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LOCAL LETTER

元ホームレス旅人。「帰りたかった」大船渡市で歩みはじめたファーストキャリア

SEP. 12

IWATE

拝啓、人生のミッションと地域おこし協力隊の活動を結びつけたいアナタへ

岩手県大船渡市は、リアス海岸の代表的な景勝地が多く存在する自然豊かなまち。人口は約3.5万人で、水産業や木材加工業が盛んです。

今回お話をお聞きしたのは、大船渡市で2022年から地域おこし協力隊(以下、協力隊)として活動をはじめた臼山小麦さん。学生時代に「ホームレス旅人」として日本全国を回るなかで大船渡市を訪れたことをきっかけに、大学卒業後、協力隊としてキャリアをスタートさせました。

「多様性」や「マイノリティ」に関心を持つ臼山さんが、協力隊として活動をするなかで感じている魅力や課題、目指す姿について伺いました。

「多様性」に出会った大学生時代。人生で目指すのもが見えてきた

長野県松本市出身の臼山さんは、都内の大学に進学し社会人類学を専攻。なかでもジェンダーやセクシャリティの分野、「マイノリティ」と言われる人々に関する研究に関心が向いていました。その頃から自身のなかで「多様性」が大きなキーワードになっていったといいます。

臼山 小麦(Usuyama Komugi)さん 岩手県大船渡市地域おこし協力隊 / 元ホームレス旅人。長野県松本市出身。旅の途中で魅了された岩手県大船渡市に新卒で移住し、起業。大船渡の認知拡大とICT利活用の推進に向けて、地域おこし活動に取り組む。協力隊のほか、コワーキングスペース「OFUNATO DX_Hub」管理責任者、旅ライター、LGBTQ講師なども務める。動き続けたい「マグロ」体質。
臼山 小麦(Usuyama Komugi)さん 岩手県大船渡市地域おこし協力隊 / 元ホームレス旅人。長野県松本市出身。旅の途中で魅了された岩手県大船渡市に新卒で移住し、起業。大船渡の認知拡大とICT利活用の推進に向けて、地域おこし活動に取り組む。協力隊のほか、コワーキングスペース「OFUNATO DX_Hub」管理責任者、旅ライター、LGBTQ講師なども務める。動き続けたい「マグロ」体質。

「恥ずかしながら大学に入学するまで、LGBTQ+と呼ばれる人々のことを全く知りませんでした。勉強をしていくうちに、私の知らないところでこんなに生きづらさを抱えている人たちがいたことに気づき、すごくショックだったんです」(臼山さん)

知らないからこそ、無意識のうちに周りの人を傷つけていたかもしれない。そのことに気づいた臼山さんは猛勉強。すると次第に、ずっと一緒にいた友人が「実はね…」と想いを打ち明けてくれることが増えたそうです。

この経験を機に、「自分の関心の高い分野だけでも深く勉強をして、できるだけ人を傷つけないようにしよう」という気持ちが固まったといいます。

大船渡市に出会い、魅了されたホームレス旅人時代

自身の人生の中で「多様性」への興味関心が強くなったタイミングで、リュック1つで国内を旅する決意をしました。

「大学3年生のときに留学をする予定があったのですが、コロナ禍になり海外は諦めざるを得ない状況になりました。海外がダメなら国内にしよう!ということで、日本中を旅することにしたんです」(臼山さん)

当時住んでいた東京のアパートをすぐに解約し、2年間、国内を転々とする生活がスタート。学校に通いながら貯めたバイト代の30万円を手に歩みはじめた臼山さん。ホテルでのインターンやライターの仕事をしながら旅をしていたこともあり、2年間の旅を終えてもその30万円は手元に残っていました。

「『47都道府県を制覇したい!』という気持ちよりも、『その場所で働いて暮らしてみたい』という気持ちが強かったんです。だからできるだけ長期滞在ができて、働くことができる旅先を探していました」(臼山さん)

そんな旅のなかで、特に忘れられない場所となったのが岩手県大船渡市でした。

「大船渡市では『ふるさとワーキングホリデー』という制度を使って、1ヶ月間ホテルに泊まりながら現地のお仕事をしていました。働きながら滞在してみると、1日の宿泊だけでは見えないまちの雰囲気などが見えるような気がするんです。

だから1箇所の滞在期間は短くて1週間、基本的には1ヶ月以上でしたね。大学生だったからかもしれませんが、『どこでも生活できるんだな』と思っていました」(臼山さん)

多様性を受け入れる土壌は震災がきっかけかもしれない

学生時代、大船渡市に2回訪れ延べ2ヶ月ほど滞在。地元の人々と関わるなかで「なんて素敵な地域なんだろう。いつか帰りたい」と思うようになった臼山さん。大船渡には大きく2つの魅力を感じているといいます。

「1つは土地の魅力です。とにかく海産物が美味しいし、海が綺麗だと思っています。私は海が無い県で育ったので、海への憧れが人一倍強いのかもしれませんね。

お魚も大好きですし、夏の暑い日はすぐに海に飛び込むことができるのも、ここならではだと感じています。あとは山と海が近いところも魅力ですね。

もう1つは人の魅力です。リュックサックだけを背負った人間を受け入れてくれるような寛容な土壌が、大船渡にはあると感じています。

これは私の考察ですが、やっぱり市民の多くが大きな震災を経験していて、多くを失ったなかでゼロとも言える環境から何かをつくらないといけない状況を乗り越えて、国境を超えたボランティアの人の受け入れもしてきた。

そういうことがあったからこそ、いろんな人を受け入れる地域性に繋がっているんじゃないかと思っています」(臼山さん)

すっかりと大船渡市に魅了されていった臼山さんは、とある出来事をきっかけに大船渡市で協力隊の活動をはじめることになりました。

「実は最初から協力隊を志していたわけではありません。大学4年生の12月に、入社する予定だった会社から内定の取消しをされてしまったんです。大学卒業後にやることが何も無くなったときに、ご縁があって『いつか帰りたい』と思っていた大船渡市でお仕事を探していただいて、今に至ります」(臼山さん)

大学卒業後、ファーストキャリアとして大船渡市の協力隊になった臼山さんのミッションは「ICT(*)利活用推進」。SNSなどを活用した情報発信やウェブメディアでの記事執筆などを担当しています。

* ICT
ICTは「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略で、通信技術を活用したコミュニケーションを指す。情報処理だけではなく、インターネットのような通信技術を利用した産業やサービスなどの総称。

定住=帰る場所があること。自分の価値観も発信しながら持続可能なまちづくりを目指す

大好きな地での活動をはじめた臼山さんですが、移住をして、働きはじめたことで気づいたことがたくさんあるといいます。

「学生時代に旅人として大船渡に来ていたときは、地域の人も私を楽しませようとしてくださる方ばかりだったので、嫌なところなんて見えないんです。でも、協力隊としてこの場所に来ると、地域の方も私に対して『求めるもの』があるので、プレッシャーを感じる部分があるのも事実です」(臼山さん)

地域の方からは、「定住して欲しい」という思いと「移住者が何かをしてくれるんじゃないか」という期待が感じられるといいます。しかし臼山さんは、地域の方が自ら動いていけるようにならなければ、持続可能性がないと感じているのです。

「地域の方は、『こんな地域課題があるからどうにかできないか』と相談をしてくれます。もちろんそれは嬉しいけれど、私はたった1人の人間だし、そんなに簡単に地域は変えられない。どちらかというと地域の人がここの良さや課題をきちんと理解して行動する必要があると思っているんです」(臼山さん)

現在、大船渡市に移住をして1年3ヶ月。地域の人からは定住を求められていると感じているといいます。

一般的には定住=1つの場所に長く住むことを指すのかもしれませんが、私にとっての定住は『帰る場所があること』。世界中に帰る場所をつくって、旅をしながら働きたい。1つの場所に一生いることができない性格なんです(笑)。大船渡は絶対に帰る場所でありたいし、一番大事と言っても過言ではありません」(臼山さん)

また学生として協力隊として、違う立場で大船渡市を見ることで、まちの見え方や活動の考え方にも大きな変化がありました。

「まず、これまで私が学んだり考えたりしていたことが、地域活性化の考え方に通ずるところがあると気づきました。

旅やマイノリティの人の研究をしていくなかで色々な価値観を知り、自分の寛容度が上がっている気がしていました。そこに新しい出会いもたくさん加わり、私にとって良い循環が回りはじめましたが、地域も同様。新たな価値観が流入して、まちが寛容になっていくことで人が集まり、地域は活性化していくという理論があるんです」(臼山さん)

新しい価値観と地域の人を繋ぐ「水の人」で在りたい

「寛容な社会をつくる」を人生のミッションにしている臼山さんは、協力隊の活動中に大船渡をさらに寛容なまちにしていくことを目標にしています。そのためには多様な人を呼び、まちに新しい価値観を入れることが欠かせません。

地方創生や地域活性に関わる人を「土の人」「風の人」「水の人」と分ける考え方が存在し、臼山さんはこの考え方に共感しています。

「土の人」は、その地域に長く暮らしている人。
「風の人」は、新しい価値観を運んでくる人。
「水の人」は、土の人と風の人の間に入って馴染ませていく人。

「寛容なまちづくりのためには、どれも欠かせない存在だと思います。新しい価値観ばかりが入り続けても土埃が上がってしまうので、真ん中の水の人の存在はすごく大切。私は、土の人と風の人を繋ぐ役割ができる人になりたいです」(臼山さん)

協力隊としての任期は残り1年半。まずは都会や首都圏でたくさんの人に出会い大船渡を知ってもらい、SNSで繋がり続け大船渡に足を運んでもらう。これを繰り返すことで、地域の活性化と寛容度の高いまちづくりを目指しています。

たくさんの人に大船渡を知ってもらう、そのためには協力隊としてのミッションであるICTの利活用推進が重要です。

「高齢化が進んでいる地域で、ICTと言っても『わからないから』と話が終わってしまうことが多いんですね。でも実際は高齢の方でもスマホを持っていたり、LINEを使っていたりする人がたくさんいます。まずはICTの重要性を知って欲しいんです。大船渡のことを、たくさんの人に知って貰わないことには、誰も来てくれないですからね」(臼山さん)

高齢化が進んでいる地域だからといって、ICTやDXが不要だと思い込んでしまう人は多いかもしれません。しかし「ICTやDXの過疎が進むことで人の過疎にも繋がり、社会の大きな流れから取り残される可能性すらある」と臼山さんは感じています。

協力隊に着任して1年3ヶ月。残り約1年半の任期を終えたあとのことも見据えています。

「やっぱり私は、動きながら生きていくことでアイデアが浮かんでくる人間なので、動き続けながら働くスタイルを大事にしていきたいです。

いまは『水の人』ですが、卒隊後は『風寄りの水の人』になって『小麦ちゃんが動くと新しい価値観が入ってくるよね』と言われるくらい、動くことが活性化につながることを体現していきたいと思っています」(臼山さん)

ただただ好きな地域ではじめた協力隊としての活動。移住をしたからこそ見えてきた地域の課題や人と関わるなかで生まれる葛藤。全てを自分の糧として前向きに活動している臼山さんがかっこよく、必ず自身のミッションを成し遂げていくのだろうなと感じることができました。

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Editor's Note

編集後記

ホームレス旅人として全国を回り、人生のミッションを見つけ、地域おこし協力隊としてチャレンジを続ける臼山さんの行動力には驚かされました。協力隊の任期終了後も見据えて日々を過ごしている姿がかっこいいなと感じました。

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