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LOCAL LETTER

目指すのは、ストレスフリーな「放牧体験」。マツコの知らない世界でも話題の「ミルクサウナ」が手掛ける、地域資源を最大化する体験価値とは

AUG. 22

拝啓、大自然に溶け込むようなサウナ体験を楽しみたいアナタヘ

見渡す限りの自然をのぞむ北海道・上士幌町に、牧場「十勝しんむら牧場」はあります。上士幌町は町内の約76%が森林地帯と、豊かな自然が魅力の町。そんな場所で「十勝しんむら牧場」は、酪農を営みながらもサウナ施設「ミルクサウナ」や「カフェ・クリームテラス」を設けて、ストレスフリーな放牧体験を提供しています。

そこで大切になるのが、牧場だからこそできる地域の自然を生かした体験価値。牧場での体験を通して「人々に自然との一体感やシンプルに生きることを伝えたい」と、語るのは代表・新村浩隆さん。

雄大な大地に囲まれた場所で、牧場だけではなくサウナとバーベキュー、カフェ施設を展開する新村さんに、地域の自然とそこで生まれる体験についてお伺いしました。

新村 浩隆(Hirotaka Shinmura)さん 有限会社 十勝しんむら牧場 4代目牧場主・代表取締役 / 北海道十勝の上士幌町で放牧酪農を営みながら、乳製品製造、飲食店を経営。多様性のある生きた土から、健康な草、牛を基本に永続的な循環型農業を実践している。代表商品は、ミルクジャム、クロテッドクリームなど。牧場内のカフェでは、牛や豚やヤギを見ながらゆっくりとした時間を楽しめる。https://milkjam.net/
新村 浩隆(Hirotaka Shinmura)さん 有限会社 十勝しんむら牧場 4代目牧場主・代表取締役 / 北海道十勝の上士幌町で放牧酪農を営みながら、乳製品製造、飲食店を経営。多様性のある生きた土から、健康な草、牛を基本に永続的な循環型農業を実践している。代表商品は、ミルクジャム、クロテッドクリームなど。牧場内のカフェでは、牛や豚やヤギを見ながらゆっくりとした時間を楽しめる。https://milkjam.net/

北海道の大地に溶け込む極上サウナ。サウナを中心とした牧場体験とはーー。

目指すは「かっこいい牧場」。牧場の価値をつくるための事業づくり

「『牧場に価値をつくる』をテーマに会社をやっていますね」と新村さんが語るように、「十勝しんむら牧場」は牧場を中心に、カフェ、バーベキュー、サウナ施設などの多彩な事業を展開

現在は、酪農だけでなく自社製品のミルクジャム、自然に生かされる体験ができるサウナ、その自然の恵みからできる食材を用いたバーベキューなど、多岐にわたってサービスを提供しています。

ただ、そんな新村さんも幼い頃は「牧場をやりたくない」と思っていたのだそう。高校・大学と進み将来のことを見つめる中で、初めて自分の仕事のことを真剣に考える中で、「一生続けられる仕事がしたい、なくならない仕事に就きたい」という想いに気づいたそう。農業は食べる人が居る限りは決してなくならない仕事だと、昭和8年から代々続く家業を継ごうと決意。新村さんの牧場との関わり合いがスタートしました。

4代目を継ぐ新村さんが目指したのは、かっこいい牧場

「家業を継ぎたくないと思っていた理由は、牧場って休みもないしそれほど儲からないことでした。他の人から見たら農業や酪農って魅力がないように思うんじゃないかな。だけど、アメリカでは成功した人が農場を持つのが1つのステータスになっていて。じゃあ、この牧場もステータスになるようなかっこいい牧場にすればいいと思ってスタートしました」(新村さん)

新村さんが目指したかっこいい牧場とは、たとえば休みがなければ雇用を増やす、儲からなければ儲かる仕組みをつくる、かっこ悪ければかっこいい牧場をつくる、というとてもシンプルな牧場づくり。

最初の一歩はミルクジャムの開発・販売から。原料は新鮮なミルクと砂糖のみという、放牧だからこそできる大地の恵みを詰め込んだ今や牧場の看板商品です。

農業の弱いところは自身で商品価格を決められないことにあると話す新村さん。「だったら、自分でつくった物に対して適性価格で販売する仕組みをつくろう」と、ミルクジャムの開発・販売を始めました。

ただ、商品を販売する渦中での迷いも生じ始めます。

商品を販売するだけでは、牧場への想いやストーリー、背景まではお客さんには届かない。お客さんには牧場に来てもらい、雄大な自然のなかで育む姿を見てもらわないとと思いましたね。
新村 浩隆 十勝しんむら牧場

商品販売の次は、牧場のショールームと称してカフェ「クリームテラス」をオープンすることに。ミルクジャムに続き、牧場での新たな試みでした。

そしてカフェに続いて牧場全体を見渡せるバーベキュー施設をオープン。きっかけは、牧場の価値を知ってもらうにはもっと牧場に長く滞在して、近くで自然を味わってもらわないと、と思ったこと。

カフェの場合、滞在時間は約30分から1時間と短くなってしまう。しかし、バーベキュー施設であれば、すぐ近くで自然を存分に感じながら牧場での時間を過ごしてもらえる、と思い立ったそう。

そんな思いの中、まずはと、新村さんは森の中で豚を飼い始めることに。豚を飼い始めた源泉は、「おいしいベーコンを食べたい」という純粋な欲望だったと言います。そして、そんなベーコンを食べる場所が欲しいと、牧場全体が見渡せる場所にバーベキュー施設をオープンしたのです。

かっこいい牧場、それはお客さんのニーズを考えて、新村さん自身が牧場や自然の価値を高めるために、「こうしたい」をどんどん形にしている姿なのかもしれません。

サウナのあるライフスタイルを自然の中で実現したい

「牧場での体験価値を高める」をモットーにカフェやバーベキュー施設をつくる中、一見意外な組み合わせであるサウナをオープンしようとしたきっかけ。それは、シンプルな「好き」という気持ちでした。

サウナ施設をオープンしたのは、シンプルに僕がサウナを好きだったからです。牧場でサウナのイベントをする中で、気持ちいい、楽しい、それを事業にできたらお客さんの満足度も高くなるだろう、と」(新村さん)

そこでスタートしたのが、JRコンテナを改造したサウナ施設です。

牧場ならではの大自然の居心地よさにこだわっているその名も、「ミルクサウナ」。北海道の大自然の中で体験するサウナだからこそ、新村さんの想いやこだわりが詰まっていると感じます。

たとえば、座面から天井までの高さや広さなどの空間づくり。足を伸ばして寝ることもできる広々とした空間が特徴的です。また、サウナには、シャワーを浴びる、サウナに入る、水風呂に入る、外気浴をするなどのいくつかの動作があります。そんな導線をコンパクトにしていかにストレスをなくすか、直感でパパッと動けるように工夫をしているのだとか。

しかし、サウナが楽しいのは、サウナそれ自体じゃないと語る新村さん。サウナとともに食事やアルコールを楽しんだり、外気浴中にソーセージを食べたり。また寒くなればサウナに入って芯まで温まって、お喋りをして。サウナ単体じゃなくて、サウナのあるライフスタイルやエンターテインメントを次のステップとして提案できればと新村さんは話します。

このように、単にサウナで「ととのう」だけじゃなく、サウナが中心にありながらさまざまな過ごし方を楽しめるコンテンツを北海道の大自然の中で生み出す新村さん。その上で自然のなかに生かされている一体感を味わいながら、『牧場×サウナ』を通して改めて農業の良さを感じてもらえたらと、農業に関しての良さを一緒に感じて欲しいと話します。

一見意外な牧場×サウナの組み合わせを、「熱源は薪で、水は地下150mの天然水で水質もいい、風がよく通る場所、人工的な音もない。まさに、サウナが牧場の景色に絶妙にマッチしたんです」と実は相性が抜群だと話す新村さん。

そして、北海道の雄大な自然を感じられる牧場ならではの魅力も。「夕日が沈むマジックアワーをじっくりと眺める、ときには満天の星空を見ながらのサウナも体験できます」とサウナ好きの新村さん自身がミルクサウナでの時間を楽しんでいます。

自分の好きなことを仕事にする、自分の食べたいものを自分でつくる、そんなシンプルで自分の好きなもので固まっている状態が最高のコンテンツになるとご自身の在り方で示している新村さん。

好きなことを仕事にしなかったら楽しくないじゃないですか。
新村 浩隆 十勝しんむら牧場

『こんなものがあったら楽しいよね』シンプルな発想からつくる自然のサウナ

牧場を営みながらも、カフェ、バーベキュー施設、サウナと新規の事業を次々と展開しているしんむら牧場。その上で大切にしていることは、お客さんと一緒に体験しながら、やっていて楽しいことをヒントにすることだと言います。

「豚肉、ソフトクリーム、サウナ。すべて『こんなものがあったら楽しいよね』という発想から、いろいろと組み合わせてカスタマイズしながらサービスをつくっています」(新村さん)

たとえば、近々宿泊施設をオープンすると決めたときも、シンプルな想いから発展したのだそう。

「サウナに入って、お酒やバーベキューを楽しんだら、そのまま泊まりたいという気持ちが出てくるのが、普通ですよね。だったらそのまま泊まれる宿泊施設をつくろうと」(新村さん)

そんなシンプルな発想には、「人間も地球上に住む生物の一種でしかない。自然と一体化することで、シンプルに生きることを感じてもらいたいな、という想いがあります。足し算じゃなくていろいろな邪魔なものを引き算をしていくと、本質って何なのかが分かっていきます。物事の本質は1つですからね」と、自然と一体化する中で導き出した新村さんの想いが隠されていました。

シンプルに着実に「好き」と思ったことを続けていく、そんな経営観を持つ新村さんですが、事業を展開する上では、「好き」だけじゃ立ち向かえないこともあります。

「もちろん、個人の楽しいやりたいことと、経営者としての視点は異なるときもあります。やりたいことだけをやって上手くいくわけじゃない。そこにニーズがあるかどうかは常に考えていますね。そこで大切にしているのは、全部いっぺんに取り組むよりも、スタートは小さく1個ずつ始めること。お客さんの反応を見て次のステップを決めて。それをどんどん続けていく方が失敗もないし無駄もないからね」(新村さん)

小さくスタートをすると、その時代やお客さんのニーズに合ったものができるんです。
新村 浩隆 十勝しんむら牧場

一見、牧場とサウナという大きく新しい挑戦をしているように思える新村さんですが、1つずつ階段を上っていくのが自分の人生だと、ご自身の人生観を語ります。

好きなことを事業として展開する、大胆に大きくではなくて小さな一歩から着実に進める、お客さんの反応を見ながら新たな発想を考える。そんな牧場の大自然からヒントを得たシンプルな流れだからこそ、時代やお客さんのニーズに合った事業が展開できるのでしょう。

自然と繋がる地域コミュニティをつくりたい、次のビジョンへの想い

小さな一歩を大切にしながらも、中長期ビジョンでは理想が広がります。新村さんが思い描く理想の未来は、100歳になる2071年までに自然と調和したエコビレッジをつくりあげること。

理想の背景には、「お金のために働いていても結局みんなハッピーになっていないじゃないですか。ハッピーになるために仕事や勉強を頑張っているのに、なぜかアンハッピーになっている。だからこそ、一瞬のハッピーじゃなくて『ハッピーをずっと継続できるような仕組み』を地域コミュニティでつくりたい」という新村さんの想いがあります。

「具体的には、新しいコミュニティをつくって同じような価値を持つ人たちが住めたら楽しそうじゃないかな、と。もちろん、そのコミュニティの中でものを買ってものを食べて、仕事をして。同じような価値を持つコミュニティだからこそ、会話をしてビジネスビジョンが生まれる、そんな姿が49年後に見られたら最高ですね」(新村さん)

この理想を叶えるためにこそ、現在取り組んでいる牧場でのサウナ体験や宿泊。その土地に滞在する時間が長いほど、その土地の価値や魅力が伝わる。あの場所に住みたい、という気持ちが自然と生まれてくる。「そんな循環をつくることができれば、無理をして売り込んだりあせくせ働かなくてもよくなったりする、それが理想ですね」と新村さんは考えます。

「汗をかいたり手を動かしたり、そんな『実体があること』を価値としていないと寂しい。そんな想いを持っているので、牧場に実際に来てもらって、サウナを通して自然との一体感を味わってほしいです」(新村さん)

北海道の雄大な自然のなかでこそ感じる、自然との一体感。ここでは、自然に生かされシンプルに生きることの大切さに気づかされます。「牧場×サウナ」という新感覚な体験で、自然や町との関わり方を感じてみてはいかがでしょうか?

取材先情報

『ミルクサウナ(十勝しんむら牧場)』
〒080-1407 北海道河東郡上士幌町上音更西1線261 (Googleマップhttps://milkjam.net/

Editor's Note

編集後記

牧場の中にサウナ!?と最初は驚きましたが、「自然に生かされる体験を、牧場の在り方を通して伝えたい」という新村さんの想いを聞いて、牧場という大自然の中でのサウナ体験との相性の良さを実感しました!果てしなく雄大な自然にのんびりと過ごす牛たちがいる。そんな景色で「ととのう」体験をすれば、自然との一体感を存分に味わえますね。

地域の魅力を生かしてありのままをコンテンツにする、そのシンプルな姿に心を打たれました!大自然の中での「ととのう」体験、いつか実現したいものです…!

大自然に溶け込むようなサウナ体験に出かけませんか?

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