、そこには自然と人がついてきてくれる。サウナはサービス業だと思っているんです。
だからこそ、「人」も大切になってくるんですよね。『あの人がいるから行こう』と思っていただけたら、それは体験としてとても良いものになりますよね。それは地域も同じ。そこに誰かがいるから行く、という「体験」としての意味合いがとても重要なんだろうなぁと。
橋本:同感です。僕たち『川とサウナ』は、“サ飯” という文化を大切にしていて。サウナ飯ですね。サウナに入ったのちに食べるご飯って、本当に美味しいんですよ。それがひとつのサウナの楽しみ方でもあると思う。
たとえばどこかの地域に行って、温泉でサウナに入り、その土地の方々から話を聞くんです。「どこか美味しいお店ってありますか?」と。そうすれば、サウナ自体も楽しめるし、その後のご飯も楽しむことができる。すべてがまるっと「体験」として楽しいものになるんですよね。
林:僕にはすごく印象に残っているサウナがあって。僕たちの『北海道ホテル』が位置する十勝に『十勝しんむら牧場』という場所があるんですが、そこでは、“ミルクサウナ” というものが生まれたんですよ。十勝がほこる「牛」を眺めながら、サウナに入ることができる施設で。水風呂には、牛が水を飲むために使う「桶」をあしらったものを使ったり。地域性を体験としてサウナに落とし込む楽しさもありますよね。
林:一度、北海道の地域性を推してみようと思い、 “ロウリュ(熱した石・サウナストーンや壁に水をかけて湿度をあげること)” の水を帆立の出汁にしたことがありました。ただあれ、お腹すいちゃうんですよね(笑)。「ロウリュの水を牛乳にして、まさにミルクサウナをやってみよう!」という声もありましたが、それはやめましたね(笑)。
岡本:それは本当の意味でのミルクサウナですね(笑)。たくさんの事例が出てきましたが、やはり共通するのは「地域性」と「体験」。サウナをただの「ブーム」として捉えるのではなく、それをしっかりと地域に繋げてあげることで、独自性を高めていくこと。その大切さがわかりました。
岡本:では最後に、サウナを愛するみなさまから一言ずつメッセージをいただいて、このセッションの締めとしましょう!
林:僕は、正直、お金をたくさんかければ「良いサウナ」はできると思います。でも、そこにはあまり魅力を感じていなくて。“そこならではの価値” を、サウナの力を借りて作っていきたいなと思っています。フィンランドは三年連続幸福度世界一の国。それはきっと、いや、間違いなくサウナによるものだと思います。まずは北海道から、サウナのさまざまな文化を作っていきたいですね!
橋本:アウトドアサウナを中心にたくさんの地域がつながっていけたら良いな、と思っています。サウナーって、オープンマインドなんですよね。みんな良いサウナに入りたいから、誰もが知識や経験を出し惜しみしないんです。ただただサウナが大好きなだけ。ポジティブな気持ちで、さまざまな地域の方と肩を組んでやっていきたいなぁと思います。
野田:行政とのやりとりや申請など、ハードルは数多ありますが、乗り越えるのはそう難しいことじゃないと思っています。コンセプトと熱い想いがあれば、サウナは作れる。たくさんのサウナが増えていくことも嬉しいですが、やっぱり「良いサウナ」がどんどん地域ごとに増えていってほしいな、と思いますね。
岡本:これからも、サウナーとしての繋がりを意識しながら、それぞれの地域が肩を組んで頑張っていきましょう! 僕たち日本航空も、その手助けとしての「サ旅(サウナ旅)」を推進していきます。みなさん、本日はありがとうございました!
※本記事は2021年2月に開催された、地域経済活性化カンファレンス「SHARE by WHERE」の登壇内容をレポート記事にしたものです。
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「偏愛ローカリズム」をコンセプトに、日本全国から “偏愛ビト” が集い、好きを深め、他者と繋がり、表現する勇気と挑戦のきっかけを得る場です。
Editor's Note
筆者自身、正直、サウナに対する興味や関心はさほど強くありませんでした。ただそれは、このセッションを聴くまでの話。ビジネスとして、文化として、そして何より「楽しみ」として。それぞれの登壇者が捉える「サウナ」の形に触れることができ、心のそこから湧き出るサウナへの興味が止まりませんでした。
読者のみなさまにも、ぜひ、まるでロウリュのように暑い(熱い)「地域×サウナ」の魅力を、どんどん深堀りしていっていただきたいと思います。
NOZOMU MIURA
三浦 希