KAWASAKI, MIYAZAKI
宮城県川崎町
「自分の人生は、本当にこのままでいいのだろうか?」
社会人になって、ただひたすらに、がむしゃらに働いてきた。だんだんと仕事にも慣れ、一通りのことを任されるようになってきたいま。ふと自分の人生を見つめ直し、これからの人生について考える機会も増えているはず。
自分の次なる人生を考える場所として、東京から少し離れた田舎町で暮らしてみるという選択肢があってもいいんじゃないか。
そこで今回は、移住者が増えている町として少しずつ注目されている「宮城県川崎町」へ移住をし、家族やパートナーとともに暮らしている移住者2名を取材しました。
まず最初に取材をしたのは、移住者コミュニティになっているフリーマーケット「ニャードセール」を主催し、地域の顔として活躍する一方で、ミュージシャンとして町内外・国内外でもファンを持つ、早坂氏。一体どんな理由で川崎町に訪れ、どんな生き方をしているのだろうか。
「今まで暮らしてきたどの地域もいいところだったけど、暮らしを持続させていくのが大変で、42歳になってもう少し地域に根を張って生きたいと思った時、地元でもある宮城県に戻りたいと思いました」(早坂氏)
早坂氏の出身は、川崎町のすぐ近くでもある宮城県塩釜市。川崎町には、一度仕事で来たことがあったという。
「仙台市に暮らしていた時に、川崎町には仕事で来たことがあったんだけど、仙台市からの距離の近さに驚いて。仙台に暮らしていた時には、もっと田舎で暮らしたいと思っていたし、自分の家も持ちたいなと思ってたから、価格を安く抑えられる “空き家” が宮城県内で一番充実していた川崎町に移住を決めたんです」(早坂氏)
移住後、アメリカの “ヤードセール” *1 を真似て、自宅の前でフリーマーケット「ニャードセール」を始めた早坂氏。今では町内の移住者を中心に多くの人がお店を出店し、移住者コミュニティとしても大きくなってきた。
「ニャードセールには、決まったテーマや出店基準を設けていないんです。そもそも世の中にはたくさんの好みや価値観がありますからね。主催側は選ぶことはせず、どんな人が来ても受け入れて、その多様性の中で大人も子どもも自ら選び、学べる小さな社会になったらいいと思っています」(早坂氏)
他にも、ニャードセールには「子どもマーケット」という場所があり、子どもたちが、ヨーヨー釣りやネイルが体験できるお店を出店している。
「子どもが大人とお金の取引をするって大事だと思っています。いつどうなるかわからない今の社会で “自分はこれでお金を稼いだことがある” という経験ってすごく大切です。もし大人になって、ストレスでどうしても仕事が続けられなくなる時がきても、 “昔、ネイルでお金を稼いだことがあったからやってみよう” という選択肢に気づけたらいいと思うんです」(早坂氏)
会社に属さなくても自分にできることがある、選択肢は一つではないことに気づいて欲しいという早坂氏。彼は柔軟さを大切に、楽しそうと思うことがあれば、なんでもとにかく挑戦している。
「結構、なんでも風まかせですよ。物事を決めきってしまったら、それ以上がないですから。なるべくルールで括らずに、真っさらな状態でいろんな発想ができる状況をつくっています。その中で、想像もしていなかったものが生まれることが、一番面白いじゃないですか」(早坂氏)
「今の自分が知ってることなんて、今まで自分が経験したことと、誰かから学んだことと、どこかの本で読んだことくらいでできていて、そんなのちっぽけなもんです。若い時は熱量がある分、思い込みも激しくて “絶対にこれが正しい” って思っていた時期もあったけど、やっぱりね、何歳になっても正解はわからないよ」(早坂氏)
そう笑いながら話す早坂氏は、本当に楽しそう。取材中にも、大人・子ども関係なく、地域の方が早坂氏に話しかけ、その度に楽しそうな世間話がはじまる光景が印象的だった。
「自分が何かやりたいと思った時に、やらせてくれる役場と、協力してくれる町内の人がいるのはとても心強いです。川崎町で楽しそうにしている移住者を見て、様々な人が移住してきています。こっちが楽しそうにしていれば、自ずと人は集まってきますよね」(早坂氏)
次に取材をしたのは、約1年半前から川崎町で地域おこし協力隊として活動している朏昌汰氏。
「5年間務めていた公務員を退職して、ニュージランドに留学に行った時、経済を通しての繋がりだけでなく、実際に人との繋がりを感じられる田舎には、都市よりも、人間が生きていくための根本が詰まっていると思いました。食料とか水とか、絶対に田舎の方が美味しいし、源泉に近い方が、より豊かな生活ができると思い、どこか暮らしたいと思える田舎を探していたんです」(朏氏)
ニュージーランドでの経験から「日本にエコビレッジをつくりたい」と、場所を探していた朏氏。川崎町に訪れ、すぐに移住することを決めたと言います。
「留学先で出会った同じ志をもつ友人が川崎町に移住することを決めていて、彼の勧めで、川崎町に訪れたことがあったんです。川崎町には、とにかく面白いキーマンになる人たちが揃っていて、これからさらに面白くなる地域だと思いました」(朏氏)
川崎町には “自分の好きが高じて” 、ワイナリーを運営する人や、水車を自分で設計し作っている人、里山のことをなんでも知っている人や、元自衛隊でキャンプ運営をしている人など、30~80代の幅広い層の人たちが活躍しており、その姿に驚いたという。
「川崎町にはSPRINGという施設があって、初めて川崎町に訪れた時にそこに寄ったら、地域おこし協力隊の人たちがいたんです。地域おこし協力隊になれば、町内の人とも繋がりやすいし、自分のやりたいことも準備できると思って、地域おこし協力隊の制度を使って移住することにしました」(朏氏)
地域おこし協力隊として活動をしながら、エコビレッジ計画も徐々に進めている朏氏。町内の人に自分のやりたいことを話し続けていたら、なんとエコビレッジを構築するための山林を譲ってくれる人が現れたという。
「町内の人がすんなりとよそ者を受け入れてくれて、協力してくれるのは、朏氏よりも前に川崎町に移住し、町内の人たちと少しずつ信頼関係を築いていった移住者の先輩がいるからだと僕は思っています。町内の人たちが “よそ者の目線がないと自分たちは井の中の蛙になってしまう” というくらいです」(朏氏)
今まさにいろんな歯車が噛み合って、新しいことに挑戦しやすい空気が出来上がっている川崎町には、挑戦をさらに後押しする力があった。
「川崎町役場にいる公務員さんの柔軟性にも驚きます。特に、長谷川さんには頭が上がりませんね。(笑)僕自身が公務員だったということもあり、長谷川さんみたいに熱くて、フットワークが軽くて、楽しそうに働いている公務員さんがいることにも驚きましたし、自由にたくさんの挑戦をさせてもらっています」(朏氏)
朏氏曰く、挑戦者というよりも、すでに挑戦して成功した人が多いという川崎町。これから朏氏のように新しい挑戦をする人たちと、その挑戦を支えていく地域の風土が重なることで、「川崎町は絶対に面白くなります!」と朏氏は断言する。
川崎町では2019年11月1日よりお試し住居「ENGAWA」を開始。今回はENGAWAの担当者である川崎町役場、橋本歩氏にも少しお話をお伺いした。
「ENGAWAは町外の人に泊まってもらう施設なので、町外の方も巻き込んでワークショップを開催し、考えた名前です。ENGAWAにある特徴的な “縁側” と、人の “縁” が繋がる “川崎” という意味を込めて名付けました」(橋本氏)
「ここに人が集まるところということを忘れずに、ENGAWAに訪れてくれた町内の方も、町外の方も、業者さんも、皆さんに “また来ますね” と言ってもらえるような “縁が繋がる” 関係性づくりを大切にしたいと思っています」(橋本氏)
さらに名前だけでなく、内装も町内外の人を呼んで、DIYワークショップを開催しながら完成させたENGAWAは、各所に町内外の人の想いが込められている。
「より多くの方に会議や作業に参加してもらうことで、愛着をもってもらう施設に育ってほしいという願いから、町内外のいろんな人を巻き込み一緒につくることになりました。2019年11月のオープン予定ですが、手を加えられる余白を残しているからこそ、利用者がこれからどのように空き家をリノベーションさせるか想像することも楽しんでほしいと思っています。ENGAWAを拠点に、町内の方と関わってもらい、ここで自分なら何ができるかを模索してもらえたらうれしいですね。」(橋本氏)
「自分の人生は、本当にこのままでいいのだろうか?」
自分の次なる人生を考える場所として、東京から少し離れた田舎町「宮城県川崎町」で試しに暮らしてみるという選択肢があってもいいのではないでしょうか。
ENGAWAに暮らせる期間は、1泊2日(当日日帰りも可能)〜9泊10日まで。
家族と一緒に、パートナーと一緒に、もちろん一人でも、知らない土地、知らない人、知らない文化に、ゆっくりと自分の肌で触れながら、自分の人生を見つめ直し、これからの人生について考える機会を過ごしてみては?
2019年11月16~17日には、ENGAWAに宿泊するお試し移住ツアーをなんと1組限定で実施するとのこと。この機会にぜひ川崎町に足を運んでみてくださいね。
*1 ヤードセール
自宅の庭で不要品を販売すること
Editor's Note
まちの中に入れば入るほど、個性的な人たちと出会える川崎町。お試し住居が完成したいま、ぜひこの空間を使いながら、川崎町の「暮らし」を体験してみてくださいね。
NANA TAKAYAMA
高山 奈々