YAMANASHI-OKAYAMA-WAKAYAMA
山梨・岡山・和歌山
※本記事は、新しい働き方LABが主催したオンラインイベント『豪華ゲスト3名による “Talksession”「地方で働く」を考える!地方で働くって実際どう?』をレポートにしています。
2023年6月23日に開催された本トークセッションイベント。「地方で働くって実際どう?」をテーマに、移住やUターンの成功や失敗、リアルな生活費や働き方などについて、地方で活躍している3名の登壇者が語りました。
「自分らしい働き方」を模索できる時代。その中で、「ノマドフリーランス」という、日本ではまだ新しい働き方に加え、地方移住をして生活コストを下げ、フリーランスとして働いていく方法に着目。
実際に移住して地域で働いている人、Uターンで地域に戻ったフリーランサー、そして、もとから生まれた地域に居続けるフリーランサー。様々な視点から地域での働き方を紐解きます。
シモカタ氏(以下、敬称略):シモカタセイジと申します。ブランディングディレクターとして働いていて、いま和歌山に住みながら日本中を巡っています。もともとは会社員をやっていて、35歳の時にUターンで地元に帰ってきて独立しています。よろしくお願いいたします。
北田氏(以下、敬称略):山梨県の富士吉田市に移住転職をした北田萌と申します。私は移住、転職した身なのですが、実は移住するまで富士吉田市には1回も来たことがありませんでした。Googleストリートビューを見て、『あ、このまちで生きられる』と思って移住、転職を決めたという、ちょっとレアなケースですね。
中新氏(以下、敬称略):中新(なかにい)と申します。大学2年生からフリーランスとして働いています。地元が岡山県で、今も岡山に住んでいる地方在住者の立場です。最近はコピーライターや、地域の高校や大学向けにキャリアにまつわる講演や、表現力についての講座を開いています。
シモカタ:最初のテーマは 「地方移住のリアル」です。これについて語っていただきましょう。
北田:いろいろな面でのリアルがあると思うんですけど、まずは生活費がめっちゃ下がったっていうのがありますね。家賃が4LDKで3万円なんです。
綺麗な家なのに家賃が安い。しかも富士吉田市って、富士山の麓で水もめちゃくちゃ安くて。夫と2人暮らしで、水道代が1ヶ月で2,000円いくかいかないか。食べ物も大抵もらえるので、都内にいた時と比べると食費も1/3くらいになっています。なので、めちゃくちゃ投資にお金を回せます(笑)。
シモカタ:確かに、生活費がめちゃくちゃ安く済むっていうのはわかる気がしますね。
北田:あとは「自分ができるかも」といった仕事を任せてもらいやすいですね。例えばホームページ制作とか。地方ってプロばっかりじゃないので。
シモカタ:プロに頼むほどの予算はないけど、なんとかしたいっていう人が結構いますもんね。
北田:私はいま大学院でMBA(経営学修士)も学んでいるので、「経営のこれを見てほしい」と依頼されることもあります。そういった意味では実践練習を積めます。しかも頼られる分、ちゃんと勉強しようというモチベーションにもなりますね。
中新:北田さんの努力もあると思うのですが、偶然の選択がすごくいい感じに回ってますよね。ポテンシャルを引き出されている感じがすごく羨ましい。
北田:私は東京にいたら埋もれてしまって、「何でもないただの人」だと思うんですが、地方に来ると、自分の希少価値が上がって、自己成長にも繋げられるという感覚はありますね。
シモカタ:役立てるチャンスが多くあるから、順調に育ちやすいですよね。
北田:大企業のリモートワーカーの方も富士吉田に来るのですが。能力はあるはずなのに、自己肯定感が低い人がいます。ですが、そういう人も神様みたいに扱われるんですよね。自己肯定感を上げる機会にはすごく恵まれていると思います。
シモカタ:実際にこういう人が地方にいるメリットはあるし、頼る側からしても近くに頼れる人がいるんだっていう嬉しさもありますね。北田さんは全く繋がりがないところで地方に入ってきて、今は周りの方との関係性を築かれていると思うのですが、そこに至るまで悩んだことはありますか?
北田:私の場合は、スーパーとかいろんなお店にいる時に、北田萌目撃情報がたくさん出てくることですね。「昨日の12時に干し芋を買い占めていたよ」とか(笑)。
めちゃくちゃ嬉しいんですけど、落ち着かないので『見てもそっとしといて』と言いました。
シモカタ:素晴らしいですね。それを言える人は少ない。
北田:そこでモヤモヤして「やっぱり地方無理だ」と出ていく人もいると思うのですが、自分にとって価値観が合う人が近くにいることが重要なので、自分の意見は言っていいし、それは大事なことだと思っています。
シモカタ:地方の人と言っても、地方にもいろんな人がいるわけで、一概に言えないはずなのに、なんとなく一概に言っていたなと、今の話を聞いてちょっと反省しました。
中新:僕は地方に居続けている身なのですが、確かに僕たち地方に住んでる側の人間としても「都会から来る人ってこんな人だろう」という勝手な決めつけがある気がします。しっかり話してお互いのことを知らないと良い関係は築けないですよね。
シモカタ:僕はUターンして35歳で地元に戻ってきた人間ですが、「都会からきた人」という目で見られることは結構ありました。あと仕事の単価とか仕事の価値観とか、「こんなに常識が違うのか」といったところで凹んだことがあったんです。お2人はどうでしたか?
北田:あります。都内だとこのやり取り電話で5分で終わるけど、2時間かけて対面打ち合わせとかあるじゃないですか。最初は「非効率だな」と戸惑ったのですが、2年経った今だからわかるんです。今では正当な対価の仕事を任せてもらえるようになったんです。
シモカタ:わかります。月に1回来て、2時間くらい仕事の相談をして帰るのに、何の仕事の依頼もなかった人から、5年後くらいに300万円の仕事をもらえるみたいな(笑)。
北田:時間の浪費ではなく「これは投資である」という考え方が、いまキテますね。
シモカタ:確かに、時間の投資の概念が、地方と都心とで文化として違うのは確かにあるかもしれないですね。
中新:僕は20歳の頃から丸10年フリーランスをやってきているのですが、当時は「中新って何やってんだ」と言われることがすごく多かったです。まだ全然「フリーランス」という考え方や、それこそ「リモートで働く」なんていう考え方も浸透していなかったので。
北田:想像しただけで、恐ろしい風当たりがあったんじゃないかなと思いました。
中新:最初は「そもそもフリーランスって何」という説明からしなきゃいけなかった。「何の文章を書いてんの」と言われた時に、つくったものを見せていたら、だんだん伝わっていきました。
シモカタ:「フリーランス=怪しいことや悪いことをやって儲けている」、もしくは「フリーターみたいにフラフラしている」という風に最初は見られますよね。
北田:でも家を建てたしご結婚もされて子どもさんもいらっしゃるので、説得力ありますよね。
中新:いま世の中では結婚を選ばない人たちも増えていますが、僕としては、「結婚して子どもも生まれたら周囲からの信頼度が増してきてる」ということを肌感として感じます。
シモカタ:いまだに「結婚して家を建てて家族を養ってなんぼ」みたいなことを言われることもありますもんね。
シモカタ:僕の場合は、法人化して行政の仕事をやり出したり、商工会議所のイベントに登壇させていただいたりしたくらいから、周りからの見方がちょっとずつ変わってきて、「こいつすごいやつだったんだ」という距離ができちゃった感じがしますね。
北田:私も「都内から来たちょっと気取ったやつ」という感じから「めちゃくちゃ仕事できる」という風に見方が変わりましたね。だから、自治体などは積極的に仕事を振り分けてほしいなって思います。
中新:行政といろいろと仕事している中で、逆に僕たちから行政に依頼できる仕事もあるじゃないですか。そういうところに地域のフリーランスの人たちを積極的に上手く巻き込んでいったりできるといいのではないのかなと。
シモカタ:そうですよね。中新さんは授業もやっていますもんね。
中新:最初の数年はぶっちゃけ声がかからなかったんです。でも、ちゃんと継続してSNSで発信したり、大学のゼミの先生方にも「今こういう仕事やっています」と発信したりしていたら、「大学のパンフレットに載ってくれよ」と声がかかるようになりました。絶えず発信していくことは、フリーランスとして大事ですね。
チャット欄にきた質問:自分がやっていることを周りに伝えたり、地域の方と馴染んだりするために、具体的にはどういう経緯があったのでしょうか?
シモカタ:多分その答えのひとつが、いま中新さんがおっしゃってくださったような“発信”ですよね。
地域のご年配の方や、Webに疎い方に対して、自分が書いた記事を印刷してラミネートにして、お渡しして見せたりもしていました。
最初は商工会の「若手経営者の会」のようなところで、地元のいろいろな企業の方々の名刺をつくったり、アピール写真を撮ったりすることを担わせてもらったり。地元のデザイン会社と広告代理店へ資料をもって、地道に足を運んだりもしました。あとは、すでにコミュニティがあるであろうコワーキングスペースに行って作業をしたり、イベントに参加したりしてみると、いろいろな人と繋がれて良いのかもって思いますね。
地域のリアルを語り、地域ならではのあるあるも飛び出し、ぶっちゃけトークが飛び交う中、終始なごやかな雰囲気で話が進行した今回のオンラインイベント。
後編では、「地域で働くことのリアル」や「地域で働くケーススタディ」について語り合ったレポートをお届けします。
Editor's Note
地域ならではの利便性、そして地域ならではの仕事の違い、そしてむずかしさがわかる内容となっていました。「ただ家賃が安いから」「地方だとプロが少ないから」という、メリットだけをみてフリーになるのは難しいですが、それでもなおチャレンジしてみる価値があるのではないかと思わせられるようなイベントでした。
YUYA ASUNARO
翌檜 佑哉