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LOCAL LETTER

都⼼⽣まれのフリーランスが地域複業。複業マッチング活⽤の効果とは

MAR. 30

拝啓、地域企業との関わりや、自分らしい働き方を探すきっかけがほしいアナタへ

複業(※)という概念が世の中に広がり、より一層多様な働き方が増えたのではないでしょうか?とくに、地方移住や関係人口といったキーワードをよく耳にするようになり、これまで以上に地域との繋がりが身近になっています。

「自分らしく働きたい」「地域と繋がり地域をフィールドとして働きたい」そんな想いを持つ個人と、「自社の経営課題を解決したい」「事業成長をしたい」と考えている企業のマッチングを支援する『だんだん複業団』が、愛媛県松山市にあります。

『だんだん複業団』は、複業マッチングプロジェクトでありながらも、スキルや経験だけでなく、想いやビジョンで地域と繋がるきっかけをつくることを大切にしている取組です。

今回は、実際に『だんだん複業団』に参加し、愛媛県松山市の企業と複業マッチングを通じて仕事を始めた野島優美さんに実体験をお聞きしました。

プロジェクトに参加したきっかけや参加してみての自身の働き方の変化、地域との関わり方など、『だんだん複業団』を活用した効果とはーー。

※『だんだん複業団』では、単に本業とは別に副収入を得ることを指す「副業」ではなく、複数の仕事を掛け持ちしながらもメイン・サブという序列をあえてつけず、どの仕事も「本業」という考え方を指す「複業」を推進しています。

都市部在住の人材と松山市内の企業を繋ぐ複業マッチングプロジェクト『だんだん複業団』とは

『だんだん複業団』は、愛媛県松山市が取り組む複業マッチングプロジェクト。経営課題を抱える松山市内の企業と、スキルや経験を活かしたい人材とのマッチングを通して、企業の課題解決と、人材の多様な働き方や地域との関わり方を後押ししています。

『だんだん複業団』では経歴だけでなく、説明会に参加したのち、自身のバックグランドや想いを書いたプロフィールシートを企業に提出して、書面で自分を見てもらうところからスタート。次にオンラインのプログラムで関係者全員と初めての対面、そして現地フィールドワーク(一部オンラインもあり)。その後、提案シートを提出して、最後はマッチング面談と丁寧な進行のもとプログラムが行われていきます。

『だんだん複業団』は、人材の持つスキルや経験だけでなく、人柄や想いを通して繋がることを大事にしているのが特徴です。

今回『だんだん複業団』のプログラムに参加し、松山市の企業と複業をスタートした野島さんは、アパレルの店長職や広報PR、営業支援、人材コンサルティングなど多彩な職種を経験し、現在はフリーランスとして活動しています。

野島 優美(Yumi Nojima)さん / アパレルメーカーでの店長職、PR会社ディレクターを経て、現在フリーランスで営業支援やPR支援、研修講師、キャリアコンサルタントなどを行っている。PR会社には約11年勤務し、最後の4年間は主に地方自治体のPRに従事。その中で「業務代行より自立支援」の重要性に気付き、地域の広報人材育成に注力。のべ20以上の自治体での広報PRセミナー講師の他、2017年には広島県福山市の情報発信戦略会議委員、月刊「広報会議」自治体PR入門の執筆も務めた。広報PRに限らない人材育成や組織活性にも活動領域を広げるべく2018 年 2 月に独立。趣味は旅行、ウォーキングと、最近始めたゴルフ。大阪府出身、東京都在住。

野島さんが『だんだん複業団』に参加したのは、「今まであまり関われなかった地域企業との接点を持ちたい」と思ったから。

「フリーランスになる前、自治体のPRや地域ブランディングの仕事に4年間ほど関わっていました。そのときに、自治体のPRを代行するだけでなく、地域企業の業績を上げることで、地域自体を活性化させることも重要だと気づいて。改めてより深く地域企業と関われる方法を模索していたところ、『だんだん複業団』に出会いました。

元々愛媛にゆかりがあったわけではありませんただ、何度か訪れた時の街の空気の明るさやあたたかさがとても印象的で、自分が心惹かれる街で、素敵な企業さんとご縁があったらいいなと思って参加しました」(野島さん)

現地に行って、企業の課題を感じ取る。フィールドワークだからこそ見えたこと

『だんだん複業団』では、最初の説明会から企業とのマッチングまで、約半年間かけてプログラムが実施され、エントリーした人材(以下、団員)と企業がお互いのことを知る時間が長く取られているのが特徴です。そのなかでも『だんだん複業団』の魅力の一つが、松山市内で行われる1泊2日のフィールドワーク(オンラインでも開催)。

団員が現地を訪れ、店舗を見学したり、経営者とディスカッションをしたりと、企業との繋がりが生まれる、貴重な機会です。

「フィールドワークに参加することで、参加している企業がそれぞれ抱えている課題や、複業人材に求める人物像などをまとめて聞くことができました。団員からもたくさん質問ができるので、企業を深く見聞きする貴重な機会となりましたね」(野島さん)

フィールドワークでは、地域商社、IT技術を使って地域の特産品を販売する会社、農家と消費者を繋ぐ事業者、お酒を造る会社など、事業内容も課題も異なる地域企業との接点の場があります。

「やっぱり実際に訪れてみると地域のパワーを感じます。オンラインだけでは感じることのできない空気感や温度感など体感をしたうえで、経営者の人柄や想い、価値観まで知ることができました。おかげで現地で感じたことや課題を、より熱量高く具体的に提案へ盛り込めたように感じます」(野島さん)

『だんだん複業団』の “だんだん” には、「徐々に・じわじわと」地域企業と複業人材が関係性を深め、関わった人たちが「(松山市の方言でだんだん = )ありがとう」と笑顔で想い合う関係になってほしい。そんな気持ちが込められています。

だからこそ「スキル」や「経験」によるマッチングだけでなく、自然と「人柄」や「想い」でのマッチングとなるのが『だんだん複業団』の強みです。

「何ができるか」だけじゃなく「どう関わりたいか」で提案を

1泊2日のフィールドワークを終えて、次は関わりたい企業に向け提案シートを作成・提出します。

フィールドワークで聞いた企業の想いや課題に対して、団員がどのようなスキルや経験を活かして、その想いや期待に応えたいかを提案シートに記入。その後、企業が一人ひとりの提案に目を通して、マッチング面談に進みます。

提案シートは自由記述できる部分も多く、型にはまらない提案ができるのが、『だんだん複業団』の特徴のひとつ。約半年間かけてマッチングしていくプロセスの中で、自分は「何ができるか」を整理するのですが、それだけではなく、地域企業と「どう関わるか」を深掘りする時間もあるため、「企業への提案を考える中で、自分の強みや大切にしたいことへの気づきも得られた」と野島さんは話します。

「自由な提案ができるからこそ、領域にとらわれず、企業の課題に対して自分の強みをどう活かせるのかを考えることができました私自身、PRや営業支援、キャリアコンサルタント、研修講師など、興味のおもむくままいろいろとやってきましたが、自分の立ち位置を一言で表現しきれないもどかしさがいつもどこかにありました。

でも今回、様々な企業の課題を聞く中で、『ここはPRの経験が活かせる』『この課題には営業支援がよさそう』など、自分のスキルと経験を組み合わせながら、本質的な課題解決を目指せるのではないかと思いました。

これまで一つのことに特化してキャリアをつくってきたわけではないので、どこか中途半端さを感じていた部分があったのですが、『いろいろな領域にまたがって仕事をしてきたからこその経験が活きるのでは』と感じるきっかけになりましたね」(野島さん)

「さまざまな仕事をしてきたけど、いざ複業にチャレンジしようと思っても何ができるんだろう」という壁にぶち当たる方は多いはず。

『だんだん複業団』は、スキルや経験だけでなく、想いや共感を大事にした関わり方で地域企業と向き合えるため、団員にとっても新しい働き方への一歩となるのではないでしょうか。

「フィールドワークでお会いした10社それぞれの熱い想いや抱えている課題を聞くと、すべての企業に提案したくなるのですが、『私のスキルや経験を活かしながら、単発の関わりではなく事業を共に育てて伸ばしていくことで、長く一緒にお仕事ができそうか』を基準に、最終的には3社に提案しました。

他の仕事との兼ね合いなど不安だった部分は『だんだん複業団』の事務局の方と相談しながら進めていて。少しでも団員にも企業にとっても理想の関わり方ができるようにと、事務局の方が間に入っていただけたので安心でした」(野島さん)

提案シートを企業に提出した後には、『だんだん複業団』の事務局も入って、3者でマッチング面談を実施。団員と企業が直接話せる時間は、お互いの想いや価値観を深く理解する場になっています。

仕事内容や期間・頻度、報酬などの条件をすり合わせるのは、想いや価値観への共感が合った上での最後のステップ。この丁寧なステップを踏んでいくスタイルにも、『だんだん複業団』が団員も企業も大事にしているこだわりが感じられます。

『だんだん複業団』では、経歴やスキルだけでない団員の人柄が伝わるプロフィールシートがあり、さらにフィールドワークで顔を合わせて話をしているからこそ、まるで雑談をするかのような柔らかな雰囲気で面談は進んでいくそう。まさに、スキルや経験だけでなく想いや人柄によるマッチングが生まれるのです。

マネージャーのように伴走したい、『だんだん複業団』に参加して見えた新しい働き方

野島さんは、タオルを製造・販売する企業とマッチングし、まずはPRの分野から携わり始めてるのだとか。

『だんだん複業団』の想いや人柄を大事にしたプログラムを通じて地域企業とマッチングしたからこそ、「新しい働き方への気づき」があったといいます。

「『だんだん複業団』に参加したことで、『芸能人のマネージャーのように、企業と同じ目線で伴走したい』という気持ちが芽生えました。

1つの領域だけで関わるのではなく、一緒にいいものを育てて、世の中に広めていこうとする中で、これまで培ってきたスキルと経験すべてを使う働き方も見出せましたね」(野島さん)

自身のスキル・経験を幅広く活かし、複業に結びつけた野島さんですが、「自分に何が提供できるかがはっきりしていない人でも、関わりしろは十分に探せる」と話します。

「これまでの経験や専門スキルを活かす関わりだけでなく、地域企業の課題を知って、それを解決するために自分は何ができるかを考えるきっかけが『だんだん複業団』にはあるはずです。フィールドワークに参加した他の団員で、『その場にいさせてもらう』ことを初めのステップにして、まずは薪割りをするところから提案した人もいましたよ!」(野島さん)

新しい働き方を試せる場に。「事業」や「地域」と本気で向き合う企業とだからこその関わり方

『だんだん複業団』を通して出会える企業は、それぞれ愛媛や松山をより良くしたい、盛り上げたいなど強い想いを持っているところばかりスキルをただ求められるのではなく、ビジョンや思いへの共感で関係を結べるからこそ、新しい働き方を「試せる」場所にもなっていると野島さんは続けます。

「目指している方向が一緒であれば、向かう途中の関わり方は多様であってもいいんじゃないか、と思いました。

たとえば、入り口はPRだったけど、課題によっては人材育成や営業が必要になってくるかもしれない。これは私にとって理想の関わり方であって、地域企業との複業はそこにトライさせてもらっている感覚があります」(野島さん)

一般的に最初の契約で決まった内容を途中で変更することは困難なケースが多い中、信頼関係の構築やビジョン共有をマッチング前から実施する『だんだん複業団』では、形に捉われず、試行錯誤する中で見えてきた仮説を提案・実行することができます。

同じ想いで仕事ができる地域企業とのご縁や、自分自身の新しい働き方を見つけられたのは、『だんだん複業団』に参加したからこそだと思います」(野島さん)

関係人口や地方移住など、今後より一層、地域との関わり方や多様な働き方が注目されていくはず。

まずは都市部に住みながらも、地域企業の課題や想いを知るきっかけとして、さらに自分らしい働き方を探す場として、地域複業を始めてみてはいかがでしょうか。

そのほか、松山市のHPでも『だんだん複業団』の活動を取り上げております。合わせてご確認ください。

Editor's Note

編集後記

『だんだん複業団』で地域企業との関わりを見つけたことはもちろん、それ以上に野島さん自身が働き方への気づきを得られていたのが印象的でした。スキルや経験だけでなく、ビジョンや課題を共有して一緒に駆け抜ける。シンプルでありながらも大切な部分でマッチングができる、複業にトライしたい人にはぴったりのプロジェクトだと強く感じました!

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