NEBA, NAGANO
長野県根羽村
林業で地域おこしを続ける村の次なる挑戦は、森林を活かした教育――。
学校の教育で学ぶことと、社会で必要とされるスキルには乖離が大きくある。そんな感覚をあなたはもっていないだろうか。
現在、国の教育方針を定める文科省も同じ課題感をもっているのだろう。2020年。教育改革により、文科省の教育要領が変わる。次のテーマで重要視されるのは「不確実な未来を生き抜く力」だ。
そんな中、「森林×教育」をテーマにまさに「生きる力」を育む教育環境をづくりに挑むメンバーが弊社(株式会社WHERE)にいる。1年前に長野県根羽村へ移住し、総務省の地域おこし企業人として村全体のプロモーションとブランド戦略立案・実行をメインに行う杉山泰彦氏。
これから構想をつくるスタートアップフェーズである杉山氏は、現在事業構想を他の地域の成功事例を参考にしながら作り上げているという。その中の相談相手の1人が、教育を通じた地域おこし事業を岩手県陸前高田市で8年間続け、NHKらが主催する「あしたのまち・くらしづくり活動賞」で最高賞の内閣総理大臣賞を獲得したNPO法人SETの理事長・三井俊介氏だ。
2020年3月23日(月)19:00から、杉山泰彦氏と、SET理事長三井俊介氏らと根羽村の教育事業の「事業ブレスト会議」を実施することを決定。この会議を誰でも参加ができるオンラインセッションとして生配信していきます。
1人1人の創造性と柔軟性が求められる時代に、自然をフィールドに使った教育で、一体どんなことが展開できるのか。
ここからは、事業ブレスト公開会議実施前に、杉山氏が見据える根羽村の未来を少しだけご紹介します。
今から約1年前、長野県根羽村に夫婦で移住し、根羽村の地域おこし企業人として活動を開始した杉山氏。村全体のプロモーションとブランド戦略立案・実行をメインに、根羽村が誇るトウモロコシや、トマト農家のプロモーション、古民家を活用したゲストハウス「まつや邸」の運営など、幅広い業務を担当してきた。
「1年間様々な活動を続ける中で、根羽村が最も飛躍するのは “森林の文脈を伸ばすこと” という結論に辿り着きました。いかに根羽村の森林が美しく、重要であるか、源流を守っていく森林の偉大さが伝われば、村の全てのブランドが引き上がると確信していて、これからは、森林にフォーカスを当てていこうと決めたんです」(杉山氏)
人口900人の長野県根羽村は、110万人の生活用水「矢作川」の源流が流れる村。全世帯が森林組合員として森林を守り、森林と共に生きているからこそ、村民にとって森林の文化は深い。
「これから根羽村でやろうとしている事業の1つとして、森林を管理する活動資金を “教育分野” から引っ張ってきたいと思っています。綺麗な森林を使って、森林の教育プログラムや研修プログラムを実施することで資金をつくり、その資金でさらに森林を綺麗にする、そんな循環を生み出せないかと」(杉山氏)
木材の値段がどんどんと引き下がり、既存の林業(山から樹木を伐採し、木材を生産する)は、“補助金頼み” といわれ、木材を製材して販売する製造販売モデルは、価格競争になることがほとんど。
「既存の事業もとても重要ですが、ここだけを収入源にしたら、持続することはできません。だからこそ、森林から木を引っ張ってきてお金にするのではなく、森林があるという状態で、どうしたらお金を生み出せるかを考えています。そんな中、すでに根羽村が実績を持っていた “森林×教育” に注目したんです」(杉山氏)
根羽村はこれまで、箸/わっぱなどの木製品作りから、林業体験や間伐体験などの体験プログラム、愛知県安城市の山村留学の実施や、愛知教育大学と連携した「動く木のおもちゃ」などの開発を進めており、 現在でも年間50回、1万人以上に子供向けに木の啓蒙活動を行う実績をもつ。
「この “森林×教育” の領域を伸ばしていくことがとても重要だと感じていて、来年度からは “森林資材を生かしたソフト事業” の立ち上げにコミットしていく予定です。まだ詳しいことはお話しできませんが、環境教育の事業づくりなど、森がある状態でお金を作っていく仕組みを生み出していきます」(杉山氏)
すでに村内だけでなく、村外の民間企業や個人を巻き込み、強力なチームをつくっている杉山氏。今回の事業ブレスト公開会議ではその企業の一つであるSETと、2020年3月23日(月)19:00より、地域で教育事業を立ち上げる事業ブレストを実施・公開していく予定だ。
「これからの時代で生き抜く力を身につける教育を考えた時に、根羽村という環境ではどんな人を育む教育ができるのかを考える必要があると思っています。今回の公開会議では、“教育を通じた地域おこし” をテーマに、SET代表の三井さんや中高生向けキャリア教育事業部部長の上田さんをはじめ、参加者の皆さんからも意見や質問をもらえたらなと」(杉山氏)
教育事業を地域で立ち上げていったプロセス、地方・田舎でしかできないプログラム例、なにより長年に渡って地域×教育を展開してきた SETが描く、今の時代に教育で培うべき力。これらを話し合いたいという杉山氏。
その彼が、この事業を展開するにあたって大切にしたい考え方に “インサイドアウト*1” がある。根羽村で「森林×教育」のサービスを展開するなら、「地域外の人に使ってもらう前に、まずは根羽村の人たちが一番体現している状態をつくりたい」という想いだ。
「実は来年度から根羽村の小中学校が統合し、小中義務教育学校という9年生の学校になりますので、プログラムの見直しがあるんです。村内には高校がないので、根羽村の教育の大きなテーマの一つに “15歳までの自立” があって、高校生から一人暮らしや実家から離れた生活をする子どもたちには、どんな能力スキルが大事必要なのか、というのが村として取り組む教育テーマだと思っています。ここを深めるプロセスが、サービス設計にも繋がると考えています」(杉山氏)
さらに杉山氏は、この事業ブレスト公開会議でのゴールを決めていた。
「私や参加者の皆さんが持っている課題感をぶつけながら、お互いに話をして、最終的に根羽村でどんな可能性が見出せるのか、明日からの動き方の方向性を決めたいと思っています。ただ単に話して終わり、ではなく、具体的に何をやるかまで決めて終わらせたい」(杉山氏)
まだまだ根羽村の教育事業はゼロベースに近いものの、地域づくりのど真ん中で、プロセスづくりを行なっている杉山氏が、どんなことを考え、どんな経緯で立ち上げ、どんな人たちを巻き込んで、根羽村の教育事業を作り上げていくのか。
森林 × 教育のビジネスが生まれる瞬間に立ち会いたい・参画したいと思う方や、通常見ることができない事業ブレストを覗きたいというアナタは、ぜひ参加してみてはいかがだろうか。
*1 インサイドアウト
内から外に向かって問題を解決する手法。問題が生じた際に自分自身の内面、つまり問題に対する捉え方をどう変えていけば事態の改善につながるかを主体的に考えることから始まり、この主体性こそがインサイド・アウトの強みであり、特徴。
【参加者】
杉山泰彦(Yasuhiko Sugiyama)氏 / 長野県根羽村 地域おこし企業人
1991年生まれ。新卒で株式会社CRAZYに入社し立ち上げ期の採用やマーケティングを担当。2017年2月より新規事業として株式会社WHEREに参画。地域のプロモーションや移住定住サポート事業で20地域の案件実施を経て、2018年12月より長野県根羽村に夫婦で移住。現在は総務省の地域おこし企業人制度にて役場に従事しながら、村全体のPR・戦略立案・事業立ち上げ・関係人口創出を行い、地域の豊かさが持続するための基盤づくりを行なっている。地域の生き方×教育を通じたこれからの時代の人づくりに興味あり。SDGsカードゲーム「X」公認ファシリテーター、森林Beingモードアドバイザー認定取得。
三井 俊介(Shunsuke Mitsui)氏 / NPO法人SET 理事長
1988年茨城県生まれ。法学部国際政治学科卒業。在学中に学生団体WorldFutを創設して代表に就任。カンボジアへの国際協力活動を行う。同じく在学中の2011年3月、復興支援団体SETを設立。同年6月に同団体をNPO法人化し、現在に至るまで、代表として岩手県陸前高田市広田町の復興支援に携わる。2015年9月には陸前高田市議会議員選挙に当選し、市議としても地域の復興に尽力した実績も持つ。
上田 彩果(Ayaka Ueda)氏 / NPO法人SET 中高生向けキャリア教育事業部部長 / 理事
東京都町田市出身。2013年3月、広田町に初めて訪れ、1年後、現在の中高生向けキャリア教育事業である「高田と僕らの未来開拓プロジェクト」を地元高校生と立ち上げる。大学卒業と同時に移住し、現在は、陸前高田市内小中学校東地区統括コーディネーターも務め、社会教育と学校教育の狭間で、最高の共育現場づくりに奔走中。
【イベント詳細】
・日時:3月23日(月)19:00〜21:00
・参加費:無料
・場所:オンラインにて実施(参加URLは申込者のみにお知らせいたします)
・定員:30名まで
・イベント内容:
・ NPO法人SETの取組の紹介
・長野県根羽村での教育事業構想の紹介
・オープンディスカッション「地域×教育を立ち上げていくにあたって大切にすべき観点を考える」
・根羽村でのネクストアクションの策定
※イベントではチャット機能を通じて誰でも質問・意見ができます。
【申込先】
以下のURLよりお申込みをお願いいたします。
https://forms.gle/N6voUimg2JEd4raf6
NANA TAKAYAMA
高山 奈々